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母寝取られ


大学時代に、友達に母を寝取られました。母は黙っていれば綺麗なのですが、口を開けばそれはうるさいおばさんで、寝取られるなんて想像だにしていませんでした。
母は某牛丼チェーンでパートをしていたのですが、たまたま友達の沢木が食べにいったことから、その関係は始まりました。
沢木はかなり女性遍歴が激しく、一度目を付けたら必ず堕とすと言われていた奴でした。彼から牛丼屋に綺麗な人妻っぽいのがいるといわれて、すぐにうちの母だと気付いたのですが、素知らぬ顔をしていたら、
「それって池田の母ちゃんじゃね」
ととある馬鹿に余計なことを言われ、
「なんだよ、池田、紹介しろよ」
と言われ断ったのですが、「こいつなんだよ、いい年して超マザコンだよ」
とからかわれたので、渋々家に泊まりにくることを承諾させられました。

沢木とその仲間たち計三人は、その日うちに泊まりに来た。
母はたまたま休みで家におり、元気に挨拶をする沢木らを丁重に部屋にとおしながら私の左耳を摘まむと私を別部屋に引きずりこみ、「何で友達が来るって連絡しないんだ、この馬鹿息子が!」と本気で怒りながらも、得意のチーズハンバーグを短い時間で作り上げ彼らからマジ舌鼓をいただいたのはさすがとしかいいようがなかった。
料理をしているときの母は真剣で、沢木が、お母さん手伝いますよ、とキッチンに入ろうとすると、「男が厨房に入るんじゃないよ!」と一喝し、彼の出鼻をくじいていた。私は母を口説けるのは生涯で我が父だけだな、とこの時確信したのだったが。

父はおとなしい人で、異常なくらい寡黙で唯一の趣味は読書という地方公務員だった。その父が一年に一回あるかないかの出張お泊まりの日が今日だというのも何か運命づけられていたのかも知れなかった。
夕食時に沢木が買ってきたワインを母にも振る舞うと、
「あんたたち、ガキのくせにこんな高級なワインを・・・、ああもったいない」とガバガバその高級ワインとやらを飲んでいた。若い頃から酒の強さには定評のあった母は、私を含め沢木以外の男らを次々と潰し残る奴も蹴散らしてせせら笑おうとしていたのだろうが、さにあらず沢木もなかなかの酒豪だった。

いいねぇ~こういうの大好き。続き待ってます!

薄れゆく意識の中で、このまま母と沢木を残してぶっ倒れてしまったらヤバイんじゃないか、と思っていたが、体は全くいうことをきかず、それでも現実と夢の中を行ったり来たりしながら母と沢木の会話を聞き逃すまいと頑張っていた。

沢木は酒に酔わせて母をどうにかしようと思っていたのだろうが、逆に母に尺をされ、
「飲め!チャラ男。あたしゃあんたみたいなのが一番嫌いなんだよ、あっはっはっはっ」
と簡単に体をかわされていた。

数時間後、男子大学生四人をリビングに酔い潰したまま、一人寝室に行き、万が一のために鍵をしめて寝たということを、次の日の朝、おめめパッチリで二日酔いを微塵も見せずに私たちの朝食を作りながら語ってくれた母から聞いた時は、みんなテーブルに突っ伏しており、胃の奥から込み上げてくる吐き気と戦っている最中だった。

「ほれ、早く学校へ行った行った。あたしは早番なんだから、あんたたちがいると家のことをかたずけてから出掛けられないじゃないの。リズムを狂わすんじゃないよ」
私たちは強制的に外へ追い出され、手には、殆ど丸々残した朝食を、「こんなに残して勿体無い」と、タッパーに詰められ持たされていた。

駅までの道中、他の二人は、「お前んちの母ちゃん、確かに黙っていれば綺麗かもしれないけど、あれはないわ。ありゃ、男だわ」
「堕とすとかいう問題じゃない、こっちが殺される」と好き勝手なことをほざいていたが、沢木は一点を見つめたままだった。
「どうしたんだ、沢木」
具合が悪いのだろうと手をさしのべようとすると、それを払いのけ、
「絶対堕としてやる・・・」と小声で言い、そのままふらふらと駅の向こう側へ行ってしまった。

私は何だか嫌な予感を感じたのだが、この時は沢木があんなに早く次の行動をおこすなんて思っていなかった。

沢木と別れた後、大学へ行き二日酔いを堪えながら四時限目までをこなし、フラフラになって帰宅したのはもう夕方だった。
早番のはずの母はまだ帰ってきておらず、家の中は昨夜の宴の後始末がされた、いつもの我が家に戻っていた。
時間にはキッチリしている母の帰りが遅いというだけで少し嫌な感じがした。母は携帯を持っていないため、こういうときに連絡の取りようがなかった。一瞬本気で外へ探しに行こうと思ったがやめた。奴らのいう通りいつからこんなマザコン気質になったんだ、と自分の今取ろうとした行動を恥じていたら、玄関のドアがガチャリと開いた。

「・・・ただいま」
母が帰ってきたのだが、その声には張りがなかった。いつもは元気いっぱいの母なのに・・・。

「遅くなってごめんね・・・」
「おかえり、どうしたの、何かあった?」
私は喰い気味に応えながら母に近寄った。

私が近寄りすぎたのか母は思いの外驚き少し後退りをし、
「あ・・・あのさ、怒らないで聞いてくれる?」
「?」

確かに様子がおかしいのだが、母の表情は被害者のそれではなく、どちらかといえばもう一方のような気がした。
「あはは、実はさ・・・、沢木君がね・・・」

母の話をまとめるとこうだった。

沢木は私と別れてからお昼前に母の勤めている牛丼屋へ行き、吐き気を堪えてでも母に会いに来たことを告げミニ牛丼を注文したのだが、母の「何だい情けないね、あれくらいの酒で。五杯や十杯くらいペロッと平らげてみなよ」という発言に、「平らげたらデートしてくれます?」と応酬したところ、「ああいいよ。食ったらね」という母の不本意な返答を鵜呑みにしてしまい、四杯目の途中で白目をむいて泡を吹きぶっ倒れたのだそうだ。

店内にいたお客からの通報ですぐに救急車がやってきて、救急隊員に「なにがあったのですか」と言われた通報者が、「この店員さんがお客を煽って・・・」と母の疎かな行為をチクったことにより、母はまず救急隊員に怒られ、別の救急隊員が沢木を救急車に運びながら、「この方のお知り合いはおられますか」という問いに気まずそうな感じでそっと手を挙げた母はその人に、「なに、あんたなの? ちっ、じゃあ乗って」と舌打ちをされ沢木とともに救急車に乗せられて病院に着くと、今度は事情を説明した看護士さんとお医者さんに怒られ、挙げ句の果てに後から駆けつけた牛丼屋の店長にこっぴどく怒られた。
沢木は治療室に入れられたがすぐに意識を取り戻し、母が大人なのにものすごく怒られたことを知ると、「すべては自分が招いたことなので池田さんはのせいではないです」と母をかばってくれた。
沢木の様態について医者から言われた診断結果は、「椅子から倒れ落ちたことによる、右人差し指及び右手首並びに右腹部周辺の打撲で全治二週間」だそうだ。

怒るというより、呆れてため息が出た。何という馬鹿げたことを・・・。母も母だが、沢木も沢木だ。あんなに思い詰めた顔をしてこの行動かよ・・・。

「・・・でね、医者が言うには、右手は暫く箸を持つのも困難だろうし、腰にはコルセットをするので重いものも持てないだろうから日常生活に困るだろう、なんていうのよ」

そりゃそうだろうな。沢木も災難というか何というか・・・。

「だからあたし言ったのよ。『私が責任もって面倒みます』って」
「え?」
「やっぱりさ、いい年こいて息子の同級生煽ってさ、病院送りにしたのはいくらなんでもまずいよね。うん、すごい反省してるよ。だからさ、罪滅ぼしというかなんというか、大人としてさ、彼の面倒をみる義務があるよね、うんうん。あ、そういう訳で明日から彼のところへ通うから何かと協力してよ。ていうか、あんたからも謝ってよね。一応彼は僕のせいだって言ってくれているけどさ、やっぱ友達として・・・」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
私はあらぬ方向へ話が猛スピードで進んでいくのを制した。

「あいつの所へ通うって?」
「そうなのよ、最初はね、『あんたウチの子の同級生なんだから暫くの間ウチに住みなよ』って言ったんだけど、嫌だっていうのよ、彼がね。だからしょうがないんであたしが行くんだよ。あ、でもね、今日は取りあえず病院に入院しているからさ、明日からのことなんだけどね」
「ちがうちがう、そうじゃない。何で母さんが行くことになったんだってこと。沢木が怪我をしたのは自業自得だろ」
「あんた、話を聞いていないのかい? 今言ったでしょ、あたしにも大人として責任があるって、馬鹿!」
「ちがうよ、その・・・、なんだ。あいつだって大学生なんだし立派な大人だよ。・・・大人の男だよ。そんな野郎の家に毎日通うって、その、ほら、なんだ・・・」
「なによ。ハッキリしない子だね。ごにょごにょ言ってんじゃないよ、あたしは明日の準備があるし、あんたやお父さんのことも色々やっておかないといけないし、忙しいんだよ。ハッキリ言いな、ハッキリと!」母の言い方に少しムッとした私は、
「あのな、あいつは昨日から母さんを口説いていたんだぞ。今日、店に行ったのだってそれ目的だし、『牛丼5杯食ったらデートして』まで言ってるような奴なんだぞ。そんな奴の所へ毎日行くなんて・・・、何かあったらどうするんだよ!」思わず声を荒げてしまった私を、母はきょとんとした顔でみていた。そしておもむろに大声で笑い出した。
「あっはっはっはっは、何あんたそんなこと気にしていたの? あっはっはっはっは、馬鹿だねぇ、そっかそっか母ちゃんがそんなに心配なのか、困った僕ちゃんだねぇ」
「なっ! あ、あのな!」
私の言葉に追い被さるかのように、母が静かに言った。「大丈夫。あたしはあんたの母ちゃんだよ。愛する息子や父ちゃんを裏切ることなんかしないよ。仮に、ハリウッドスターと一晩過ごしたって万が一の過ちなんておきやしないよ。あの子だってそりゃ、昨日は色々チャラいことばっか言ってたけどさ、あれは酒の上でのことだろうよ。酒が入れば場末のスナックの厚化粧のババだって口説きの対象になるよ。今日のことだって、昨日の今日でまだ冗談が言い足りなかったのよ。あたしは人を見る目はあんのよ。うん、あいつはそんなタマじゃないね。熟女好みというよりロリータ専門だな、うん」いつの間にか、家に帰ってきたときの母とは別人のように、いつもの母の表情になっていた。
「今回のことは本当にあたしが大人として失格だったの。お世話に行くのは当たり前なんだよ。だからあんたも協力してよ」母と話をしていくうちに、自然に母のペースになっていき、自分がくだらないことに取り憑かれていたような気がしてきた。
「・・・ああ、分かったよ。明日取りあえず一緒に行ってさ、俺からも沢木に謝っておくよ」
「頼むよ」
パーンと背中を叩かれ、母は台所へ向かった。その日の夜帰宅してきた父に事情を説明した母は、物静かな父に、静かにしかしこってりと怒られていた。

次の日、私と母は昼過ぎに沢木のマンションへ向かった。
県外で少し大きな事業をしている父をもつ沢木は他の学生たちと資金面でかなりの差をつけていた。だが普段の沢木はそれを私たちに自慢する訳でもなく、ただただ女性関係に使っていたので、私たちも普通に付き合っていたのだと思う。

午前中に彼からメールが届いた。これから病院を出るので迎えは結構です、という内容だった。まだ一人で歩くことがつらいらしく、(一昨日から)昨日家に泊まっていたあいつら二人に病院まできてもらったのだそうだ。そのことを伝えると母が、
「昨日お昼過ぎにタクシーで迎えにいくって言っておいたのに。待ってるように伝えて」
といわれ返信したのだが、これからお世話になるのにそこまでご迷惑はかけられません、と返ってきた。

「なにを変な気を使っているんだろうね。あっはっは」
私も少し可笑しくなり思わず笑ってしまった。「怪我をしたり弱ってしまうと、人は余計に他人を気遣うものだ」と誰かが言っていたのを思い出した。

沢木のマンションは五階建てで、生意気にも入口正面にエレベーターが設置してあり、築年数が経っているのかオートロックではなかったがそれなりのものだった。階段は外付けなので使用するなら一端反対側の非常口から出る必要があった。

エレベーターへ向かい上階へのボタンを押すと、既に一階に到着していたのか扉はすぐに開いた。
乗り込んだ定員数が六人の箱の中は見た目以上に狭く、母との距離が近かった。
私より背の低い母の髪の匂いが鼻をくすぐった。化粧のそれではなくシャンプーなのか何なのか分からない心地よい香りに包まれた。母は上部のフロアー表示を黙ってみていた。
この日の母は、ボーダーのTシャツにグレーのパーカーを羽織りピッタリしたデニム姿、動きやすそうないつもの格好をしていた。母のスカート姿など長いこと見ていなかった。何年か前に祖父の葬儀での喪服姿が最後だった。

五階につき左奥が沢木の部屋だった。
呼び鈴を押しても返事がないからドアを開け勝手に入るのはいつものことだったのだが、今日は母がいたので軽く声をかけながら入った。それでも返事はないのだが、リビングには大きなソファーベッドにパジャマ姿の沢木とそれを取り巻く二人がいた。
何やら話をしていたのだろうが、私たちを見るとハッとして会話をやめた。

「ああ、いらっしゃい。すいません、僕のせいでとんでもないことになってしまって。暫くの間、ご迷惑かけます」
すぐに笑顔で沢木が答えた。
「いやー、今こいつらと昨日おばさんに酒を飲ませたり失礼なことを言っていたのをどう謝ろうか話していたんですよ。以外に早かったですね。話がまとまる前にお着きでした。はは」
もっとも的なことをいう沢木に、
「あら、あたしは逆に感謝してるわよ。あんな高いお酒をあんなに飲ませてもらって。それにこんなおばさんを綺麗だどうとか誉めていただいて。あんたら若いのにどうかしてたんじゃないの?」
と母がおどけて答えた。

「はい。どうかしてました」そう言いながら、沢木は頭を掻いて失敗を詫びるような素振りをした。
母が殴るように右手を大きく振り上げると、沢木は隣の奴の背後に隠れようとして、痛てて、と腰を押さえ、母は、調子にのるんじゃないよ、と笑った。

何だか凄く良いムードだった。昨日の今日でこんなにも関係が良好するものか、と感心を通り越し奇妙にすら感じた。

「あんたたち午後から授業があるんじゃないの。高い学費払っているんだからサボるんじゃないよ」
母に言われ、本当はサボろうとしていた私と二人の連れは大学へ行くことにした。
おばさんに払ってもらっている訳じゃないんだけどな、と言った奴の頭を母が何の躊躇もなくパーンと張りながら、生意気言ってんじゃないよ、と凄んでいた最中、沢木が私に
「悪いな、色々と。まとめて謝るわ」
と両手を合わせウインクした。
「高いぞ。貸しとくからな」と、こっちも謝らなければならないのだが、そう言っといた。謝ったり謝られたりなんて気恥ずかしくてまともな感じでやってられなかった。

「責任はとるよ」

沢木の言葉に軽い違和感を覚えたが、母の
「早く行け!」
という怒声が私の思考を止め、逃げるという行動に移してしまった。

夕方、家に帰ると誰もいなかった。
母は大概この時間には家におり、夕飯を作っているのだが・・・。

それというのも我が家では、父が判で押したように、毎日六時四十五分に帰宅していたのだが、父は待つということが出来ない人で、着替えを持ちすぐに風呂に入って湯上がりに缶ビールを飲むことを日課としていた。

夕飯の支度がされていなたったり風呂の準備がされていないと途端に不機嫌になった。別に怒鳴る訳でもなく、いつも通り黙っているだけなのだが、母はそれを嫌っていた。

母はそんな父に、夕飯を作りながら、簡単にさっと一品おつまみを作って差し出していた。それらが無くなる頃には食卓に料理が並んでおり改めて、いただきます、となり父は更に酒一合を飲む、というのを飽きずに日々繰り返していたのだった。

六時をかなり過ぎた頃、慌てて母が帰ってきた。
「ごめんごめん、遅くなっちゃった。すぐご飯作らなきゃ。お父さんが帰ってきちゃう」
母は走って来たのか、髪が多少乱れて汗を結構かいていた。息も乱れていて全身からムッとした熱気を感じた。

「遅いよ。何やってたんだよ。もう父さん帰ってくるよ」
「わかってる。ごめんてば。あの子の部屋汚くてねぇ。掃除するのに結構時間掛かってさ」
パーカーを脱ぎエプロンを着けながら母が答えた。

「そんなこともやってるの? お世話するだけなんじゃないの」
驚いて聞いた私に母は、
「何言ってんのよ、お世話ってそういうものだよ。ご飯作ったり洗濯したり掃除したりご飯食べさせてあげたり。あ、悪いけどお風呂沸かしてくんない」
「ご飯?」
「そ、利き手やっちゃったからね。あ、玄関にさっき買ってきたトイレットペーパーがあるから納戸にしまっといて」

細かい指示を出しながら家事をするのは日常のことで、私もそれに応じながら母に言った。

「左手で食べりゃいいのに」沢木が母に甘えて食べさせてもらっている光景を想像してしまった。
「馬鹿だね、この子は。難しいんだよ、左手で食べんのは。あんた今日やってみなよ」
何も答えなかった私に、
「ひょっとして・・・、まだ気にしてるの?」
と母が不安そうに聞いてきた。

いつの間にか、また沢木が母にどうかするんじゃないか、みたいな感情に襲われていた。そんなことはないって本人も言っていたのに。

「ち、違うよ。自分だったら食べさせてもらうのは恥ずかしいと思っただけ。あ、そうだ、石鹸切れていたんだっけ。出しとくよ」
心を見透かされたような気がしたので、私は誤魔化すかのように言った。

「お、さすが我が息子。偉い偉い」
手早く冷蔵庫から野菜を取りだしながら、母が答えた。しゃがんだジーパンの腰から白いパンティがみえた。親の下着なんか普段は何とも思わないのだが、変に心臓がドキドキした。
私はそれを見ないようにし。性的なことと親を結びつけたくなかったのだ。

その日の夕食後、いつものように部屋へ行き、日付が変わる少し前に風呂へ入ろうと階下へ行き、ふと居間を覗くと母が携帯を手に一生懸命メールらしきことをしていた。

私は我が目を疑った。
あれ程携帯嫌いを自負していた母に何があったというのか。

「どうしたの、それ」
母は顔をあげずに、
「なにが」
と、私の問い掛けが一切頭に入っていない反応を示し、まだ不馴れな指使いを繰り返していた。

「それだよ、携帯。ついに買ったの?」
「そんな訳ないでしょ。渡されたのよ、沢木君に」
「え、渡された? 」
ふう、と息をつき母はようやく私の顔を見た。

沢木のところへ行った母が夕食を作ろうと思い冷蔵庫を開けてみたが何も入っておらず、近くのスーパーへ行ってくることを沢木に告げると、何かあったら困るから携帯番号を教えてくれと言われたのだという。

携帯は持っていないの、と母がいうと、『え、今時、なんでなんで』とお決まりのやり取りがあった後、『じゃあこれ持ってきなよ』と渡されたのだそうだ。

「前の携帯って言ってたわ。違う携帯会社のにしたんだけど解約し忘れていたんだって。沢木君の電話番号とアドレス? しか入っていないホントに連絡用なのよ」
見ると最大手のものだったが、あいつこんなの使っていたかな? 思い出せなかった。

「まあ、確かに怪我人を残していって何かあったら嫌だしね」
母はまた携帯の画面に目をやっていた。返信が気になっているのか、落ち着きがなかった。

「この時間でも、呼ばれたら行くの? 」
壁に掛けられた時計を見ながら私が言うと、
「まさか。でも、救急車くらい連絡できるでしょ」
それなら、沢木が自分でした方が早いだろう、と思ったが言うのを止めた。
「ほら、そんなこといいから早くお風呂に入っちゃいな。明日も学校でしょ」
母が携帯を置きながら言った。

「明日、午後からだから早く起こさないでよ」
「わかったから、早く、お風呂! 」

風呂から上がり炭酸系ジュースで喉を潤し、部屋に戻ろうとすると、居間の電気がついていた。消そうと思い近づくと、母がまだ携帯をいじっていた。

真面目な母のことだから、メールがくるとすぐに返さなければ悪いとでも思っているのだろうか。

あまり、しつこく何だかんだいうのはしたくなかった。母に疑われるのも、からかわれるのも嫌だったからだ。

私はそっと部屋へ戻った。

次の日の昼前に、私が起きたら母はちょうど出かけるところだった。

「出掛けるとき、戸締まりキチンとしていってよ」

白いポロシャツと黒いパンツ姿の母が、ボーッとしていた私の横をパタパタと通り過ぎた。
玄関へ向かう母から甘い良い香りがした。
それはシャンプーや自然の香りではなかった。

『香水・・・? 』

いってきます、と母は出ていった。
一瞬見えたその横顔は、笑っていたかのように思えた。

どうしても休めない授業を出て、帰ってきたのは五時頃。

母は六時過ぎに、「セーフセーフ」と息を切らしながら帰ってきた。

何をそんなにお世話をすることがあるのだろうか。
うるさがるので余計なことは言わず、おかえり、とだけ言った。

すばやく風呂を沸かし夕食を作り、父の帰宅時間に何とか間に合わせ、家族揃って食卓を囲った。

朝のことが気になり、母の傍へ行き、そっとクンクンと匂いを嗅いでみた。
が、何も匂わない。
どちらかといえば、汗の匂いがするかな、という感じだった。

それに気付いた母が、
「なによ。・・・人の匂いを嗅いだりして」
と、私から逃げるように体をくねらした。

「いや、別に」

変な子、と母が大皿料理に手を伸ばした。
父は黙々と食事を続けていた。

何も変わらない日常。

本当に何も変わっていないのだろうか。

母の作ってくれた愛情ある食事が、一瞬色褪せて見えたのは、気のせいではなかった。

それから三日目、四日目と、母は毎日沢木のところへ通った。

午後からだったのが午前中からになり、部屋着同然だった服装がブラウスにパンツスーツ的な外着になり、あまつさえ、うっすらと化粧さえするようになった母に一抹の不安を覚え、それとなく問い掛けてみたが、返ってきた答えは、
「外へでるのだから、この位の身だしなみは当たり前でしょ」
というものだった。

明日から週末になるという金曜日の夕食後に、母のパート仲間の大山さんから電話がきた。

大山さんはその名の通り大柄なおばさんで、母に負けず劣らずお喋りな明るい人だった。

子機を手に持ち、「あらあらあらあら、どうもどうも」と居間から出ていった母。

壁に貼ってある銀行からもらったカレンダーの明日の日付には大きく赤丸が書かれていて、『
さくら会 旅行』と記されていた。

さくら会とは、母と大山さんと他二名からなる会で、毎月幾らかの積立をし、旅行をしたり、
少しいいレストランなどで食事をしたりして、日々のストレス解消をするための会だった。

毎年恒例のさくら会の旅行が明日なのは、ずっと前から決まっていたことなのだ。
今年は沢木の件があるから母は不参加なのだろう、と勝手に考えていたのだが、電話を終えた

母が、
「明日の準備をしなきゃ」と子機を台に置きながら呟くように言った。

「旅行、いくの? 」
「当たり前じゃない。前から言ってたでしょ」
「あいつのとこに行かなくていいの? 」
母は私の顔を見つめ、
「あれ、言ってなかった?週末は彼女が来るからあたしは行かなくていいのよ」
と言った。

母が言うには、沢木は年上のOLとつきあっているらしく、彼女が平日仕事で会えないので週
末にタップリ会うのだという。

私は、その彼女のことについて、沢木から何も聞いていなかった。

「ふうん。そうなんだ」
そんな彼女がいれば、母に対する一連の行為など冗談に決まっている。平日に彼女に会えないから溜まっていたのか。母の言っていた、酔っぱらえば場末のスナックのババすら・・・という言葉を思い出した。

「あ、そうそう。美味しい温泉まんじゅうのお店があるんだって。買ってきてあげるからね。お父さんには、何かお酒のつまみとか買ってこようかね。楽しみしていなよ」
母はいつも私たち家族のことを考えていた。そのことが嬉しかった。
「うん。楽しみにしてるよ」
私は笑顔で答えた。

次の日の朝早く、母は出掛けていった。

そして、その次の日の夜遅くに帰ってきた。

いつもは旅行から帰ってくる日は、夕方早めに帰ってきていたのだが、
「ごめんなさい。なんだか話が盛り上がっちゃって」 と、お土産と駅前のスーパーの総菜を私らに渡すと、「疲れているから」と寝室へ行ってしまった。父と私は呆気にとられたが、確かに母は憔悴しきった顔をしていたので、何も言わなかった。

総菜をつまみに酒を飲んでいた父がぽつりと、
「途中で連絡してこないなんて、母さんどうしたんだろうな」
と呟いた。
私も、そうだね、と言い冷めたカニクリームコロッケを食べた。

「母さん、着替えもしないで寝たのかな。おい、ちょっと見てきてくれ」
二本目の銚子を傾けながら、父が言った。

私は両親の寝室へ行きドアを開けると、母はベッドで死んだように眠っていた。脱ぎ散らかした上着、ジーパン、靴下が床に散乱していた。
口元まで布団を掛けて寝ていた母を見て、ふと母が下着姿で寝ているのだろうか、と思ってしまった。母に対して性的な感情を思ってはいけない、なんて言いながらも思ってしまったら仕方がなかった。

父が来ないことを確認して、そっとドアを閉めると、私は母の傍に立ち起こさないようにそっと布団をめくっていった。

心臓がドキドキして、口が渇いてきた。
こんなことしていいのだろうか。
でも、布団をめくる手は止まらなかった。

母は太ももまで隠れる白いロングTシャツで寝ていた。
私は余計に興奮してしまい、そのTシャツの裾を捲ろうとした。

その時、うーん、と母が寝返りを打った。

私はビクッとして、手を離し一歩後ずさりをした。その時、ドアがガチャリと開き、
「どうした。おお、ちゃんと寝ているな」
と父が入ってきた。
私は更にビクッとなった。
父に、「どうしたんだ。そんなに驚いて」と言われ、訳の分からない受け答えをしながら自室へ戻っていった。

部屋に入っても、動悸は暫く止まらず、私は自分のしてしまった行為を後悔した。

次の日、午後から一つだけあった授業を受けた。

昨日の母に対する自分自身の行為が頭から離れなかったため授業も上の空で、誰かと憂さ晴らしにカラオケでもと思えど、こんな時に限って見知った顔もなく、そうかといってまだ家に帰る気にもなれず、何とはなしに大学の最寄り駅近くのコンビニで雑誌を立ち読みしていたら、池田くん、と呼ばれて振り向くと、小悪魔系の女性がニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて立っていた。

「何してるの? 授業終わり? 」
笑うと八重歯が見える彼女は滑川さんといって、一回生の頃、必修が一緒でよくノートの貸し借りをしていたのがきっかけで仲良くなった子。
離島の分校出身で、入学当初は黒髪ロングで野暮ったい服装のいかにも田舎から出てきました的な純朴な子だった。
ところが、一回生の夏休み明けに急に路線変更し、ガチンコのギャル系に変身してしまった。
あまりの変貌ぶりに、超可愛い転入生が来た、と噂になったくらい、原型がなくなっていたのだが、元々容姿は整っていたのだから、それは至極当然の変身結果だった。
変貌後からは、あまり大学へ来なくなり、試験の近辺になるとひょっこりと私の前に現れノートを借りていく、という付き合い方に変わったのだが、私が学内で話せる数少ない女性の一人であることには変わりはなかった。

久しぶりだね、という私の挨拶に被せぎみに彼女は、「もう聞いて、超最悪」と話し出した。
付き合っている彼氏と会う予定だったのに、ドタキャンをくらってしまって、このまま帰るのが馬鹿馬鹿しくなっていたのだという内容。

「という訳で、飲みに行こうよ」

私も暇を弄んでいたことを告げると、
「嘘!? 偶然。じゃあ寂しいもの同志、とことん飲んじゃいますか」
と、滑川さんは私の腕を引った。

私たちは、近くの居酒屋へ行き、数少ない個室をゲット出来たことに小さな幸せを感じ、とりあえず生を注文して、「わっ」と乾杯した。

「二人で飲むのって初めてだっけ? 」
滑川さんがジョッキを一気に半分空けてから言った。私が、そうだ、と答えると、
「イエーイ! お初だお初だ」と、かなりのハイテンションでまた乾杯を求めてきた。

「滑川さんて、前はこんな感じじゃなかったよね」
「前って、いつ」
「一回生の前期」
「うわぁ。いつの話をしてるんだ、君は」
タコわさが辛かったのか、変な顔をしながら彼女が言った。

「女は変わるのだよ、常にね。そういう池田くんは変わんないね」
「そう? 」
「うん。ずぅっとこんな感じ。ね、ね、彼女とかいないの」
早くも二杯目のジョッキに入っている彼女は、よく飲みよく喋った。

「いないよ。二回生の最初に少しだけ付き合っていたけど、すぐに別れて。それからは全く」
えー!?、誰誰、と滑川さんは私の恋愛話に食い付いた。
あまり広がらないよ、と断り少しだけ説明し、ちょっとだけ盛り上がった。同じ学部の目立たない子と付き合っていたのだが、滑川さんはその子を知っていたのだという。

「俺のことより滑川さんは誰と付き合っていたのさ」自分の話が照れ臭くなり、彼女に話題を振った。

「あたしは外部が多いからなぁ。同じ大学だと・・・」
腕を組み天井を見上げ勿体ぶって考えている滑川さんをみて、ちょっと可愛いな、と思ってしまった。
今の今まで本当にそういう目で見ていなかったのだが、彼女のペースで飲んでいたのでいつも以上に早く酔いが回ってきたのかも知れなかったが、彼女の次に発した言葉に、酔いは何処へと消え去った。

「公平くん。あ、沢木くんて言った方がいいかな」

思わずビールを吹き出しそうになったのを何とか堪えたが、咳き込むことは押さえられなかった。

「えほっ、えふほ、・・・誰だって? 」
私の必死の問いかけに、きょとんとした顔で滑川さんは答えた。
「なーにむせているのよ。沢木くんよ。ほら、知っているでしょ」
「いや、知っているよ。えほっ、そうじゃなくて・・・、え、いつ? なんで? 」

私は、この時何が起こったのか処理をすることが出来なくなり、彼女の発した人名がただグルグルと頭の中を駆け巡っていただけだった。

「いつって、一回生の夏休みかな。何でって・・・、何でだろ」

「沢木って、沢木だよね」
「そ、公平くん。池田くんの友達の」
すいませーん、生もう一つ、と彼女は何事もなかったかのようにビールを注文した。
こっちは何事が起こったのかと思った。

沢木と滑川さんが付き合っていた?

そんなこと初めて聞いた。
一回生の夏休みから今日まで、どれだけこの二人会ったことか。

それなのに。

どちらからも聞かされていなかった。

なんで・・・。

「今まで言わなかったのは、隠していたの? 口止めされていたとか」
「え、違うよ。てっきり知っているのかと思っていたから」
「いや、知らなかった。結構付き合っていたの? 」
「全然。夏休み明けには別れていたよ。あたしが振られたんだけどね」
「でも・・・」

あの時、沢木と接点なんかなかったよね、と私が聞くと、
「何いってんのよ、池田くんが引き合わせてくれたんじゃない」
と言われた。

一回生の夏休み前に、ある講義でグループ課題を出され、同じ班でまだ変貌前の滑川さん含む数人と、何日か掛けて課題制作をしたことがあった。

打ち上げと称してみんなで居酒屋へ行ったのだが、そこに偶然沢木が別の仲間といたのだという。

細かくは覚えていないが、言われてみれば、滑川さんを沢木に紹介したかも知れなかった。

でも、あの時はその程度で終わっていたはずだ。この後すぐに二次会のカラオケへ流れていったのは記憶に残っていたからだ。そこに沢木はいなかった。

「一瞬だったよね? 挨拶を交わしたのなんて」
「うーん、そうね。でも喋ったよ、結構。池田くん酔ってたから判んないかもしんまいけど」
冷めた唐揚げを食べながら、滑川さんはいった。

「それで・・・、その、すぐに奴のことを好きになったの? 」
私は恐る恐る聞いた。
「まさか! あたしもあの当時はまだウブだったからさ、最初はなんて軽薄な人って思ったよ。間違っても付き合うことなんてないタイプだって、自分の中で瞬時に分類分けされたわ」

「・・・それなのに、何で付き合うまでの関係になったの? 」

滑川さんがいうには、居酒屋で沢木と初めて会った日の翌日に、自分のアパートの近くのコンビニで沢木と偶然の再会をし、ああだこうだと話をしている内に、その数時間後には自宅のベッドの上でお互いを求め合っていたのだという。

「何で付き合うことのないタイプだった男と、そんな短時間で男女の関係になるの? ひょっとして無理矢理やられちゃったとか? 」
今思えば女性に対してかなり失礼な質問だが、その時の私には心の余裕がまるでなかった。

「でも、男の人って誰でも最初は強引だよね。それを無理矢理ってとるかどうかはその人次第でしょ」
彼女は微塵も嫌な顔をせずに答えてくれた。

離島から出てくる直前に唯一の同級生の男子とセックスの真似事をしたことがあったから一応は処女ではなかったのだが、ほぼ無垢な彼女はその日から三日三晩沢木に開発をされ、最後には自ら沢木を求め、腰を振り、ヨダレを垂らしながら激しくイってしまったのだと、彼女は身振り手振りを加えながら楽しそうに私に教えてくれた。
「もう、ずっと絶頂って感じ? ビクンビクンって。それまであたし、イったことなかったからさ、ふふふ」
「三日三晩!? 」
「そ、ほとんど寝なかったなぁ」
「沢木ってそんなにすごいの・・・」
目の前にいる滑川さんの在らぬ姿を想像してしまって口の中が渇いてきた。

「そうね、何がスゴイって・・・」
体力があるのはもちろんのことだが、それにも勝るテクニックがあるのだという。
彼の指使いは繊細で激しく何処を触ればいいのかセンサーでも付いているかのようだし、舌使いは柔らかく強く包みこまれるかのようだし、

「一番はね・・・」
彼のあそこは、正に彼自身のシンボルであり、その出で立ちは長く太く逞しく、天に向かって聳え立つ神柱のようなのだと。

私は言葉が出なかった。

滑川さんは、その後も沢木との情事を、笑いながら話してくれた。それはそれは大変濃厚な話で、目の前にいるこの子がそんなことまで、と思うと、酔いも手伝ってか嫌でも興奮してきた。

私はその話を聞いているうちに、図らずとも勃起してしまった。

それを気づかれないようにさりげなくポジションを直していたら、
「えいっ! 」
と、いきなり滑川さんが私の股間をタッチしてきた。

「ひゃっ! な、な・・・」
狼狽えてしまった私は、彼女に、
「あー! 池田くん、あたしのこと想像して勃起してるぅ」
と小悪魔顔で笑われた。

「な、なんだよ。いきなり・・・。そ、そりゃ、こんな話を聞かされたら、お、男なら誰だって・・・」

「あはは。いいよいいよ。あたしそういうの気にしないし。むしろ好きかも」
そういいながら彼女は小首を傾げた。

元々、私は滑川さんをそういう目で見てはいなかった。どちらかというと派手めな感じより大人しめの方が好みだったからだ。昔の滑川さんだったらもっと発展したかも知れなかったが。

だからという訳ではないのだが、下心がなかったという前提で、彼女にどうしても確認したかったことを勇気を出して聞いてみた。

「あ、あのさ・・・」
「ん、なぁに」

私は恥ずかしくて口ごもっていたが、ぶっちゃけ私の性器と沢木のものと、大きさにどれくらいの違いがあるか聞いてみた。

滑川さんは、まさか私からそんな話を降られると思っていなかったのか驚いた表情を見せたが、じゃあ、脱いでみてよ、と言ってきたので、触った感じでいいからさ、と披露は断固拒否したままお願いしてみた。

彼女は考える間もなく、
「全然ちがうよ」
と答えた。

「んーとね、分かりやすく言うと・・・、針金と鉄パイプ? くらい」

分かりやすいのかは知らんが、そんな差ってあるか?
「もはや用途が違うし」
私は更に恥ずかしくなり、苦笑しながら言った。

ホントだぁ、と笑った彼女だったが、
「でもね、池田くんのは普通だとおもうよ。あ、見ていないから確信じゃないけど。公平くんのが異常なんだよね」
と、慰めでもなく真剣な感じで言った。

「だから、彼と別れてからは大変なのよ」
滑川さんは自分のおしぼりでテーブルの滴を拭きながら言った。

何が? と聞くほど私は疎くなかったので、黙っていた。

「あたしの今の彼氏はね・・・、黒人の元ポルノ男優よ。あ、日本じゃなくて向こうでね。大きさはいいんだけど、テクがねぇ。巧いんだけど何か物足りなくて・・・」

黒人のポルノ男優!?

そんな奴と比べても尚、沢木は上回るのか。
別に、だからといって男として劣っているとは思えないが、あまりにも自分にないものだらけの沢木の話しに、私は暫く考え込んでしまった。

「あ、でも普通サイズも好きなんだよ。・・・て、あはは、あたし何言ってんだろ。酔っちったかな」

確かに何だか変な展開になってきていた。

さっきまで下心がない、なんていっていたのに、もうどこ吹く風だった。

私は私で、昨日の晩母にしてしまった行為を引きずっていたし、彼女は彼女で、抱かれるはずだった彼氏にドタキャンされ、元彼の沢木との情事を話しているうちにおかしくなってきたのだろう。

この時、おそらくどちらかが相手の手を握ったら、そういう関係に陥っていただろうが、それはなかった。
「い、いや実はさ」
暫しの沈黙を破って、私は母と沢木のことを話した。本当は話す気などまるでなかったのだが、この状況に耐えられず笑い話にでもなればいいと思ってのことだった。

「もう、いくら公平くんでもオバサンになんか手を出さないよ」、という風になると思いきや、滑川さんは真剣に聞いていて、時折深く頷き何やら納得しているように思えた。

「ね、池田くんのママさんの写メある? 」
話を聞き終わるや否や、彼女がそう言ってきたので、携帯の中を探してみると、沢木らが泊まったときのものが数枚あった。

何とはなしに、高級なワインを中心に沢木と母が笑顔で写っている写メを見せると、
「嘘? この人、池田くんのママさん? ウッソー、超綺麗じゃん」
と彼女は驚いた。

池田くんのママさんって背が小さい? と聞いてきたので、そうかな、と答えると滑川さんは少し考えてからこう言った。

「多分もう男女の関係だよ」

「公平くんてあんまし年増に興味がないんだけど、これだけ綺麗な人なら・・・、あるわ」

聞きたくないことだった。

わざと考えないようにしていたことだった。

そんなことを聞きたくて、滑川さんに話した訳ではなかった。

彼女が発した言葉に憤りすら覚えた。

「は? 何言ってるの。そんなことある訳ないじゃん。何でそんな断定的に言えるんだよ」

私がそういうと彼女は、
「怒らないでよ。そう思ったから言っただけなのに。別に断定的とかじゃないけど・・・、多分って言ったじゃない!? 」
と、少し困惑しながら言った。

「あのな、相手は俺の母親だぞ」

「池田くんからみたらそうだけど、公平くんからみたらただの綺麗な女性だよ」

「あ、あいつからみたって同級生の母ちゃんだ。年だって、は、離れているし、それに・・・。普通、同級生の母ちゃんと何かしようと思うかよ。じ、常識的にさぁ・・・」

言葉が上手く出てこなかった。滑川さんに反論したところで何も変わる訳じゃないのに、必死で彼女に食って掛かった。

「それは、公平くんには関係ない話だと思うよ。彼って多分・・・、サイコパスなんだと思う」

・・・なんだ、それ。

私は、訳が判らなくなってきた。さっきから大声で話していたので喉が痛かった。目の前には、届いてから一度も口をつけていない生レモン酎ハイの氷が完全に溶けていた。

「・・・ごめん。意味がまったくわからん」
私は、いつの間にか前のめりになっていたことに気付き、背もたれに寄りかかった。

「つまりね、公平くんて社会の捕食者なんだって」

滑川さんがいうには、サイコパスは病気ではなく人格障害なのだと。人に対して冷淡で、良心というのがなく、罪悪感もない。ただ、理屈としては事の善し悪しは区別がつくのだが・・・、ということらしい。

猟奇殺人者とかに多いのだというが、あれはブラックで、沢木はホワイトサイコパスなのだと。

「ホワイト? 」

「政治家とかにいたりするんだって。頭が良くて、人気があって、常に人の中心にいて、饒舌で・・・、でも嘘つきで。そのことに罪悪感を覚えないから成り立つ商売だってテレビで言ってたわ。なんかそう言われると政治家ってみんなそう思えてくるよねー」

政治談義なんてするつもりはなかったので、そんなことはどうでもよかった。

「ちょっとまって」

俺は話題をそらすまいと、滑川さんに疑問をぶつけた。

じゃあ、なにか。うちの母ちゃんはそのサイコパスで黒人男優以上の性の申し子のような奴の口車にのってしまい、男女の関係になってしまった、ということかと聞くと、それは違う、と否定された。

「あたしが言っているのは、友達のママさんとセックスしても道徳的に何とも思わず、罪悪感もないというところまでで、セックスは池田くんのママさんの自己判断だと思うよ」

「・・・だって、沢木は饒舌で嘘つきだから俺の母親をたらしこんだんだろ? 」

「セックスに嘘はないわ。レイプされたのなら別だけど、あとは全て合意よ」

「ま、まさか・・・。滑川さんは俺の母さんをよく知らないからそんなこと言ってるんだよ。母さんなんて、あれだよ!?・・・」

私は、いかに母が『肝っ玉母さん』かを説いた。滑川さんは黙って聞いていた。まだ話の途中だったが、彼女が私を制して言った。

「もういい。・・・解ったから」

「わかってくれた? でしょ? どう考えたって母さんが沢木となんて現実的にあり得ないっしょ」

「池田くんが何もわかっていないことが解ったのよ」
「は? 何でだよ! 」

「だって、考えてみなよ。携帯を持たなかった人が、夜な夜なメールをして、香水をつけない人が付けて、服装も気にしだし、時間きっちり人間がルーズになり、あげ句には、家族の輪を築いてきた食卓事情も変わったんでしょ。お惣菜とかが増えてさ」

滑川さんは一気に話すと、さっき頼んだ芋焼酎のボトルから、ドボドボと自分のコップに半分くらい注ぐと、一息に飲み干した。

「誰が聞いたって、クロでしょ」

ふう、と私から目を逸らして言った。物分かりの悪い奴に言うかのように。

「そんなことない。絶対ない! 違うんだって。うちの母さんは、違うんだよ」
滑川さんは、必死に母のことを話す私を黙って見ていた。嘲るでもなく非難するでもなく。

「まじめで、家族思いで、そりゃ口は少し悪いし、何かっていうと手が出るけど、料理や掃除、洗濯なんて完璧にこなして、オヤジの帰りを待ち、俺の心配をしてくれて・・・。だから、そんな。母さんが他の・・・ましてや、息子の・・・。違うよ・・・。絶対に、違うよ・・・」

だんだんと声が小さくなっていった。どんどん自信が揺らいでいった。

「池田君てさ。ママさんのこと、よく知らないんだね。あなたはさっきから『お母さん』ていう一面のことしか言っていないじゃない。今言ったことって、お母さん業だよ、全部」

滑川さんの言葉に、私は、ハッとした。

彼女は続けた。

「ママさんだって、女性だよ、人間だよ。池田君があたしと公平君との話に勃起したように、同じことを、ママさんにしたら、女性として何らかの体や心の変化はあると思うよ。あそこが濡れるかもしれないし、興奮するかもしれないし、抱かれたいって思うかもしれないし。そんなのはさ、当り前じゃない!? そりゃ、母かもしれないし、妻かもしれないけど・・・、女だもん」

「知ってるよ、そんなこと。言われなくたってさ! 息子としてじゃなく、人として! 」

何も知らないことを責められているような気がして、大きな声を出してしまった。

彼女は冷静に聞いてきた。

「じゃあ、ママさんって虫歯が何本ある? 好きな下着の色は? 初体験の相手と場所は? 座右の銘は?コンプレックスは? トラウマは? お父さんと最後にセックスしたのはいつでそれはどうだったの? 」

滑川さんは決して責めている口調ではなかった。まるで家庭教師先の生徒に分かるまで懇切丁寧に教えるように穏やかに、しかしはっきりと凛とした態度で言ってくれた。

「・・・そんなこと、知るわけないよ。そんなこと知っているからってどうなるというんだよ」

「多分、公平君は知っているよ。
全部かどうかは別としても。彼ならそのくらい聞いているし、見ているし、感じている。他の状況から推測していることもあるだろうし。
人間として、女としての池田ママさんと接していると思うよ。それはママさんにも絶対伝わっている。だから、身も心も許す存在になっているはず」

言葉が出なかった。

母をよく知っているようにしている自分が、実は一番知らないのかもしれないと思ったと瞬間に、体中の力が抜けた。

その後のことをあまり覚えていない。

滑川さんは携帯が鳴ったので、電話をしに外へ出ていってしまった。

私は、ボトルの焼酎を手酌でガバガバ飲んでいた。

どのくらいかして、彼女は片手でゴメンねとしながら、彼氏と急に会えることになったから行くね、と自分の飲み代より少し多いお金をテーブルに置いた。

私が、おそらく、多いから返すよ的なことを言ったのだろうが、彼女は、いいよいいよ、それよりごめんね、こっちから誘っておいて途中で抜けて。
それと・・・、何か言い過ぎちゃったみたいね。気にしないでね、と言い残し去っていった。

それから、残っていた焼酎のボトルをすっかり飲んで一時間くらいその場で寝ていたら店員が来て、大丈夫ですか、と声をかけられたので、暗に帰れと言うことなのだろうと解釈し、すいませんを連呼し然るべき料金を支払い外へ出て時間を確認するも、意外と早い時間帯だったので、駅とは逆方向にある大きな公園へ行きベンチで寝ていたところ、巡回中のお巡りさんに声をかけられ、またすいませんを連呼して駅に向かったときには、結構酔いが覚めて、少し冷静さも取りもどしていた。

電車を待つ間、頭の中は先程の滑川さんとの会話で一杯になっていた。

確かに、彼女の言い分には筋が通っていたが、別に見たわけでもないし、沢木に聞いた訳でもないことだ。

ただ、彼女は以前沢木と付き合っていたことがあって、何となく昔のことを思いだし、『そうそう、彼ってそういうとこあるよね』みたいな、いわば元カノというものに酔っていただけなのかもしれなかった。

だからこそ、彼氏から連絡が来たら慌てて駆け出していったじゃないか。

所詮、他人事。酒の肴になれば面白可笑しく好き勝手に言えばいい。

そんな風に考えていたら電車が来た。

駅に降り改札を出て、ふと右手にある牛丼屋の灯りに目がいった。 

母が勤めている某チェーン店。

普段は母の出勤時以外でも行くことはほとんどなかったが、この時は何故か足が動いていた。

店内には、中年のサラリーマンの客が一人だけおり、カウンターには暇そうにしていた母の同僚でさくら会の大山さんがこちらをみて、
「いらっしゃ・・・、あらー、池田さんとこのお兄ちゃん!? 」
と、珍客の来店を喜んでくれた。

「この度は母がご迷惑をお掛けしまして」
「あら、そんないいんですよ、それよりお母さん大変だったわね」
と、大人の会話をしていると、サラリーマンがお金を置いて出ていった。

あ、いつもどうもね、と大山さんがお礼を述べ、空いた食器を片しながら、常連さんなのよ、と聞いてもいないのに教えてくれた。

「そういえば、この間の旅行は楽しかったですか」

並を食べながら、思い出したので聞いてみた。

「お陰さまで、楽しかったわ。あ、そうそう、あのお饅頭食べた? あれ有名なお店でね、並んで買ったのよ。美味しかったでしょ」

はい、とっても。

母もそうだが、大山さんもかなりの話し好きだ。

旅先で、あれがどうしたこうしたと、楽しそうに話してくれた。

私の頭の中には、まだ行ったことのない情景が、母と大山さんを交えて浮かんでいた。

「・・・あら、ごめんなさいね。長々と喋っちゃって」

「いえ。じゃあ、僕はこれで・・・」

お金を置いて帰ろうとしたときに、大山さんから思ってもいなかったことを言われた。

「今度は、一緒に行きましょうって、お母さんに伝えてくださいな」

「!? 」

一瞬、言われた意味が判らなかった。

「・・・行かなかったんですか? うちの母は・・・」

「何いってるのよ。行ける訳ないじゃないのよ。ずっと看病とかで通っていたんでしょ? 」
呆れたような顔で、大山さんは私を見た。

え? え? え?

頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。

旅行へ行かなかった?

でも、あの日、荷物を抱えて、朝早く出ていった・・・。

行かなかった・・・。

それなら、いったい、どこへ・・・。

まさか、まさか・・・。

じゃあ、あのお土産は!?

「・・・母と最後に会ったのはいつですか」

私は聞いてはいけないようなことを聞いた。

いや、聞いてはいけないのか、聞かなければいいのか判らなかったが、とにかく聞いてしまった。

そんなこととは知らず、大山さんは少し考えてから言った。
「そうね、それこそ、そのお饅頭を渡した日よ。そこのバスロータリーで。何か池田さん急いでいたのか、受け取ったらすぐに行かれてしまったから・・・。旅行の話しもまだしていなかったわね」

母は旅行へ行っていない・・・。

私たちに嘘をついて・・・。

お土産まで用意して・・・。

完全にクロね。

滑川さんの言葉が脳裏をよぎった。

クロ、クロ、クロ、クロ、クロ、クロ、クロ、クロ。

「やだ、お兄ちゃん、まだ酔っているんじゃないの? 」
大山さんに笑われながら店を出た。

駅からの帰り道がいつもと違う風景にみえた。

母を性的な対象に見始めている自分に気付き、それを気負いに感じていたところへ、滑川さんのプロファイリングや、大山さんから聞いた新事実などが、頭の中をグルグルと駆け巡っていた。

もしや、と思っていた最悪のシナリオが、徐々に終幕に向かっているような気がしてきた。

抗いてもムダだ、と誰かに笑われているようだった。

どうしようもない、不安と怒り。

胸の奥がモヤモヤした。

こめかみがキンキンしてきた。

いくら考えても、もう答えは出ているのかもしれなかったが、それでもまだ、母と沢木との間に何かがあったというのを否定したかった。

家に着いたのは、日付が変わる頃だった。

みんな寝静まっているだろうと、そっと玄関を開け中に入ると、居間の電気が付いており、みると父が酒を飲んだまま疲れてしまったのだろう、テーブルに突っ伏して寝ていた。

この状態だと、母は最近の通り、父に惣菜だけ渡して寝てしまったのだろう。

父は当然、こんなことを快く思っている訳がなく、かといって怒鳴ったりすることをしないのだが、酒の量が増していることが、それをよく表していた。

ビール一本、酒一合を適正酒量としていた父は、最近明らかに飲みすぎていた。
テーブルの上は、飲み残しの酒やら惣菜の入れ物らしき空容器が散乱していた。

また、惣菜・・・。

部屋を見渡すと、色々なものが散らかし放題で、何だか埃っぽいような気がした。最近掃除をしていないのは明らかだった。どんなに忙しい時だって掃除を欠かさなかった母が・・・。

そう思っていたら、また滑川さんの言葉を思い出した。

お母さん業・・・。

私の中で、母は母でありそれ以上でもそれ以下でもなかった。
自分の親のことを冷静に一人間として見ることができる子が、果たしてどれくらいいるのだろうか。
父と母が性行為をした結果、生を受けたことは誰しもが理屈として判っているが、それすらリアルに想像など、普通しないだろう。

押し入れから薄手のタオルケットを出し、父にかけようとした時に、ふと父の右手の指を見た。
この指で母のあそこをまさぐったことがあるのかと思うと、急に特別なものに思えてきた。

それを、今や沢木が・・・。

ぶるる、と首を振り愚かな想像を打ち消した。

頭を冷やすべく、風呂場へ向かった。

狭いスペースの脱衣所には洗濯機が置いてあり、いつものように脱いだ服を入れようとしたら、母のものが入っていた。

白いブラウスにジーパン。脇にある洗濯かごには薄いビンクのカーディガンが、どちらも無造作に、グチャっという感じに詰め込まれていた。

普段なら気にも止めないことなのだろうが、そのブラウスが何かを覆い隠しているようにみえた。

思うが、体はもう動いており、中から白い下着を取り出していた。

これまで、手伝いで洗濯物をたたむことはあったが、変な感情を抱いたことはただの一度もなかった。

しかしこの時は明らかに変な感情を抱いていた。

ブラジャーもパンティも全体的に湿っており、女性特有の匂いがむっと鼻孔をくすぐった。

が、手に持った瞬間、それは判った。

母の白い少しだけ飾り気のあるパンティが、汗ではない別のもので濡れていた。
臭いにも覚えのあるそれは・・・、大量の精液だった。

・・・あああああああ。

頭の中で、何かが弾ける音がしたような気がした。

汚ならしいそれを洗濯機に投げ入れ、洗面台で手を洗った。念入りに怒りをぶちまけるかの如く洗った。

訳がわからないが、これ以上ここにいてはいけないような気がして、さっきまで着ていた服をまた着て脱衣所を出た。

気づいたら両親の寝室のドアを開け、中に入っていた。

真っ暗な部屋、ベッドには母がうつ伏せで寝ていた。

右手には携帯が握り締められていた。

寝る直前までメールをしていたのだろうか。

沢木と直通の専用携帯。

こんなもの・・・。

この光景が余計に腹立たしさを増長させた。

偶然にもこの時、マナーモードの携帯がバイブレーションの音を鳴らし光った。

あのくそ野郎からのメール・・・。

気のせいか、母の寝顔が微笑んだかのように見えた。

くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ! くそ!

私は玄関を出て、小さな車庫に停めてあった自転車に乗ると、そのまま沢木のマンションへ全力で漕ぎだした。

深夜、車など殆んど通っていない道路を必至で突っ走った。

頬には先程から温かい水状のものが流れていた。

・・・涙。

私は泣いていた。

そして、本気で沢木をぶん殴ろうと思っていた。

沢木のマンションへ着き、自転車を乱暴に駐輪スペースへ押し込むと、そのまま正面玄関へ駆け出した。

エレベーターの階数表示は五階を指しており、降りてくるまで待っている余裕などなかったので、非常口から出て外階段で五階まで駆け上った。

沢木の部屋に着き、呼び鈴を連打した。

程無くして、ドアがガチャリと開き、沢木が出てきた。

私を見ると一瞬驚いた顔をしたが、

「よう、どうしたんだ。こんな時間に」

風呂上がりっぽい髪に少し火照った顔をした沢木が、笑顔でそうほざいた。

「うがぁ! 」

私は沢木に突っ掛かった。

一緒に玄関へ入るような形になり、そのまま廊下の半分くらいまで彼を押していった。

「ァ゛ぁぁああ」

叫びながら私は沢木に殴りがかった。顔面をジャストミートしたかと思ったが、突然沢木の姿が目の前から消えた。次の瞬間、私の体は宙に浮きそのまま固い床に背中から落ちた。ものすごい衝撃が体中を走り、息が出来ない時間が数秒間続いた。うっすらと目を開け、沢木を見上げた。

何が起こったのか全く判らなかった。

「あ、悪い。つい体が反応して・・・。おーい、大丈夫か? 」

武道でもやっているのか、どうやら沢木にパンチをかわされ足払いか何かをくらったようだった。

沢木は心配そうに私に近づき手を差し伸べてきた。

私はその手を払いのけ叫んだ。

「う゛ぁああ! 」

逆にかけた足払いもかわされ、叫び声だけが廊下に響いた。

口元に指を一本立てながら沢木が小声で、

「しー、なんなんだよ、お前は。いきなりどうしたんだよ」と、言った。

「お、おま、お前・・・、うちの・・・、俺の、か、母ちゃんと・・・、ヒクッ、ヒック・・・」

痛いやら悔しいやら恥ずかしいやら色んな感情が入り交じって、何だか判らないが泣くことを止められなかった。

「泣いてるの? お前」

沢木が心配そうにこちらを見た。私は涙としゃっくりが止まらず答えられなかったので、ずっと沢木を睨んでいた。

「まあ、とにかく入れよ。近所迷惑だから静かにな」と、私を起こし部屋へ入っていった。

「靴くらい、脱いで来いよな」

ヒクヒク言いながらも、私はゆっくりと起き上がり、靴を脱ぎ、玄関に投げ、沢木に続いた。

改めて沢木のマンションの間取りについて。

玄関を入ると長い廊下があり向かって右側に洗面所付きのバスルーム、隣はトイレ、左側には手前が部屋になっており、その奥はクローゼットになっていた。

一番奥の部屋は、リビングとダイニングキッチンが一体となった、かなり広めの作りになっていた。

何度か遊びに来たことがある部屋だが、いつもより綺麗に整頓されていた。

やはり母が掃除していったのだろうか。

大型のテレビにオーディオ類、独り暮らしにしては大きなテーブル、それに合わせたクッション、色調が統一された家具、それらが綺麗に整頓されており、自分の部屋と比べると、まるで生活感がない、洒落た感じに思えた。

存在感のあるソファーベッドに敷かれている布団の様子からすると、これから寝ようと思っていたのだろう。

このソファーベッドがあっても、部屋はさほど狭く感じなかった。

沢木が冷蔵庫の扉を開けながら、「なに飲む? ビールでいいか」と聞いてきた。

私はムカッとして、「そ、そんな、も、もんいるか! 」と、怒鳴った。嗚咽が多少和らいだので、頼りないが言葉が出てくれた。

沢木は、ほら、と外国銘柄の缶ビールを投げて寄越した。狙ったのか、私の側にあるクッションに、ポスッとおさまった。

私はそれを一瞥し、
「お前、・・・母さんに何をした! 何もしていないなんていわせない!! 」と叫んだ。

沢木はブルトップを、プシュッと開け、缶ビールをグビリと飲んでから

「は? 何言ってんだよ」

と落ち着いた口調で言った。

この場に及んで下手な言い訳の一つでも言うのか、と思っていたら、沢木は極々自然に、こう答えた。

「やったけど? 」

物凄い勢いで言い訳してくるのかと思いきや、あまりに自然に言われたので、聞き逃しそうになった。

「・・・や、やった? 」

言葉の意味が判りカッとなって、
「お、お前・・・、あの時、俺に謝って・・・、だから、おれはてっきり、もう、そんなことは・・・」と、言葉にならない言葉を発していた。

沢木が退院した日、この場所で沢木が私に謝ってきたことを言いたかったのだが、上手く言えなかった。

「? 」

キョトンとした顔で私を見つめていた沢木が口を開いた。

「謝ったのは、お前がせっかく家に泊まりにきてもいいって言ってくれた日に、お前んとこのおばさんを堕とせなくてごめんな、て意味だろうが」

「え? 」

「あの日お前は、俺とおばさんがやってもいいと思ったから、俺を泊めてくれたんだろ? 」

こいつ、なにいってんだ?

「・・・そんな訳ないだろ! 」

「そうなの? でも、あの時そんな話の流れだったぜ・・・」

「な、ば、バカかテメーは!! お、お前らが『うちに遊びにきたい』とか言ってきて、それを断ったら『マザコンだ』とかどうとか言ったから、仕方なく『いい』っつったんだ。泊まりに来いなんて一言もいってない。浮かれて酒を買い込んだり、お泊まりセットとか持ってきたりして、勝手に泊まる方向へ持っていったんだろうが! 」

「え、やっぱお前マザコンなのか? 」
グビリとビールを飲みながら沢木が言った。

「だから、何でそうなるんだ! 俺はマザコンじゃねーし、お前らを泊めたのだってうちの母ちゃんとやってもいいという許可を出した訳でもねえよ! どこの世界に自分の母親と同級生とのお膳立てをしてやる息子がいるんだよ!! 」

「ここにいたと思っていたよ。ははは」

「ふざけんじゃねー! 」

へらへらとしている沢木に殺意すら覚えた。

「がなるなよ。まあいいよ。お前が嫌なら止めるよ」

「? 」

沢木は真顔で言った。

「俺はさ、本当にお前がおばさんとの関係を了承してくれているものだと思っていたんだ。冗談じゃなく。だから、本気でおばさんにアタックした。そしたら有難いことに上手くいったよ。あ、当たり前だけど、脅した

わけでも騙した訳でも、ましてや無理やりした訳でもないからな。自然に普通に、そう、まるで運命づけられているかのように、なるべくしてなったんだと思う。・・・とと、本題がずれてきたな、いや、そういう関係なんだけど、友達がそれを嫌だと思っているなら話しは別だ。明日・・・というか、もう今日だけど、おばさんが来たら言うよ。『息子が嫌がっているから、もう会わないようにしよう』ってな。それでいいだろ? こう言っちゃ元も子もないが、お前だって悪いんだぜ。誤解させるようなことをしたんだからな」

「・・・俺が悪いって言うのか? 」

「お前だけとは言っていない。俺も悪いし、おばさんだって悪いよな。みんなだよ、みんな」

「お前は、その友達の母親と関係を持つことに、罪悪感はないのか? 」

「いや、あるよ。でも好きになってしまったら仕方ないだろう」

「夫や息子がある人を好きになっても関係を持つことは倫理的にどうなんだ」

「倫理的に? マズイと思うね。でも、だからと言って自分の気持ちを抑える理由にはならない。禁断とはいえ、恋する気持ちは純粋で尊いものだ」

沢木の論理が独特過ぎて、ため息が出た。

「・・・やっぱりお前はサイコパスだな 」

「なんだ、そりゃ」

私は滑川さんとの一部始終を話した。

「ははは。あいつらしいな。でもまさか、お前はあいつの言うことを信じているんじゃないだろうな。俺は人格障害じゃないぜ。そんなこと言っているあいつの人格こそ疑うね。分析好きなんだよな、昔から。分析をす

るってことは定義づけるということ。つまり、自分の杓子定規に合わせて他人を型にはめる、いうならばパターン化するってことだ。自信がないんだろうな、人と接するときに、その人のパターンを見いだせないと。十

人十色っていうだろ、パターンなんてものはないんだよ」

「お前はどうなんだよ。分析しないのか。しないでどうやって母さんの心を掴んで堕としたんだ」

「堕としたなんて、言葉が悪いな。誠心誠意、それに尽きるよ。さすれば心は通じあえるものだ」

何を言っても無駄に思えた。沢木と話しているうちに、自分の方がおかしなことを言っているようにすら錯覚してきた。頭の中がごちゃごちゃしてきて何も考えられなくなってきた。

「・・・お前が判んないよ。何? 友達の母親と関係を持つことはいいのに、それを友達が嫌がっているなら止めるってのか? 何なんだよ、その理屈は」

「当たり前だろ。俺にとって友の存在は重要だ。ましてや、お前は俺にとって親友だと思っている。お前は違うのか? 」

「し、親友って・・・。俺の母親に手を出しといて、よくそんなことが言えるな。ふざけてんのか」

「ふざけてる・・・? 」

突然、沢木が大きな声を出した。

「お前も俺のことを親友って思っていてくれてると思うからこそ、お前が了承してくれたんだと思ったんだよ! 」

「なにキレてんだよ! 」

「なんで判ってくれねんだよ! 」

「判んないよ。親友なんて言われたって、お前と滑川さんが付き合っていたのも、格闘技的なことをやっていたのも、母さんに渡した携帯も、全部知らなかったよ。こんなの親友関係っていえるのか」

「おい、どうしたんだよ。親友って情報量じゃないぜ。相手をどう思っているか、そして信じているかじゃないのか」

「俺はお前を信じていない・・・。なあ、今までの付き合いからしたって、親友なんておかしくないか。そんな間柄じゃないぜ。単なる学部の同級生程度だろうが」

「いいや、信じているよ。俺には判る」沢木は真っ直ぐな目で私を見つめた。

「あのなあ・・・」私が反論しようとしたのを、それより大きな声で被せてきた。

「とにかく!・・・、もう何時間かすると、おばさんが来るよ。その時に言う。もう終わりにしようって。そして・・・ごめん。勘違いとはいえ、本当にお前がゴーサインを出していたと思っていたからこそ、おばさん

と関係を持ってしまったんだ。それは本当に謝る。・・・誤解なんだよ」

激しかった口調がだんだん弱々しくなっていった沢木は、反省や後悔の念が見え隠れするほどうつむき加減で消沈していった。拳をぎゅっと握り、唇を噛み、天を仰いだその目には涙すら浮かべていた。

不思議なことに、このとき私は沢木の言うことに嘘はないのだと思った。思い返してみれば、確かに自分が発した言葉の真意が十分に伝わらなかったのが事の発端で、沢木は誤解したまま行動した結果、偶然にも母と関

係するに至っただけで、責任は自分にもある。

・・・私の勘違い?

何だか言いくるめられたようにも思えたが、沢木が素直に謝ったこと、そしてすぐに母との関係を絶つと宣言したことが、私を妙に納得させた。

「本当に、母さんに言うんだな。そして終わりにするんだよな」

「ああ、約束する」

私は急に疲れてしまって、力が抜けきってしまっていた。

沢木は、仲直りのつもりか握手を求めてきたが、私はそれに応じず、ただぼんやり沢木を見つめたまま突っ立っていた。

すると、彼はだらりとした私の両手を、実に凛々しい顔で握ってきた。

その手は逞しくて力強くて、何だかとっても堂々としていた。

朝早い時間に沢木のマンションを後にした。

母が7時半過ぎに朝食を作りに来るから、それまでにこのマンションを出ておきたかった。鉢合わせは避けたかった。どっちが家族だか判ったもんじゃない。

この日、母は一体どんな気持ちで、沢木の所へ行こうとしていたのだろうか。私が沢木に会っていたなんて、つゆとも思っていないだろうに。この事を知ったらショックを受けるだろうか、それとも悲しむだろうか。ど

ちらにしても、正常ではいられないだろう。こんな状況でも母の悲しむ姿は見たくなかった。

沢木は母に、私がここへ来たこと、二人の関係を全て知っていること(気づいていること)を伝え、今までの関係に終止符を打とうと提案すると言っていた。そんなことが出来るのだろうか。

母の気持ちになって考えてみようと思ったが、どうしてもできなかった。私は母のことが、全く判らなくなってしまっていた。

気になるのは、帰り際に言われた一言。

母が全てを理解してくれて、そのまま何もなければ、「おばさんは朝の早い時間に家に帰るだろう。しかし・・・」沢木は、嫌な笑顔をしながらいった。

つまり、最後の行為があれば、遅い時間になるということ。

「それくらいは仕方がないよな。いや、もちろんそんなことはない前提だけどね・・・」

まるで自分にはその気はないのだが、お前の母ちゃん、ねだってくるから、と沢木に言われているような気がしてムカついたのだが、実際のところは判らなかった。あの母が、沢木くーん、と猫なで声を出しながら首も

とに抱き付き、キスをせがみ、ったくしょうがねぇな、と沢木が面倒くさそうにそれに応じる、みたいな想像をしたがすぐに脳から消し去った。さっきから胸の奥に何かが引っ掛かったようぬな気がしてならなかった。

自転車を押しながらの帰り道、何度か物陰に隠れて見ていこうかと思ったが、やめた。

とてもじゃないが、怖くて見ていられなかった。

沢木は、「別の部屋で待機して、行為が始まりそうになったら出てきて止めてもいいんだぜ」と言っていたが、到底無理な話だった。私はそんなに強い心臓を持ち合わせてはいなかった。

そうかといって、父も出かけて誰もいないであろう家に戻り、一人で母が帰って来るのを待っていることなんか、できない。

色々考えた末、駅前の二十四時間漫画喫茶に行くことにした。

お世辞にも綺麗とは言えない雑居ビルの二階にあがり受付をすませ、コーヒーを持って個室へ入った。

別に読みたい本がある訳でもなく、ネットなんかをしているうちに、昨日寝ていなかったので疲れていたのだろう、いつのまにか寝てしまっていた。気がつけばお昼を大きく回っていた。こんな時にも腹は減るもので、

安っぽいカレーをなう

それから店を出て、本屋へ寄ったり、レンタル屋へよったり、なんだかんだで五時すぎに家に着いた。

玄関を開けるのが怖かった。

ひよっとして、母が居なかったらどうしよう。本気で沢木のことを好きになっていて、別れるくらいなら、このまま別の土地へ移り一緒に暮らしましょう、何てことになっていたらどうしよう、と頭の中は、どうしよう

で埋めつくされていた。

恐る恐る玄関を開けると、母の靴が揃えてあった。

台所へ行くと母は帰ってきており、一生懸命夕食を作っていた。

母が料理を作る姿をミルのは久しぶりだと思ったが、よく考えたら一週間かそこらぶりだった。

何だかものすごく長い間のような気がしていた。

「おかえり」と元気のいい声で母が言った。汗が額に光っていて、それが母の顔を余計にキラキラと輝かせていた。一瞬、綺麗だと素直に思ったのだが、すぐに、この顔がさっきまで沢木の前でどんな表情をしていたの

かと思うと複雑な心境になったので、無視して自分の部屋へ行った。

いつもなら「こら、帰ってきたらなんて言うんだっけ、と耳の一つもつねられるのだが、それもなかった。やはり、私が沢木との関係を気づいたことについて、何かしらの動揺があったのだろう。

台所からは、再び料理を作る音がした。

定時に父が帰ってきた。風呂、ビール、食卓を囲む家族の姿。久しぶりの光景だった。

「今日でお勤めが終わりました。ご迷惑をお掛けしすいませんでした」仰々しく母が言った。

「終わったのか。そうか」と嬉しそうな父。彼の様態はもういいのか、と沢木のことについてしばしの質問があった後、では久しぶりに家族そろって、いただきます、となった。

今回母はかなり気合いが入った夕食を作った。父には好物の鯵のなめろう、湯豆腐に紅葉おろしと特性ポン酢、季節の野菜のてんぷらなど、お酒のつまみとしてはこれ以上ないという品々。

私には、オムライス。悲しいが、未だにこれが大好物なのだ。

「すごいごちそうだな」と父がはしゃいでいるように見えた。

「今まで本当にすいませんでした、さあお父さん」とお酌をする母。

二人はとてもいい夫婦に見えた。

あんなことがあって、母はよく父とそんないい夫婦を演じていられるな・・・。

私はあまり母のことを見ることができなかった。

いや、そうではない。母は反省したんだ。何かの過ちで・・・、そう、それこそ魔が差したのだ。

だから、改めて父に尽くすということにしたのだ。と都合のいい解釈やらの問答が頭の中を交錯した。

「美味しくないかい、さっきから黙っているけど」
こちらの様子をうかがうように、母が話しかけてきた。

「……ん、旨いよ」

素っ気なく答えた。

「そ」

母も素っ気なく返した。

この食卓を囲んでいる家族は、果てして本物なのか、張りぼての家族愛なのか、わからなかった。

夕食後、自室にて机に向かい暇を潰すともなくノートPCでネットをしていたら、ドアをノックする音がした。

「・・・なに」

「・・・ねえ、ちょっといい? 」

いつもとは違う、弱々しい母の声がした。

「・・・いいけど」

普段は豪快に部屋に入って来るのだが、こちらを窺いながら入ってきた。

お互い相手の顔を見る訳でもなく、俯き加減で出方を待っているみたいだった。

沈黙を打ち破ったのは、母だった。

「あ、あのさ・・・」

「・・・」

「そ、その・・・」言い淀む母。

「沢木のこと?」

「う・・・、うん」

「なに?」

「その、こ、沢木君から・・・聞いて・・・さ」

「別に公平君でいいんじゃない」

「え?」

「いいよ、もう。聞きたくない」

母はいつもと違い、怒られているように下を向いていた。そんな姿を見ているのも嫌だった。

「付き合ってたんだろ。旦那と息子がいるのに」

「ち、ちがう。そ、その・・・」

一生懸命言い訳をしている母を、少し憐れにも思った。こんな弱っちい母なんて見たことがなかった。

「あ、あのさ、誤解しているならいけないと思って、さ・・・」

「誤解?」

「あ、あの、付き合っていないよ。あたしたち」

「・・・」

「そ、それに、もう沢木君良くなったからお世話に行かなくていいから、だから、明日からちゃんと元の生活に戻るから、さ」

「知っているよ。そんなに悪くなかったんだろ、あいつ」

信じたくはなかったが、沢木は母との肉体関係を認めていた。本当に看護が必要な程度の怪我をしていたのなら
そのような関係なんてありえないだろうし、何より医者の最初の診断だって怪しいものだ。あんなもの金さえ払えばどうとでもなる。

「そんなことないよ。どう聞いてきたかしらないけどさ、あの子本当に右手やっちゃってたからご飯食べさしたりしてさ・・・」

「いいよ、もうわかったから」

聞きたくなかった。

想像したくなかった。

沢木が甘えた感じで、母の愛情がこもった手料理を食べさせてもらっている姿を思い浮かべてしまったが、すぐに打ち消した。こんな光景を思い浮かべてしまう自分の想像力に本気でムカついた。

しかし、そんなことを考えていると母に悟られなくなかったから、出来る限り優しく答えた。言葉としては突き放しているようだが、私としては母を気遣う精一杯のことだった。

この場に及んで、私は何を取り繕うとしていたのだろうか。今思い返してみても、判らない。・・・いや、判らない振りをしていただけかもしれなかった。

「そ・・・、そう、分かってくれて嬉しいよ」

母の表情に少しだけだが安堵感が見えた。

「話し、それだけ? 」

「う、うん。それだけ・・・。えっと・・・、ゴメンね、邪魔したね」

ギクシャクしたまま会話は終わった。
母が背を向けドアへ向かった。

私はどうしても母の口から確認したかったことがあった。

沢木の言っていたあのこと・・・。

普段の母からは想像が出来ない、あの情景が脳裏をよぎっていた。

あれは本当なのか。

確かに状況証拠的なものはあるが、決定的ではなかった。

沢木が言っただけに過ぎないかもしれなかった。

心臓の動悸が激しくなってきた。

聞いちゃいけないのかもしれなかったが、一縷の望みにかけたかった。

母は・・・、私の母であって欲しかった。

私は母が部屋から出ようとしたときに、
「母さん」
と、母を呼び止めた。

「・・・なんだい? 」

「・・・あ、その」

モヤモヤしたままこの場を終えては後悔するような気がした。

が、言葉が上手く出てこなかった。

くそっ!

意を決して、思いを母に告げた。

「一度しか聞かない。そしてすぐに忘れる。約束する。だからこれだけは聞かせて。そして本当のことを言って」

「・・・なに? 」

母が緊張したのがわかった。

「沢木と・・・、したの?」

聞かずにはいられなかった。そして、どう聞いていいか判らなかったのが、まさかのド直球になってしまった。

言ってから、しまった、と思ったが時既に遅かった。

一瞬にして静寂した空気に包まれた。

すべての音が失われた。

無音。

無音。

時が止まったのかと思ったくらいだった。

母はしばらく考えていた。どう言おうか悩んでいたのだろう、微妙に表情が変わっていった。その心境の変化が表情から窺えた。

言おうか言うまいか相当葛藤していたのだろうが、母の中で決心がついたようだ。

暫くの沈黙のあと、母は重い口を開いた。

「・・・うん」

顔を真っ赤にして答えた母は、小さくて華奢で可愛くて綺麗で愛おしくて愛らしくて素敵で優しくて大好きで、でもすごくすごく遠くまで行ってしまって、二度と以前と同じように見ることができなくなって。

それがすごく悲しくて、悔しくて、居たたまれなくて、どうしようもなくて、泣きたくなって、涙が出そうになって。

あ、涙が・・・、って本当に泣いてしまっていた。

ああああああああああ。

あああああ、嫌だ。

嫌だ、嫌だ。

こんな年になって泣きたくなかった。それを母に見られたくなかった。でも、止まらなかった。ヒックヒックとしゃっくりまで出てくる始末。

「で、でも、でも・・・」顔をくしゃくしゃにしながら、私は母に問いかけようとした。

「・・・」母はじっと私を見ていて、私の言葉を待った。

「・・・終わっ、たんだ、・・よね」聞こえたかどうかギリギリの声量だった。

母が近寄り、私をぎゅっと抱き締めた。

「終わったの、終わったんだよ、もう終わったの」

「終わったんだよね、信じていいんだよね。終わったんだよね」

「信じて、終わったの。もう終わったの。終わったんだよ」母も泣いていた。

私と母は、抱き合いながらわんわん泣いた。

目から涙、鼻から鼻水、口からは涎なのかなんなのかよく判らなかったが、とにかく顔中ぐちゃぐちゃにしながら、お互い強く抱き合った。

コンコンとノックの音がした。

父がドアのところに立っていて、

「お前たち、なんで泣いているんだ?」
と私達を不思議そうに見ていた。

ハッと、私たちは今おかれている状況を理解した。

顔を見合せ、母と私は笑った。

よく見ると、泣き顔が面白かったので、今度は声を出して笑った。

父もつられて笑っていた。

みんないい年して馬鹿みたいだけど、この時の私達家族はこの状況を喜んでいたと思う。

日常。

当たり前の日々。

今までのイレギュラー的な日々が、あくまでイレギュラーだったと思いたかった。

失ったのではなく、迷っただけ。

口には出さないが、みんなそう思ったからこそ、笑っていたのだと思う。

それから、何日か経っての休日。安眠
をむさぼっていたら母にたたき起こされた。

「・・・ぉはょぅ」
寝ぼけ眼を擦りながら、起き上がろうとした私に、
「馬鹿! 早くない! 天気がいいから布団を干すよ、ほら起きた起きた」
と母が言った。

蹴りだされるように布団からだされ、階下へ。

「あれ、朝飯は?」

「何時だと思っているんだい。もうすぐお昼だよ」

テーブルの上は、見事に何もなく整頓されていた。

テーブルばかりではなく、家中が以前のように綺麗に整えられていて、ベランダには彩り鮮やかな花が並んでいた。既に朝の水やりは終わったらしく、清々しい様相が、起き抜けの私には眩しく感じられた。

「そうだ。せっかく天気もいいし、みんなで公園にでも行こうよ。お弁当持ってさ」

「えー」

「えーじゃない。ほら、決まり。お父さんにそう言ってきて。そうときまればお弁当作らなきゃ」

突然の母の提案によって、みんなで近くの公園へ行くことになった。

近所にある公園は、この辺りではかなり大きなもので、子供用の遊具があり、芝生、ベンチ、池、噴水、遊歩道、と家族が休日を過ごすのにはもってこいのところだった。

既に何組かは敷物を敷いていて、そこへお弁当を広げたり寝そべっていたり、自由気ままに時を過ごしていた。

まあ、みんな同じようなことを考えるものだ。

「さあ、食べようかね」

お弁当は重箱で三段。中身は見た目も勿論、味も素晴らしいものだった。

行き交う人も振り返る、なんてオーバーかもしれないが、ちょっとないくらい豪勢なお弁当だった。

散歩中の老夫婦が近寄ってきて、
「美味しそうなお弁当だね。これみんなお姉さんが作られたのかい」
と聞いてきたので母が、
「よろしかったらご相伴くださいな、ほれ、あんたもう少しそっちへいきな。お父さんのとこ、ほら」
と私を追いやり、遠慮する老夫婦を座らせた。

父も旦那さんの方に、ま、おひとついかがですか、とお酒を差し出していた。

普段は寡黙だが人付き合いのいい父、時々心配をかけるけど、何より明るい太陽のような母、私は取り分け何もないけど、とにかく、笑顔の絶えない家族が戻ってきた。

色々あったけど、いつまでもこんな日が続くのかな、と母がさっき知り合ったばかりのお婆さんと、まるで昔からの知り合いのように仲良く話している姿を見ながら思った。

・・・と思ったのだが、そんな生活は続かず、本当の悲劇は一ヶ月後に訪れた。

あれから一カ月が過ぎた。

沢木とは、その後も友達として普通に付き合っている。人間嫌なことは忘却する性質を持っているのだろうか、それとも麻痺してしまうのだろうか、自分の家族にあれだけの衝撃的なことが起こったはずなのに、『本当にあったのか? 』と脳が疑っているみたいで、自分の中で現実味がないまま日々過ぎていった。

学校へ行けば今まで通りみんなと付き合って、沢木とはなんだったらより仲が深まったような気がした。

そんな折、沢木の住んでいたマンションが改装工事に入った。別に住めないことはないのだが、工事の音がうるさいのと、なんだか埃っぽいから嫌だと、沢木は友達や女の家に泊まり歩いていた。この日は今付き合っている女の所へ泊る予定だったのだが、急に向こうの両親が来ることになったらしく、行くあてがない、と学食でブツブツ言っていた。

「なあ、お前んとこ泊っていいか」

学食のランチサービスの珈琲を飲みながら、沢木が私に聞いてきた。

「・・・いいけど、お前はいいのか」

あんなことがあったから、私より沢木の方が気にしているんじゃないかと思いそういったのだが、
「マジで。悪いな、じゃあなんか買っていこうかな」
と嬉しそうな沢木は、私の牽制球に全く気付くことなく、残った珈琲を一気に飲み干した。

「お前んとこのおばさん、料理うまいからな。楽しみだ」

そう言って無邪気に笑う沢木に問いたかった、『判っているのか? お前が以前したことを』と。ただそんなこと聞いたって煙に巻かれるだけなので、必要最低限の釘だけさしておくことにした。

「オヤジ、・・・今日いるぜ」

「はは、判ってるよ。なんだよ、まだ気にしてんのかよ。何もないよ、あれから会ってもいないぜ」

「いや、別にそういう意味じゃないけど」

じゃあどういう意味なのか分からないが、あまりに能天気な沢木を見てると言わずにはいられなかった。

久しぶりに沢木が我が家へ来ることになった。公式では二度目。公式とは、私が把握しているということ。考えてみたら、あの時沢木が来たことによって我が家の歯車は大幅に狂わされたのだった。

あの時もそうだったが、またしてもやってしまった。沢木の買い物に付き合わされてついぞ忘れていた、家に連絡して許可をとることを。

玄関を開け、たまたまそこにいた母の驚く顔をみて思い出したのだった。

母は沢木をみるや、驚き、怯え、喜び、興奮、恐怖、安堵、と、どれにも当てはめらないような、それともそれらすべてなのか判らない複雑な表情をしたあと、平静を装いながら言った。

「また来たのかい、あんた」

「一泊だけお世話になりまーす」

明るく元気よく爽やかに、友達のお母さんにする挨拶としては百点だった。ただそれはこの場合には当てはまらない。母は私を見ることもなく、沢木のヘラヘラした顔をじっと見つめていた。

「いやあ、突然すみません。実は・・・」と、沢木は今回我が家へ泊まりにきた経緯を説明し出した。

母はため息をつくと呆れた顔で、
「なんて我儘な理由で泊まり歩いてんだい。人様に迷惑かけるんじゃないよ」 と沢木を叱った。

「はーい」

ニコニコしながら申し訳なさそうに頭をかいてみせる姿は、友達のお母さんに言われたら確かにこうなるお手本のようなものだった。だが、この二人は違う。この二人には過去がある。

第三者がこの光景をみて、とても以前に肉体関係があった二人だなんて、誰も思わないだろう。私だって思えない。何故ならそれは、現場を見たわけじゃないから。 あくまで二人から聞かされた話しに過ぎず、今の二人をみて想像力が豊かな私でさえ、それは難しいことだった。

ひょっとしたら、そんな事実はなく、口裏を合わせた二人に騙されているんじゃないか・・・と思ったこともあった。

何をするでもなく、沢木と部屋でグダグダ過ごす。学生時代は無駄な時間を貪っていたことの非常に多かったこと。

そのうち父が帰宅し、風呂、ビールの日課を経て夕食の時間になり、母に呼ばれ食卓へついた。

父が開口一番、
「いや、君が沢木君か。先だってはうちの家内が大変失礼しました。お見舞いにも伺わずに申し訳なかったね」
と一連のことを詫びた。

沢木が申し訳なさそうな顔で、
「いえいえ、私が全部悪いんですよ。それなのに何日か看病に着て頂いて、こちらこそありがとうございました。是非水に流して頂きたいのですが、あいにく水がないもので、代わりにこんなもので流してはもらえないでしょうか」と大吟醸の酒を袋から取り出し、父に差し出した。

「いやいや、こんなことをされては困るよ」

慌てて畏まる父を制し、
「いいんですよ、実は実家の両親が池田さんのお宅へ伺うのならこれを、と持たされたものでして・・・」
と宣う沢木をみて、さっき私と一緒に近所の酒屋で買った物を、よくもまあこんな風に言えるものだ、と改めて感心した。酒好きの父も喜んでいることだし、本当のことを言って水を差すのは止めることにした。

母はこのやり取りを見てみぬふりをしていたのか、口を挟むことはなく、黙々と料理を食卓へ並べていた。

この日父は、かなりの酒を飲んだ。

沢木からもらった大吟醸などすぐに空にしてしまい、家にあった日本酒やワイン、ウィスキーなど手当たり次第やっつけて、早々にダウンしてしまった。

別に父が一人で全部飲んだ訳じゃなく、私や沢木も一緒に飲んでいたのだが、最飲酒量は断トツで父だった。

元々酒が好きな父だが、まあまあどうぞどうぞ、と調子よく御酌をする沢木に乗せられ、普段は判で押したように一定の量しか摂取していなかった体がそれに対応しきれず、敢えなくギブアップする羽目になってしまった。

呂律の回らない舌で、「私は先に寝るけど、ゆっくりしていってよ」という意味あいのことをおそらく言ったであろう父は、フラフラしながら寝室へと消えていった。

私も沢木も結構飲んでいたのだが、まだ飲み足らなかったので、自室へ焼酎のボトル、氷、水、つまみなどを持ち込み、また酒盛りを続けることにした。

母は乾杯で一口飲んだきりだったが、父の前で沢木が語る、母の看護時の面白話的なことに突っ込んだりして、会話を盛り上げていた。

しかし、父の「何だか息があっていて、夫婦漫才みたいだな」という上機嫌な言葉にマイナス反応をしてしまい、それ以降は突っ込むこともなく、作り笑顔を浮かべながら沢木の好き勝手に話すことを聞いていた。

夜も更けた頃。

私は自分の限界以上に酒を飲んでいた。

何故この日はこんなに飲んだのか、今となっては判らないが、凄く楽しかったことは覚えている。

沢木ってこんなに面白い奴だったのかと、改めて友を知ったような新鮮な感覚が残っていた。

よく笑い、よく喋り、よく共感し。

親友とは、かくあるべし、みたいな気持ちになっていたそのとき、自分の不本意な発言が、招かなくてもいい出来事を招いてしまった。

口は災いの元・・・。

そんな言葉がどこからか聞こえてきそうだった。

「こうしていると、お前とうちの母ちゃんが何かあったなんて信じられないよな」

私は濃いめに作った焼酎の水割りを飲みながら、父と同様、呂律が怪しくなってきた口調で沢木へ言った。

「もういいじゃん。その話は。だってお前嫌なんだろ、おばさんとの情事を語られたくないんだろ?」

同じくらい飲んでいるはずだが、あまり酔っていない沢木がグラスの氷をカラカラ鳴らしながら言った。

「あ、本当にあったんだったら聞きたくないけどさ、でも結局のところは解らないじゃん。本当にあったのかさ。だって俺見てないもん。お前と母さんがやったとかやってないとか言ってるだけだからさ」

「飲みすぎだぜ」

「いやいや、マジでマジで。だって俺見てないもん」

ははは、と軽く笑ったあと、少し真面目な顔で
沢木が答えた。

「ま、こういっちゃなんだけど、俺は嘘はつかないぜ」

「あははは、そう! お前は嘘はつかない。そんなケチな男じゃない。でも、ふざけてさ、俺の母ちゃんと結託してさ、俺を、こう、騙す? みたいなさ、あははは、な、そうなんだろ? 」

グラスを空け、更に濃いめの一杯を作りながら私は笑っていた。相当酔っぱらっていた。そんな酔いを吹き飛ばす言葉が、沢木の口から発せられた。

「・・・じゃあ、見てみるか?」

沢木は実に自然にそう言った。

あまりの自然ぶりに、どこかネタ的な風にとらえてしまい、私はその話しに乗っかるようにはなしを続けた。

「なに、おー面白い、なんだそんなもんあるんだったら先に見せろよな」

私は可笑しくなり笑った。沢木は黙ってじっとこっちを見ていた

「なんだよ、ほら出せよ。DVDか携帯の動画か。お前ん家のPCの中に入っているなら今から一緒に行くぞ! あっはっは」

「生で見せてやるよ。ライブで」

既に空になったグラスを置くと、沢木はすっと立ち上がった。

「え」

「下に寝てんだろ。お前んとこのおばさん。今行ってやってくるから一緒に来いよ。見せてやるから」

沢木の言葉の真意がようやく判り、私は慌てて言った。

「は、何言ってんだ、お前」

「見たいんだろ」

「何、お前本気で言ってんの? 引っ込みがつかなくなって自棄になってんじゃないのか」

話の方向性が良からぬところへ向かっているのは、いくら酔っぱらっていても判った。

「嘘じゃないってことを証明してやるよ」

「ば、バカ。母さんはオヤジと寝てんだぞ。無理に決まってんだろ! 」

「大丈夫だよ。親父さん、あんだけ飲めば朝まで起きないよ」

「やめろよ。母さんが嫌がるだろうが」

「嫌がる? それはないわ。一度俺と関係を持った女で、断られたことはない」

「マジで言ってるのか・・・」

「ああ、大マジだ」

話が思わぬほうへ進んでいってしまった。私がけしかけたのだが、こんな展開になるなんて思っていなかった。ただ、ふざけて沢木を少しからかってやろうと思っていただけなのだが。

・・・いや、本当のことを言えば、見たかったのだと思う。沢木と母が男女の関係だったという事は、お互いの口から直接聞いていたが、本当はどうなっていたのかがすごく気になっていた。

そして、少なからず嫉妬もあったと思う。

自分は小学生にあがった頃から母とお風呂へ入ることもなくなった。母の裸の記憶がまるでないのだ。

母は豪傑な人だが、家族といえども人前で、例えばそれが風呂上がりだとしても、裸で家の中をウロウロすることはなかった。

だから母の生まれたままの姿を見ただけではなく、行為までもしてしまった沢木が羨ましく思っていた。

その事が、酔いに任せて、羨ましさから、あんな煽った発言をしてしまった原因なのだろう。

しかし、まさか沢木が今日この家で、しかも両親の寝室へ乗り込んで行為に至るなんて言い出すとは思わなかった。

沢木が提案した手順はこうだった。

まず私が両親の寝室へ行き、寝ていることを確認する。

そして、沢木のために用意した客用の布団一式が入っていた押入れスペースが空いているはずなので、そこに私が入ったら沢木にメールをし、来るのを待つ。

母に断られたり、父が起きたらどうしよう、という私の質問に、
「大丈夫。俺が何とかする。絶対に丸く収めることができるから」
と自信満々に答える沢木の言葉を信じ、その対策は行わないという、今考えるとかなり杜撰な手筈だった。

私は両親の寝室へといった。心臓はさっきから尋常じゃないくらい脈打っていた。手足は微妙な震えが止まらず、なんとなくふわふわした、気持ちの悪い感じだった。

そっとドアを開けると中は真っ暗で父の鼾が聞こえてきた。かなり酒を飲んだので、鼾がうるさかった。長年のことで気にならないのか、母はそんな騒音親父の隣で静かに熟睡していた。

部屋は八畳でベッドが二つ並びで部屋の真ん中にドンと置いてあった。入口側に母は寝ており、薄い掛け布団を胸元までかけていた。

私はそっと母へと近寄っていった。

母の寝顔・・・。

この母が、これから沢木と・・・。

あの日・・・、沢木が初めて家にきた日から、私は母を一人の女性として意識しだした。

自分の母は親であり、それ以上でもそれ以下でもない。

それなのにあいつは母を、まるで奴が付き合ってきた他の女と同じような感覚で近づいてきた。

お前の母ちゃん、いい女だな。

絶対やってやる。

責任は持つよ。

・・・やったけど。

母はそんなに魅力的なのだろうか。

容姿が端麗?

フェロモン?

単に抱きたいだけ・・・?

何がそこまで沢木の野郎につけこまれた要因なのか判らない。

だが、確かに幼い頃から色んな人に言われてきた。

『あなたのお母さんは綺麗だね』

小さい時は嬉しかった。

幼かった頃の私はそう言われると、胸を張って『うん! ボクのママ、キレイでしょ』と言っていた。
それを脇で聞いていた母は『そんなことないよ』って他の人の手前否定していたけど、決まって後で頭を撫でてくれた。

思春期になると、母のことを言われることが嫌だった。性についての知識が増えたことによって、ただでさえ母について触れられたくないのに、それが母の女性的な部分に触れられた日には、みんなが『頭の中でお前のお母さんに厭らしいことをしているんだ』って告白されているような気がした。

母さんが綺麗かどうかなんて、そんなこと俺に言ってどうなるんだ? 放っておいてくれ! と口に出せない言葉をいつも飲み込んでいた。

実際、私は脳内で同級生の、見たこともない裸を思い巡らし、夜な夜な自慰行為に耽っていた。

だから、みんなもそれと同じだろうと勝手に思っていた。

高校の終わり頃から大学生になってからは、社交辞令で言ってくれているんだな、と考えていた。

綺麗だ、なんていわれたって世の中には上には上がいる。長年、それも毎日見ている自分の母親をマジで綺麗だって思っている息子なんてそういないだろう。少なくとも私はそっち側の人間ではなかった。

それなのに・・・。

あの日・・・、私が母に沢木との情事が本当にあったのかどうか問いた日。

母がそれを認めた日。

あの何ともいえない母の表情が、私の記憶に刻み込まれた。

あんなに照れ臭そうにした顔など、見たことがなかった。

それが、凄く・・・、記憶に残り、何て言うか、ストレートに言うと、興奮してしまったのだ。

あの日以来、自慰行為の時に母を思い浮かべることが多くなった。いや、正確に言うと、フィニッシュの時に母のあの顔が出てきてしまうのだ。

罪悪感だったのは最初だけで、意識して母で行為をするようになり、それだけでは飽きたらず、遂には母の下着を勝手に持ち出すという最低なことまでしてしまっていた。

しかしこれもまた、例の滑川さんに言われた言葉が引っ掛かっていたからだった。

池田くんが言っているのは、お母さん業だよ。

ママさんの何を知っているの?

ママさんの好きな下着の色は?

下着の色・・・。

小さい頃から母の手伝いをしていたので、当然洗濯物なんかも畳んできた。・・・しかし、思い出せなかった。どんな下着だったっけ?

本当に最初は確認の意味で、両親の寝室にあるタンスを開け、母の下着を取り出した。

年の割にはというか、あまりにオバサン的なものは無く、かといって派手なセクシーランジェリーなんてものも無かった。

白系の一般的なものがほとんどで、時折、ベージュや水色、薄いピンクなどがあり、濃い色だと濃紺と山吹色を少し濃くしたものが一枚づつあったくらいだった。

枚数にして十数枚。

基本的にセットで買っているのか、ブラジャーも同数程度だ。

これだけみると、やっぱり好きな下着の色は白なんじゃないかと思った。

手伝いをしていたときとは違い、改めてみる下着に物凄く興奮をした。

手に取り、匂いを嗅いだり、広げて大きさや形状を確認したりして、こんな小さいのを付けているんだ、と母の日常を思いだし、これを履きながら料理を作ったり、私や父と会話をしたら、沢木と・・・、沢木とあの部屋で・・・、母が・・・。

沢木を思いだしたときもあり、そういう時は、母の下着を握り締め、壁に叩きつけたりもした。が、慌てて拾い、綺麗に畳んでそっとタンスに仕舞い、心の中で母に詫びた。

私が好んで持ち出したのは、白の上下セットでフロントに細やかな刺繍とリボンだけ黄色のもの。ブラにも同じリボンがついていて、母が着けるには少し若い感じがして、それがまたよかった。

装着したり、下着を性器に巻いて・・・、なんてことはせず、専ら傍らに置いて、母の下着姿を想像して自慰をしていた。

小さくて華奢な母のお尻を包んでいるパンティ・・・、そう思うだけで私のアレは固くなり、母のおそらくそれ程大きくない胸を支えているブラジャーだと思うだけで、射精感が込み上げてくるのだった。

精神状態がおかしくなっていっているのは、自分でも判っていた。

少しずつ、部屋の暗さにも慣れてきた。

部屋の脇には母の小さな鏡台が置いてあり、反対側に一間の押入れがあった。襖を開け二段収納の下段に、いつもはないスペースがぽっかり空いていた。私はそこへ入り襖を数センチ残したまま閉めると沢木にメールした。もし本当にここで行為が行われたとしたら、私の視界にはその全てが見えることになる。

ゴクリという自分の生唾を飲み込む音の大きさに驚くと同時に、我が母がこれから自分の友達と行為をするのを、まるで期待しているかのような心持ちでいるとは、なんという不謹慎な・・・という複雑な心境に、どっちが自分の本心なのか判らなくなっていた。

部屋へ入ってきた沢木は堂々としていた。ベッドをスルーすると窓の方へ行きカーテンを開けた。月明かりが入り、部屋は一気に明るくなった。隣は塀垣と木々に覆われているので見えることはないが、この月明かりで父が起きるのではないかと心配した。

沢木は寝ている母の脇に腰かけると、「おーい」呼びかけながら頬をペシペシ叩いた。

うーん、と母が寝返りをうち、違和感に気づいたのか、ガバッと起き上がり、
「な、あ、あんた、何しているの! 」と小声で沢木を睨んだ。

母は少し寝乱れた髪に、白いシンプルなパジャマを着ていた。月明かりに照らされた母は妙な色気があり、私の息は荒くなっていった。

沢木は少しも慌てることなく、「へへへ、来ちゃった」とおどけた。

「なにやってんのよ! 」と小声で怒りながら、母は周りをキョロキョロと見渡した。それに気づいた沢木が、「息子? 部屋で寝ているよ。旦那さんもごらんの通り寝ているし、この家で起きているのは俺とおばさんだけだよ。へへへ、いい機会だから・・・、久しぶりにやろうか? 」

母は父が寝ていることと私がこの場にいないことにホッとしたような表情をしたが、一変、キッと沢木を睨んだ。

「馬鹿なこと言ってんじゃないよ! ここに来たことは黙っていてあげるから、早く出ていきな」

小声だがその声には迫力があった。私は思わずビクリとしたが、沢木は臆すことなく、「別に俺は黙っていてもらわなくてもいいんだけどね。むしろみんなを起こして見てもらってもいいくらいだよ」と言った。

「な、何言ってるの? 」

「はははは、冗談冗談。ねえ、そんなの嫌でしょ、だからコッソリとやろうよ」

「馬鹿! 隣にお父さんが寝てるんだよ」

「寝てなきゃいいの? 」

「バ、違う! いいから早く出ていきな! 本気で怒るよ! 」

母の言葉を無視するかのように、沢木は母との距離を詰めていった。母は両手で胸のあたりを覆い隠すようにし、体を身じろぎながら父のいる方へ逃げようとしたが、沢木に右手を掴まれグイッと引っ張られた。沢木の力が強いのか母が軽いのか、まるで赤ん坊を抱き寄せるように、母は軽々と沢木の胸元へ引き寄せられた。沢木は母のあごに指をかけそのまま上を向かせた。一瞬、母が緊張したのが判った。

「ねえ、俺がこの家に泊まりにきたっていうのに、何もないと本気で思っていた訳じゃないだろ? 」

母は一生懸命沢木から逃れようとしていたが、沢木にがっちりと押さえられているために身動きを取ることも難しそうだった。

「あの一週間の出来事・・・覚えているよね。あんなに愛し合ったよね・・・。いっぱいキスもしたよね。そう、こんな風に・・・」

「むふー! んん、んぐっ」

沢木の唇が母のものと重なった。母は最初大きく目を見開き抵抗したが、それはすぐに沈静化していった。レイプされる恐怖から・・・ではなく、諦め・・・でもなかった。

「んんんっ」

聞いたことのない高さの声がした。

受け入れ。

母は沢木のキスに身を委ねていた。

時間にして一分ほどだったと思うが、すごく長く感じた。

母と沢木がキスをしている・・・。

私は興奮が止まらなかった。

ぷはっ、と息継ぎのように酸素を求めると、母は「終わり! もう終わりにしよう」と隣に寝ている父をチラリと見ながら言った。母の顔は紅潮しており手が微かに震えているようにも見えた。母は父に気づかれることを恐れていたのだろう。

「ふふふ、どうしたの? そんなに旦那さんが気になるの? 」

「あ、あのね・・・。当たり前でしょ。お父さんだけじゃないよ。・・・あんたがここにいたら、あの子が探しに来るかもしれないでしょ」

「あいつは俺たちの関係を知っているんだぜ。今更現場を見たって・・・」

「関係が『あった』ことでしょ。過去形なんだよ、過去形。今は何もないんだから・・・」

「関係があったことは話せても、現場は見られたくない・・・か? 」

「!」

母の表情が変わった。

「何で知ってるの。あの子が喋ったの? 」

「真っ赤な顔して『うん』なんて言っちゃって・・・、あははは、可愛いよね」

パシッと乾いた音がした。

母が沢木の頬を叩いた。

ふるふると全身を振るわせながら、母が言った。

「ふざけんじゃないよ! あ、あたしはね・・・、後悔してんだよ! 一時とはいえ、家族を顧みず、あ、あんたと、か、関係をもったことを! 」

沢木は叩かれた頬を触りながら、鋭い目で母を睨んだ。それはとても冷たい目だった。

「いっとき・・・? 一週間毎日朝から晩までセックスしっぱなしが『イットキ』・・・? はは、随分長い一時だね」

沢木は今叩いたばかりの母の手をサッと掴んだ。母は何かされると思ったのか顔が強ばり体は固まった。沢木はその母の手を優しく撫でながら「ごめんなさい。叩かれるようなことをしてしまって・・・。痛かったでしょ」といたわった。

「寂しかったんだよ。とても・・・。おばさんと過ごした日々が楽しすぎて・・・。わかっている。おばさんには家庭があって、それも僕の大親友のお母さんで・・・。すてきな旦那さんがいて・・・。家族が大切だというおばさんの気持ちはよく判っている。だけど、あの時も言ったけど、僕は本気でおばさんを愛しているんだ。この気持ちに嘘偽りはない。・・・あの日、彼が家に来て僕に『お母さんと別れてくれ』と言われた日・・・、僕はあなたが部屋に入るやすぐに伝えたよね、『息子さんが来たよ』って。笑顔で部屋に入ってきたあなたの表情が一気に曇ったのが判り、僕はすごく悲しくなったんだ。・・・あなたはせっかく作ってきてくれた朝食が入っていたバッグを落とし、床に崩れ落ちたよね。そして・・・、ああ、とてもとても悲しい顔をしたんだ。あなたは悪夢から覚めたかのようだったかもしれないけど、僕は最高の夢から覚めてしまったんだ。・・・あの日、最後にセックスしたけど、おばさん言ってくれたよね。『短い間だったけど、楽しかった』って。この言葉がどんなに憔悴しきっていた僕の心を支えてくれたか・・・。でも同時にすごく苦しくなってしまったんだ。・・・さっきはお酒に酔ってしまった、下品な言い方をしてしまったけど、本当はおばさんとこうして一緒にいられるだけでいいんだ。ごめんね、キスまでしてしまって・・・。でも、やっぱりおばさんとのキス・・・、最高に良い! 」

沢木は少し涙目になりながら、切実に語った。

母はやっぱりあの日、最後に行為をしてから帰ってきたんだ・・・。

あの日の夕飯は相当気合いが入っていたのに・・・、あの日の晩、二人で抱き合いながら泣いたのに・・・。それも全部、沢木と行為をしていた後のことだったとは。

母は一体どんな面持ちでこれを聞いているのかと見てみると、意外にも冷たい表情で沢木を見

つめていた。

「また泣き落とし? もうだまされないわよ」

「何だ? 判っちゃった? 」

「同じ手を何度も・・・ 」

「でも最初引っかかったでしょ」

「馬鹿・・・」

沢木が言ったことを否定もしないし、私が沢木にバラしてしまった『母が沢木とセックスしたことを照れながら認めたこと』を聞いて、かっとなって沢木の頬を叩いたことも、まるで何もなかったかのように沢木と話をしている母を見て凄く違和感を覚えた。それを特に感じるのは、もうとっくに離れることが出来るのに、母が未だ沢木の腕の中にいることだ。本当に嫌ならそこから抜け出すことなんて簡単なことなのに・・・。

何だろう、この感触は。

ああ、そうか。あれだ・・・。

恋人関係。

この二人は・・・、深い関係なんだ。

そう思うと同時に、胸が掻きむしられたような息苦しさと吐き気に襲われた。

「っ! 」

危うく声が漏れそうになったのを辛うじて堪えることができた。胃の奥から酸っぱいものが込み上げてきたが、何とか飲み込んだ。

「女性を堕とすのってさ、母性本能をくすぐるか女としての魅力を引き出すかどちらかでしょ


沢木が得意気に語った。

「は? あたしはどうだったって言うの」

「おばさんは両方。入り口は母性本能、そして仲良くなってから女としての魅力。泊まった日は死ぬほど飲まされたから堕とせなかったけど、結果、意外と簡単だったわ」

ははは、と笑う沢木を殴るかのように右手を上げた母の目は、そんなこと絶対するようなそれではなかった。「堕とすって言うな」なんて囁いていたのが仲の深さを物語っていた。

「あんたの独特な論理展開にも慣れたわ」

「でも、的は外してないだろ? 」

「どうだか・・・」

「おばさんのM属性だってピタリだったでしょ。俺そういうのは絶対的に当てちゃうんだから」

「・・・」母は顔を赤らめて下を向いた。沢木はそんな母の頭を撫でながら続けた。

「でもまさかこんなに好きものなのに、おばさんって旦那さんを含めて経験人数が二人目だったとはね。しかも可愛そうに旦那さん若いうちにEDになんかなっちゃってさ」

父がEDだったなんて、全然知らなかった。

若いうちということは、夫婦間の行為は長い間行われていなかったということか。

だからと言って、母の体は慢性的に男のそれを求めていたり疼いていたりしていたのか。

母のことを『好き者』なんて言われたのが悔しかったが、母は気にしている様子ではなかった。

「いいじゃない、その話はもう」

「良い病院紹介してやるってのに」

「今更もういいわ」

「何で? 俺がいるから? 」

沢木が本気とも冗談とも取れる言い方をした。

「あんたとは・・・、終わってるの! 」

母は偽の怒り顔で答えた。私でも判ったくらいの偽り加減だった。

母は沢木との会話を・・・、楽しんでいる。

嫌だとか、終わっているとか、言っているけど・・・、そんなことは本気で望んでなんていない・・・。

沢木が母を抱きしめ再びキスをした。

母はもう抵抗しなかった。

完全なる受け入れ。

こんな光景を目の当たりにしながら、私の股間はどんどん膨張していってた。

まだ母は、チラチラと寝ている父を見ていたが、身体はくねくねと沢木に寄りかかっていっていた。

母の気持ちと身体は噛み合っていなかった。

「すごいね、旦那さん。寝ていてもおばさんを拘束するんだ。・・・じゃあこうしようか」と、沢木は床に脱ぎ捨ててあったストッキングを拾うと母に目隠しをした。

「ちょっと、やぁ、なに? 」

沢木は手慣れた手つきで、ストッキングを用いあっという間に母に目隠しをしてしまった。

「競馬でいうところのブリンカーだよ。周りを気にする馬は本領を発揮できない。おばさんもこの前みたいにエロくならなきゃ。それがおばさんの本領だろ? 」

「な、・・・なにを、い、いや! 」

抗う母が身体をクネクネとさせているのが、何ともエロチックに感じた。

白いパジャマは徐々に乱れていって、母の白い肌がチラチラと見えるようになっていった。

「ねえねえおばさん、そんなに抵抗している『振り』をしているけどさ、いまどんな下着つけてるのかな? 白やベージュならともかく、まさか”お花畑”じゃないよね? 」

沢木の言葉に、母がビクリと反応した。

お花畑・・・?

その答えは、沢木の口からすぐに聞くことが出来た。

「お花畑はおばさんが一番好きな下着だもんね。女性として男性を受け入れるときの・・・。いわば勝負下着。はは、違うか。おばさんの場合何なのかな? 『私を自由にしてください下着』かな、Mだから。大好きなお花畑に囲まれてセックスしたいなんて、変態だね。それじゃ青姦だっつーの」

抱かれるときにしか身につけない下着・・・、そんなの見たことない。

「もし、それだったら・・・大変だ。ねえ、おばさん」

沢木が母のパジャマに手をかけた。

「い、いやだぁ」

少女のようにイヤイヤと首を振る母。

沢木の右手がパジャマのボタンを上から下までスッと撫でると、ボタンは見事にすべて外れてしまった。

今どうやったんだ?

そんなこともお構いなしに沢木が楽しそうに叫んだ。

「オープうーン! 」

沢木は母のパジャマの上着を脱がせた。

母は寝るときにブラジャーを着ける派だった。

小振りなおっぱいは、白を基調として黒い縁取りがされた色とりどりの大きな花柄があしらわれたブラで包まれていた。

「はは、やっぱりお花畑だ。何だ、やる気だったんじゃん」

「ち、ちがう。これは・・・、たまたま」

目隠しをされている母からその表情は読み取れないが、明らかに動揺していた。

そんな母に対して、沢木の語気は強くなっていった。

「嘘ついてんじゃねーよ」

「ほ、本当に・・・」

「いいや、違うね。あんたは抱かれたかったんだよ、俺に」

そう言いながら沢木は、母の脱がせたパジャマを器用に使い、母の両腕を後ろに縛り上げてしまった。

「え・・・、な、何・・・、い、いや! ち、ちょっとなにすんの! 」

「あ? 素直じゃねーからだろ。・・・まんざらでもないだろ? 無理矢理される方が好きなくせに。マゾヒストちゃん」

クネクネと嫌がる母の胸が小さいせいか、ブラのカップから乳首が見えそうになっていた。

抵抗する母に沢木は急に低い声で、「本当のこと言ってみろよ、ババア」と言った。

母はその声にひどくおびえた様子で、小さく「ひっ」と言った。

「てめえ、本当のことを言わないと、このまま外へ放り投げるぞ」

母は目隠しをされ両腕も後ろに縛られ自由がきかない状態だった。

暫しの沈黙が続き、次第に母の様子を変わっていった。

身体はもじもじとし始め、見えている部分の顔は紅くなり、息も荒くなっていった。

「久しぶりに俺に会ったんだ・・・。とんだご挨拶ぶちかましてんじゃねーぞ。あ? 」

沢木の言葉にまたビクリとした母が、それを受けて吐息混じりに喋りだした。

「あ、あの・・・、あなたがまた家に来るなんて・・・、思ってもいなくて。それで、でもあなたの目を見て、匂いを嗅いで、声を聞いている内に・・・・」

「思い出したのか。あの快楽を貪っていた日々のことを」

「そ、そう。で、でも、お父さんもいるしあの子も・・・、家族の手前そんな感じになってはいけないと思って・・・」

「普通に振る舞った? 」

「そ、そう。でも夕食の時にあなたが色々言うから、あたしドキドキして・・・」

「看護の時の話? 」

「う、うん。バラされるんじゃないかって」

「俺がそんなこという男だと思っていたのか? 」

「ち、違うけど。でも、物の弾みってことも・・・。ふ、不安で」

「俺がお前を抱きに来ると思ってた? 」

後ろから母を抱きしめていた沢木が、右手でおっぱいをギュッと掴みながら言った。

「あっ! ・・・う、うん。来てくれると思っていた」

「どうして? 」

「あれだけお父さんやあの子にお酒を飲ませて・・・、酔わせていたから。で、でも・・・」

「でも・・・、なに? 」

「あなたがあの子と・・・、あの子の部屋へ行くときに、あたしと廊下ですれ違った。あの子はもうフラフラしていたから、あたし、あなたにサインを送ったのに・・・。気づいてくれなかった」

「サイン? 」

「・・・う、上目遣いで・・・、し、舌をペロッと出す・・・。ほら、いつもあなたの、あの、モノを、く、咥えるときにそうやってお願いしろって、あなたが言っていたじゃない」

そんなサイン・・・、気がつかなかった。母とすれ違ったのは何となく覚えていたが、そんな・・・大胆なことを・・・。

「ああ、知ってたよ。お前が馬鹿みたいに舌を出していやらしい目で俺を見ていたこと」

「酷い、そんな言い方・・・。で、でもじゃあ、どうして? 」

「あ? 放置プレイだよ、あっはっはっは」

「そ、そんな・・・。あたし・・・、だから、てっきり・・・」

「もう今日は来ないんじゃないかって? 」

「あなたは自由奔放だから」

母の言葉を無視して、沢木が冷たく言った。

「お前がさっきから拒んでいたのは、不貞腐れていたのか? 」

「え・・・? 」

「そうなのか? 」

ハッキリとした口調で詰問するかのように沢木が言い放った。

「あ・・・、あ、あの・・・、ご、ごめんなさい。き、急にあなたが来たから・・・、隣にお父さんもいるし・・・。あ、あの子のことだって、何も聞いていなかったから・・・」

「お前は俺に抱かれたことを後悔していると言ったんだぞ」

「そ、それは・・・」

「何だ? 」

「あ、・・・。ごめんなさい・・・。う、嘘なの。あ、あたし・・・、な、生意気言って・・・。嘘です。ご、ごめんなさい。そん、そんな、つ、つもりなんて無かったんです。信じ、し、信じてください」

母は命を取られまいと懇願するかのように、沢木に何度も何度も謝罪した。

謝罪・・・。

沢木に背くことは、もはや罪なのだろうか。

それ程までしても『関係を持ったことを後悔している』という前言を撤回したかった母は、つまり再び沢木に抱かれたがっているということ・・・。

自分と同じ年のガキに・・・。

こんな母・・・、見たくなかった。

見たくなかったが、私はどうしようもなく興奮していた。

何だろう、この歪んだ気持ちは・・・。

「ふん。まあいいさ。俺は過ちを追求しない。人間ができているからな。それより、お前は一つ大きな勘違いをしている」

沢木の言葉にビクリと反応した母は、小動物の様だった。勘違いした、また怒られる・・・、そんなイメージなのだろうか。

「あ・・・、あの・・・」

口をパクパクとさせながら恐る恐るその真意を確かめようとしていた。

「俺が何も対策をとらないで、お前の所へやってきたと思っているのか」

「え? 」

「旦那には『魔法』をかけてあるのさ」

「魔法? 」

「朝まで絶対起きない魔法がな、旦那にはしっかりかかっているんだよ」

「そ、それって・・・、クス・・・」

「おっと、滅多なことを口にするなよ。魔法だよ。俺は魔法使いなんだ。言ってなかったっけ」

「まさか、あの子にも・・・」

「ああそうだよ。だから二人とも朝まで絶対起きることはないんだよ。どう? 少しは安心したかい」

嘘だ。

私は『魔法』など掛けられていなかったし、おそらく父にしたって何も手を下されている訳がなかった。私と沢木はずっと一緒にいたし、確かに私は適正量を超えて酒を飲んでいたかもしれなかったが、そんな怪しい動作を見逃すほどではなかった。よしんば、私がトイレに立った隙に父のグラスに何かを細工すると言ったって、父だって限界までは意識があったのだから、父に気づかれずにミッションを完了させる事は容易ではないだろう。だから答えは明白、沢木は小細工なんかしていない。

普段聞けば、そんな嘘はバレバレの筈だった。

が、目隠しをされ両手の自由を奪われ上半身はブラジャーのみで極度の緊張状況にある母には利いた。

先程とは明らかに、ピンと張りつめていた空気が変化していったのを感じた。

家族の範疇に置かれていない状況。

父が朝まで起きない・・・。

私も。

沢木と母の二人だけの空間・・・、だと思い込まされた母。

それは我が家にいながら、母の魂は沢木の部屋で情事を繰り返していたあの記憶の情景や思い、果ては感触などに身体全体が覆われ、もうこの場には無くなったのではなかろうか。先程までの緊張感が解き放たれたかのような・・・。

間違いなく、引き金はひかれた。

「安心したか? 」

「・・・う、うん」

「じゃあ、どうする」

「え? 」

「どうして欲しいんだ」

「そ、それは・・・」

「ん? 」

「だ、・・・抱いて・・・、ほ、ほしぃ・・・」

ああ、ついに聞いてしまった。

母の口から、沢木に対してのおねだり。

それを望んでこんな狭いスペースに入っているのに、いざそれが現実になっていくことが、こんなにも心苦しくなるなんて・・・。

母の声は段々細くなっていった。

この部屋に入ってから父の鼾は際限なく続いていたから、こうなると私のいる位置まで声が届かなくなってしまう。

母がごにょごにょ言っていると、沢木が強い口調で言った。

「聞こえない! なんだ、はっきりとお願いしろ! 」

「は、はい。あ、あの、わ、私を・・・、抱いて下さい」

軍曹が二等兵を叱りつけるかのように、母は自由の利かない身体を出来る限り敬う姿勢でお願いした。

「抱く? こんなババアを? 俺が? 」

ババアって、どういうことだ。

人の母親に向かって・・・。

土足で顔を踏みにじられたような悔しさに、一気に頭が熱くなった。

「い、いえ。こ、こんな、き、汚い、くすんだ張りも艶もない身体で良ければ、・・・す、好きに使って下さい。あ・・・、おね、お願いします・・・」

私は改めて目の前の光景が信じられなかった。

あの強気の母が・・・。

口が悪くて、男っぽくて、手が早くて、Sっ気丸だしの母が・・・。

嘘みたいだった。

「んー。ま、お前がそこまでお願いするんだったら、遊んでやらなくもないけどな」

また片手で母の胸をブラの上からギュッと握りながら沢木は平然とのたまった。

「あ! ・・・ありがとうございますぅ」

ビクンと反応した母は、表情が見えないのだが、嬉しそうだった。

その証拠に、少しだけ口角が上がったかのように見えたのは気のせいではなかったと思う。

「小さいおっぱいだな」

「す、すいません」

「お前、乳首立たせてんじゃねーよな。立ってたら洗濯バサミで挟んじゃうからな」

ブラのカップに手を入れながら沢木が言った。

「すげ、ガッチガチじゃんか」

「い、いやぁだあ! 痛いことしないで・・・、・・・ね」

可愛らしくお願いする母に、キュンと胸が高なった。

異常な環境下におかれた私の心理状態って、どうなっていたのだろうか。

母を見る目が・・・、どんどん変わっていってしまっていった。

私は・・・、異常者なのだろうか。

いや、私が異常者だったら、沢木はどうだというのだ。

沢木だけでなく母もそうだ。

異常者どもの宴・・・。

今日この場に関して言えば、沢木の提案を却下することだって十分可能だった。

「ライブでみせてやるよ」

「ふざけるな! 」って・・・。

何故あの時言えなかったのだろうか。

いや・・・、言わなかっただけだ。

見たかった。

こういう光景が見たかった。

好んで飛び込んだ世界がこれ。

後悔は・・・、しない?

「はは、しねーよ。痛さよりも、もっと身体が悲鳴をあげる位の快楽を与えてやんからな」

そう言って沢木は母の首元にキスをした。

キスというより唇で母の身体を確認しているかのようだった。

慣れているのか、母は完全に沢木に身を任せていた。

最高の快楽を与えてくれることを知っているかのように。

道を極めた武道の達人の型が美しいというが、沢木の愛撫する姿もまた魅了されるものがあった。

噂に違わぬ沢木の愛撫を目の当たりにした私は、言葉を失った。

触れるか触れないかの距離で母の望むべく箇所を攻める沢木。

熱い吐息で母の身体に火をつけていき、上がりすぎた温度を唇や舌先の僅かな水分で冷やしてあげる。

徐々に密度の濃い接触をしてやり・・・。

首筋、肩、鎖骨、腕、脇の下、背中、腰、臍と時間をかけてゆっくりと舐めていった。

優しい愛撫に母の身体は反応しっぱなしだった。

愛撫を極めた男のそれは、見ている私の体すら仕上げていっているかのようだった。

私の興奮も、今まで経験したことがないものだった。

ブラジャーが外され、物心がついてから、おそらく初めて見た母の胸は美しかった。

沢木が言うほど貧乳というほどではないが、やはり小ぶりなおっぱいだ。

だが、垂れている訳ではなく形状は丸くぷっくりとしており、好みの問題だが、私にとっては巨乳よりこちらの方がいい。

全身を唇で愛撫していた沢木だったが、時折、その小ぶりでぷよっとしたおっぱいに手が伸び、優しく触れたり強く揉んだりして母を喜ばせていた。乳首はとうにマックス状態だった。沢木はその乳首を実に器用に、まるでベーシストのように弾き、母はその弾くリズムに合わせ、普段は出さない高音域の喘ぎ声を出していた。

沢木は愛撫を止めると、おもむろに母の背後にまわり、赤ちゃんにおしっこをさせるような恰好で抱えあげた。「あ、なに? 」という母の言葉を無視して母を抱えたままゆっくりと私のいる押入れの前まで歩いてきた

「いい感じにお前のあそこが蒸れただろうから風にさらしてやるよ」

「や・・・こんなの、いやだあ・・・。下ろして」

「下ろして? 口のきき方に気をつけろよ。このまま親父を蹴り起こしてお前のあられもない姿を見せてあげることも俺にはできるんだぜ」

「あ、あの・・・、ごめんなさい。・・・お、下ろしてください」

「駄目だ! 」

沢木は抱えたままの状態で、器用に母の白いパジャマのズボンを尻の方から剥くように脱がすと、ブラジャーとお揃いの白地に黒縁、色鮮やかな大きな花柄があしらわれたパンティが現れた。脱がされたズボンは、ふぁ
さっと床に落ち、ただの布切れと化してしまった。

パンティ一枚でおしっこポーズの母は、顔を真っ赤にして恥ずかしがり下唇をキュッと噛んでいた。その母の表情が私の股間を更に熱くさせた。

「さあ、御開帳だ」

沢木は先程のズボンと同様、尻の方からゆっくりとパンティを脱がしていった。

私の眼はそれに釘づけになり、瞬きすらする事なく、もどかしい思いで母のあそこが拝めることを待ち望んでいた。

良く見ると、母のパンティの真ん中ほどに碧い花が描かれており、その色がどんどん濃くなっていっているのに気がついた。

濡れている・・・。

母はこんな格好をさせられているのに、やはり喜んでいるのか。

「そうら」

最後は一気に脱がされ、見事母のあそこは私の眼前に開帳された。

「うわっ! 何だこりゃ? 」

沢木が叫んだ。

母は声を出さずに、首を横に何回も振って、抵抗の意思表示をした。

「すっげー糸ひいてんじゃん。ははは、濡れ過ぎだろ」

月明かりに照らされた母のあそこと花柄のパンティとは、キラキラとした無数の細い絹糸のようなもので結ばれているかのようになっており、その愛液の多さと粘着性がよく窺えた。

こうした方がエロいっしょ、と沢木はわざとパンティを片足に残したままにした。

母のあそこは、全体的に小さく、毛も薄めでいわゆるビラと呼ばれるところも、グロテスク感はなく、綺麗で芸術的ともいえた。

少なくとも私が見てきた女性器の中では一番美しかった。

沢木は人差し指と中指で母のあそこを開いたり閉じたりさせ、わざとにちゃにちゃと音をさせ「エロすぎ、おばさん」と母を小馬鹿にし笑った。

「ああ、いやあ、くちゅくちゅしないで・・・下さい・・・。は、恥ずかしいです、ぅああっ」

敏感な部分に沢木の指が触れたのか、母がびくんと身体を震えさせた。

母の生まれたままの姿を見ているうちに、私は息が荒くなっていき、口は乾き、下半身は先程から我慢が出来ずに、もじもじととしていた。いけないと思いつつも、履いていたジャージとパンツを下ろし、モノを露わに
した。

無意識のうちに、沢木に辱められていく母を愛でながら強烈に自慰行為がしたくなっていったのだった。

まさにこれからしようとしたその時、襖の隙間から沢木がこちらを見ているのがわかった。こちらから沢木のことはよく見えるのだが、普通あの位置から私の行動など判るはずもなかった。だが、沢木はじっとこちらを
見ていた。沢木の唇が動き、『まあ、待て』と言っているのが判った。もちろん、声には出していなかったので母がそれに気づくことはなかったが、なぜ沢木は私がジャージを下ろしたことに気付いたのか、それが不思
議だった。

沢木は母を抱えたまま、隣のベッドに寝ている父の枕元に立った。

相変わらず高いびきをかいて寝ている父は、自分の妻が息子の友達に衣纏わぬ姿で大股開きをさせられそれに喜びを感じいやらしい密を垂らしていることなど露とも知らなかった。

沢木は、「いいか、このまま大人しくしているんだぞ」といい、母を寝ている父の顔に跨がせるように下ろした。

突然のことに「え、・・・なに? 」と動揺していた母だが、沢木に「踏ん張っていないと旦那さん、起きちゃうよ」といわれ、「あ・・・」と、自らが置かれた状況を把握したのかプルプルと震える足で不安定なベッ
ドの上で何とか体勢を整えていた。もし立ち上がろうとするなら一旦重心を後ろに持っていかなければならず、ならばと跪いてから立ち上がる動作をすれば父の顔面に母の性器が当たってしまう。どのみち両手を縛られ
ているので少しのバランスでも倒れてしまいそうだった。

転倒すれば、さすがに父も目を覚ましてしまうだろう。

ここまでして母を一先ず置いて何をするつもりなのか・・・、と思っていたら真っ直ぐ私の所へ沢木が向かってきた。

細い隙間から見える沢木の表情は、悪魔的な笑みを浮かべていた。

次の瞬間、沢木は私が入っていた押し入れの襖を開けた。

私も驚いたが、母はもっと驚いた。

「何? い、今どこか開いた音がしたよ! ちょっと・・・、公平君! 」

大きな声を出すと父を起こしてしまうので、終始押し殺した声で話していた母だったが、さすがに少し語気が荒くなっていた。

その声には迫力があり、鬼気迫るものがあった。

私は沢木に首もとを掴まれ、そのまま押し入れの外へ連れ出された。

沢木は先ほど脱がせた母のブラジャーを持っており、いきなり私の両手を掴むといとも簡単に後ろに縛り上げた。

私は半立ちの性器をあらわにしたまま、その場に座らされた。

「あっ」

と思わず出そうになった声を何とか飲み込み、代わりに沢木を睨んだ。

『なにすんだよ! 』と口パクで伝えるが、沢木はヘラヘラ笑っているだけだった。

縄抜けならずブラ抜けを試みるも、伸縮性のあるブラジャーの特性が見事に生かされていて、ちょっとやそっとじゃ外せないほどしっかりと私の両手の自由は失われた。

これでは、自慰行為はおろか、何かあったときに部屋から逃げだそうとしても無理だ。

見つからないように押し入れの奥に隠れるしかないだろう。

沢木は一体何の目的で、私にこんな仕打ちをしたのか・・・。

「・・・ねえ! き、きいているの? 」

不安そうな母がまた沢木に話しかけた。

ニヤリと私を見た沢木が、母の方を振り返った。

沢木は何をしようとしているんだ・・・。

え?

あ・・・。

まさか・・・。

沢木はこのまま母のところへ行き目隠しを取って、私の情けない姿を見せるのだろうか?

いやいや、母だって恥ずかしい格好をさせられているのだから、そんな姿を私に見られたくないだろう。

だが、隠そうと思っても二人とも自由を奪われているのでどうすることもできない。

無理に身を隠そうと思うと、物音を立てたり転倒したりしてしまい、今度は父を起こしてしまうかも知れない。

もし父が起きたら・・・、最悪だ。

両手を縛られ目隠しをされ真っ裸の妻と、同じく両手を縛られ下半身丸出しの息子。

それを笑いながら見ているゲスト。

父だって生きた心地がしないだろう。

そんな現実・・・、家族の誰も受け止められない・・・。

まさか、こいつ・・・。

最初からこれが目的で、私を誘ったのか・・・。

家庭崩壊。

どこまで我が家をぶっ壊せば気が済むんだ。

沢木が口を開き、母に何か言おうとしている。

沢木は私のことを再び押入れに戻し、数センチの隙間を残すように襖を閉めた。

沢木がこれから起こす行動によっては、幸せだった我が家が崩壊する・・・。

この歪みは二度と塞がることはなく、それぞれの絆を断ち切ってしまうのだろう。

母も焦っていたと思う。

予期せぬ物音。

それもドアでなく襖が開く音。

誰かがいるのか、何かがあるのか、それともこれから何かが起こるのか。

いずれにしても、隣に寝ている父と、上で寝ていると思っている私に隠れて行っていた情事を見つかっては困るだろう。

何があったの、という問いに沢木からの返答がなかったことが、更に不安を増長させたに違いなかった。

ましてや、こんな格好。

目隠しをされ両手は縛られ、でも裸で片足にはパンティが巻き付いている。

誰しも、こんな姿なんて見られたくないに決まっている。

母は身体を動かそうとしたが、無理な体勢を支えるのが精一杯で、足は限界に近いのだろう、プルプルと震えていた。

加えて、不安と恐怖も限界のはず。唇も震えはじめた。

父の鼾が虚しく響いていた。

手の自由を奪われたが、私はこのまま足で襖を開け、沢木に突進し、少なからず母の目隠しを取らせないように、そして出来れば父に気付かれることなく、沢木の行動を止めることは出来ないかと考えた。

しかし、すぐにあの時のことを思い出した。沢木に二度も攻撃をかわされたことを。

・・・無理だ。

くそ!

無力な自分に吐き気がした。

こうなることが何で判らなかったのだろうか。

沢木が嫌な笑顔になって口を開いた。

何を言うつもりなのか。

ああ、・・・やめてくれ!

「ひょっとして息子が押入れに入っているのかと思ったら、やっぱいなかったわ」

は?

何言ってるんだ、こいつは・・・。

沢木がちらっとこっちを見て、また不敵に笑った。

口が動いて何か言っていた・・・。

『これから、これから』

多分そう言っていたのだと思う。

何なんだよ。こいつは・・・。

安堵から全身の力が抜け、汗がぶわっと噴き出した。

「え? な? ちょ、・・・ちょっと・・・。あ! 」

母は沢木の取った行動に動揺したのか、体力の限界がきたのか、バランスを崩して寝ている父の上へ倒れそうになった。

母の全体重プラス勢いで父の上へ倒れこめば、さすがの父も起きてしまう。

最悪っ!

と思いきや、寸前で沢木が母を抱え上げた。またおしっこポーズで。

「あは、セーフ・・・、ビックリした? 」

いたずらっ子のような顔で沢木は母を覗きこんだが、母は何も答えず、ただ、はあ、はあ、と息を整えていた。

母も全身に汗をかいており、いかに体力が消耗されたか見て取れた。

母の表情が変わった。

先程までの『恋人』モードの甘え顔が一変した。

この顔は、かなりの怒りモードだ。

たとえ目隠しをしていても、私にはわかった。

手酷いいたずらをしたときに出た例の雷・・・。

幼い頃からの条件反射で、私の体が硬直した。

ドでかい雷が落ちる。それももう秒読み段階で。

父だって起きるかもしれないが、こうなったら母は止まらない・・・。

母が、すうっと大きく息を吸った。

来るぞ・・・。

「ちょっ」

・・・っと! アンタ!! ふざけんじゃないよ!!!

と叫ぼうとしたのだろうが、寸前に沢木の指が母のあそこに「あん! 」という母の可愛い声とともに入ったかと思ったら、おそらくGスポットらへんを高速で愛撫した。

愛撫というより激しく毒物でも掻きだすような感じだが、母は物凄い勢いで悶えていった。

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅちゅちゅちゅちゅちゅぬちゅにちゅにちゃぬちゅにちゃぐちゅぐちゅという下からの音とともに、

「あああああああんんんんんんん、っくくくんん、ああ!! あ! あ! あ! あんっ! 」という上からの音が綺麗なハーモニーを奏でた。

細かい飛沫のように愛液がピピピと吹き出していた。

沢木が母を振り向かせその唇にむしゃぶりついた。母もそれに応じ「んん、んぱあ、はあ、はあ、んぷぅん、んん、ん、んぐ」と激しいキスをした。沢木は母の口内や唇では飽き足らず、頬をなめあげ句、鼻の穴の中に

まで舌を入れた。母はその自由な生き物のような沢木の舌を自らの舌で追い求め、首も折れんばかりに沢木の方を振り向いていた。沢木は母の要望に応じながらもその手は休むことなく母の秘部に快感を与え続けていた

「んぷぁ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・、やん、あ、い、いやだ・・・。そこそこそこそこそこ・・・、んん、んぐ、んぱあ・・・、はあ、はあ、はあ・・・」

キス、呼吸を整え、喘ぎ、キス、呼吸を整え・・・。

一定のリズムが、母の身体をくねらせ、喘ぎ声を高め、そして私のあそこを痛いくらいに立たせていった。

「あん、あ、あ、あ、あ、あ、あ、・・・んんんんんんんあ、はあ、はあ、は、は、は、は・・・、ああああ、ああああああ、ああああああんんん、だめ・・・、だめだめだめだめだめ」

母の声が明らかに大きくなっていた。父の鼾に助けられていた今までよりも、更に大きい。絶頂が近いのかもしれなかった。

「ん、い、いく、だ、だめ・・・。だめです・・・。あ、あ、あ・・・、・・・え? 」

急に沢木の指の動きが止まり、沢木は母をベッドに下ろした。そして母の目を覆っていたストッキングをスルスルと外した。

部屋は月明かりが差し込んでいた。

目隠しをされていた母は、そんなわずかな明かりでさえ、眼を馴らすのに少しの間を必要とした。

沢木は母を見下ろし、その視力が戻るのを待っていた。

「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」

母の怒りはもう収まっていた。逆に絶頂を迎えさせてもらえなかったことに気持ちがスライドされていったようだ。

沢木は力業で母の感情をねじ曲げた。

間違いなく落ちるはずだった雷が落ちなかった・・・。

私は先ほどから、生まれて初めて見る母の姿に戸惑いっぱなしだった。

こんなの・・・、母じゃないみたいだ。

まだ息があがっている母の後ろに回った沢木は、固く結んであったパジャマも紐解くと、母を完全に自由な状態にした。

母は長い間縛られていた疲れからなのか、その場で座り込んだまま、まだ、はあ、はあ、と肩で息をしながら沢木を見つめていた。

沢木が母の脇に座ると、母は沢木のもとへいき物欲しそうな顔で両手を広げた。

『抱いて』と無言でおねだりしたかったのかもしれなかったが、沢木はそれをやんわりと断り、こう言った。

「完全なマゾだな。肉体的にも精神的にも痛め付けたり辱しめたりすればするほど、お前のあそこはドロドロに濡れる。もうどこを触っても性感帯だろ? なあ・・・」

沢木が母の頬に軽く手を添えると、母はビクッと震えた。その手が首、鎖骨、胸、臍へツツツと触れると母の表情は苦しそうになっていき、身体はビクンビクンと脈打っていた。更にその下へ・・・、と思いきや人差し指でかなり強めに母のピンピンに尖った乳首を弾いた。
びちん、という大きな音と「んンッ! 」という悲鳴に近い声が部屋中に響いた。

「ンッじゃねーよ、ババア。一人だけ楽しみやがって。・・・しかもそんなに汗びっしょりで・・・、何か臭そうだな、加齢臭とかするんじゃねーの? その髪もさあ、ベッタリおでことかに張り付いちゃって・・・、なにそれ? 汚いんだけど。余計老けて見えっからさ、何かないの? 」

確かに母は全身に汗をかいていて、髪の毛も全体的に乱れ、おでこにかかっているところは張り付いていた。

だが、沢木が言うような老けて見えるなんてことはなかった。私はそんな母の姿に、異様な妖艶さを感じていた。自分の親とか関係なく、一人のフェロモンを出しまくっている女性が裸でベッドに座っているだけだ。第一、こんな姿にしたのは誰なんだ、って言いたかった。

沢木は母の鏡台に手を伸ばしガソゴソと探ると、これで二つ結びしろ、と髪ゴムを投げて渡した。

母を見ると、目に涙を溜め、口は真一文字に、泣くのを我慢しているかのようだった。それでも投げられたゴムを拾いながら訴えるかのように沢木を見つめた。

自分は愛を表現し、恋い焦がれていたことを告げた相手に、老けて臭そうで汚いなんていわれれば、誰だって泣きたくなるだろう。

沢木に抱かれたくて、同じ家の中に父や子がいて性行為なんかしたら一発でバレる可能性が高い危険な環境にも関わらず、裸になり股を開き汚い言葉で罵られても我慢している母。

そうまでしても沢木を欲しているのか・・・。

母は言われた通り、渡されたゴムで肩まで掛かっていた髪を、まるで健康的な中学生のように二つに結んだ。単に結ぶだけなら後ろに一つでも良さそうなものだが、どうやらこれは沢木の好みのようだ。

「可愛くなったじゃん。」と沢木は、母を抱き締めた。そして、先程母の求めを断ったのとはうってかわり、今度は自分から母にキスをした。母はそれを嬉しそうに受け入れた。

「んん、んぱ、はあ、はあ。ホント? んん、ん、んく・・・。可愛いって・・・、んん」

キスをされながら目を丸くして沢木に問いかける母は、本当に少女のように見えた。

「・・・聞き返す奴、ウザイ」 

「あん、ごめんなさい」

あれだけ屈辱的な仕打ちを受け、言葉を浴び、それでもたった一言、沢木に容姿を誉められただけで、恍惚な表情を浮かべている母を見ているのは、息子としてとても辛かった。

しかし同時に、私の一物はこれ以上ないというくらい膨張し、今にも射精しそうになっていた。

そうして、早く続きが見たい気持ちと、もう止めて欲しいという気持ちが頭のなかで目まぐるしく交錯していた。

「やっぱお前ちっこいから、こういうの似合うな」

キスから又、母のあそこに手を掛けた沢木が愛撫を再開した。今度はゆっくりと触れるか触れないかのような動作で、母を喜ばせていた。

あああ、はあはああああん。

母の透明感のある高い声が、私の心に鈍く響いた。

二つ結びにした母は、本当に中学生のように見えた。そりゃ近づいて見れば年齢は誤魔化せはしないだろうが、雰囲気はまるでそのものだった。

そう言えば、以前に母が言っていたことを思い出した。

沢木の印象について、年増好みではなくロリータ好みだということ。

これだけで、沢木が母の言っていた通りの好みだとは言えないが、その毛があるようには思えた。そう言えば、滑川さんだって年齢よりずっと幼く見える。背だって小さい。

あ、彼女も似たようなことを言ってたな。

『池田くんのママさんって小さい? 』

確か、母と沢木の関係をズバッと言い当てられたときだった。

あの時は馬鹿みたいに否定したけど。

結果は、今目の前で行われている。

この行為が現実だ。

ベッドから降りた沢木が、着ていたTシャツを脱いだ。線は細いがガッチリとした筋肉質の綺麗な体つきをしていた。

そう言えば、沢木の裸を見るのは初めてだった。こんなにいいガタイだったとは・・・。その流れでベルトを外し、履いていたジーパンも脱いだ沢木は、ゆったりとした暗い色のハーフパンツ的なものをはいていた。よく判らないが、大きめなトランクスのようにも見えた。

筋肉美の体も素晴らしいのだが、彼自身が収まっている中央部分に、否が応でも目がいってしまう。

私が彼と同じものを履いていたら、おそらく何の凹凸のない様子になると思うが、彼のそれは、まるで子供がふざけてパンツの中に異物を入れているように、大きく膨らんでいた。しかも、男性器の形ではなく、言うなれば大蛇のようなものが丸まっているところに布を被せているような様子だった。
私はそのまだ見ぬ異物に対し、恐ろしさを感じた。同時に胸の奥から感じたことのない興奮の波が押し寄せてきた。

断じて言うが、私はホモではない。

しかし、この時の私は早く彼のモノが見たくてウズウズしていた。動悸が激しくなり息も荒くなっていった。

おもむろに、彼はハーフパンツを脱いで真っ裸になった。

そこに剥き出しとなったモノは、私がこの世に生を受けて初めて目の当たりにしたものだった。

ベロン。

そう音が聞こえてもおかしくなかった。

大きい・・・、物凄く・・・。

思わず、唾をゴクリと飲み込んでしまい、自由な身であれば、後退りしてしまったかもしれない。

とても同じ男性器だとは思えなかった。

別の生き物・・・。

全体的な大きさは勿論だが、カリ首も立派なそれは、三分立ちというところだったが、既に存在感としては十分だった。

ダランとした佇まいのシンボルは、まるで休息している龍の首ように見えた。

こ、これが勃起したら、どうなるのだろうか・・・。

そしてこれが・・・、母の身体を突き刺したなら・・・。

死んでしまうんじゃないか・・・。

そんな想像をした私だがすぐに思い出した。

そうだった・・・。

母は既に体験ずみだったんだ。

また胃の奥から何かが込み上げてきた。

そして何か足に冷たいものを感じた。
見ると、足元に大きなシミが床を濡らしていた。

そのシミから細い糸のようなものが、私に向かって伸びていた。

それは私の我慢汁だった。

私が興奮した証が、大きなシミを床に作ってしまっていたのだった。

こ、こんなこと・・・、初めてだ・・・。

ベッドの側に立っている沢木が母を見下ろし、ベッドに座っている母が沢木を見上げていた。

母の目はトロンとしていて、口は半開きで何かに取り憑かれているようだった。母は少し震えながら、彼のモノに触れようと手を伸ばした。

「行儀が悪いな。おねだりはどうした? 」

馬鹿にするような目で母を見下しながら、沢木が冷たく言った。瞬間、手を引っ込めて舌を出してお願いする母は、正座をし両手を前についている格好をしており、その様子はまるで犬のようだった。「はっはっはっ・・・」と息遣いが聞こえてこないのが不思議なくらいだった。

「よし、舐めていいぞ。ただし、手は使うなよ。お前の腐った手で俺の神聖なモノを汚すと承知しないぞ」

そんな言われ方をされた母は、「・・・はい」と静かに返事をし、しかし舐めてもいいという許可を貰った嬉しさなのか、嬉しそうに四つん這いのまま沢木のモノに舌をつけた。

下から上へ、また上から下へ、右から左、そしてその逆へ、舌全体で『んべっ』という感じで舐めていき、時折、睾丸を優しく吸って奉仕する様は、昨日今日のどそれではなく、二人が過ごしてきた明らかにされていない日々をよく表していた。

母に舐められていた沢木のモノは、徐々に大きくなっていき、ついにフル勃起状態になった。

滑川さんが言っていた『神柱』という表現は、あながち間違いではないと思った。

単なる巨根自慢の欧米男優のようなバケモノ的な大きさでは無かったが、サイズが桁外れなことに違いは無かった。長さ、太さは勿論のこと、その出で立ちには堂々たる風格さえ備わっていた。まるで今まで幾人もの女性を調教し従わせ、快楽の渦に巻き込ませ虜にさせてきたということを、語らずとも周囲に知らしめているかのようだった。

別格。

崇め奉るまではいかないが、近づき難い神々しさが滲み出ているそれを、母は舐め続けていた。ゆっくりと丁寧に労るように舐める様が、二人の主従関係を決定づけていた。

単なるマゾヒストとサディストの性行為を超越した、上手く言えないのだが、最強と謳っていた虎に、それまで小動物のように思っていた何かが戦いを挑み、予想を裏切る展開で牙をへし折り、虎が屈しているような異様な感じがした。

私の中で母は絶対的な存在で、決して頭が上がらない人だ。

その母の頭を押さえ付け、何があろうと逆らう事を許さない沢木。

しかし、そいつは同級生で『親友だ』なんて言ってる間柄。

自分の同級生の巨根を、丁寧に奉仕する裸体の母。

全体的に細めで胸も小さめだが垂れてはおらず、上下左右に舐めるリズムに合わせて細やかにぷるぷる揺れているのが可愛かった。

尻も小さめだが形は良く、いつものパンツ姿の時と同じ様に、柔らかそうな丸みを帯びた肉質と半球型のバランスが整っているその様は、まるで『実年齢に反して若いのだ』、ということを主張しているかのようだった。

二つに結んだ髪型も普段見ることがないので、少女時代の母の面影を垣間見るようで、これも新鮮な感じ。

そう考えると、母の身体、容姿というのは、私の求める理想に限りなく近いのかも知れなかった。

それとも母を追い求め過ぎて、理想が後付けになったのかも知れないが、そんなことはどうでもよかった。

普段、決して見ることの出来ないこんな光景を目の当たりにして、さっきから我慢汁が止まらなくて、大量に出続けたそれが床を濡らしていた。

私の興奮はますます高まる一方で、息は荒く、口から馬鹿みたいに涎さえ垂らしていた。

我が親のあられもない姿に興奮するなんて・・・。

「咥えてもいいぞ」

沢木にそう言われた母は、ありがとうございます、と答えると、小さな口を最大限に大きく開けて、恍惚とした表情で神柱を頬張った。

四つん這いのまま沢木のイチモツを咥え、自らの首を動かしフェラ行為に勤しむ母。モノが大き過ぎるせいで顎が外れるのではなかろうかというこちらの心配を余所に、亀頭から棒の半分もしゃぶれていない母だが、その太腿につーっと伝わっている分泌物の量で相当興奮していることが窺えた。

「んくっ、んくっ、んくっ、んくっ、ちゅぽん、んべ、うん、んく」

首の動きに連動して、小振りなお尻も左右にくねくねとしだした。沢木はそんな母の姿態を満足げに眺めていた。二つ結びにした母の頭を撫でながら、時折耳を弄ったりしてはニヤリとほくそ笑んでいた。

突然、一心不乱でフェラチオをしている母の頭を沢木が両手で掴むと、そのまま強い力で自分の方へ引き寄せた。

「ぐぉっ! 」

沢木のモノが母の喉の奥に突っ込まれた。それまで半分も咥えられていなかったのが、その殆どを咥え込む形になっていた。入れられた瞬間、鈍い声とともに大きく目を開いた母は、命令に背き手を出し沢木の行為を止めようとしたのだが、その手を払われ更に強めに尻を『バシッ』と叩かれ無言のお叱りを受け、嗚咽を堪えながらまた四つん這いの格好をさせられた。しかし、そうそう苦しさなど我慢できるはずもなく、眉間に皺を寄せながら大粒の涙を流していた。目から涙、あそこから愛液を流す母が、苦しいのか気持ちいいのか、私には判らなかった。

「オエッ、ごえっ、ジュボ、ゴボッ、オエッ! 」

見ているこっちが吐きそうになりそうな乱暴なフェラチオ。

やっぱり、母は苦しんでいる。

お母さん・・・。

母を助けたい・・・、という気持ちには、実はこの時なっていなかった。

その逆。

こんな凌辱光景が・・・、犯されているような母の姿が、私の興奮度をマックスにしていた。

もっと見たい。

苦痛に堪えている母の姿を・・・。

一糸纏わぬ姿で、日常ではその欠片さえも見せない、性に対する欲求度の高さを。

そんな母の姿を・・・、もっとずっと見ていたかった。

沢木は更に母の喉の奥へと突っ込みだした。母の口をオナホールとでも思っているのか、スピードも加速し、強さも増し、まるで母の喉を壊すような、もっと言えば窒息させるような・・・。

・・・窒息?

見ると、母の両目は白目を向いていて、手もダラリとしていた。二つに結んだ髪がふるふると揺れていた。

沢木に頭を持たれているから気付かなかったが、母の姿勢はかろうじて四つん這いに保たれていたが、自分の力で踏ん張っている様子ではなかった。

沢木は喜々とした表情で行為を続けていた。

母は・・・、どう見たって限界の筈。

さすがに、マズい!

そう思い、縛られていることを一瞬忘れて、襖を開けて母の救出を試みようとしたが、すぐに両手の自由を奪われている現実に気付かされた。

お、お母さん・・・。

「うぅ。ヤバ、出そうだ」

射精感を覚えたのか、何回かストロークをした後、沢木がようやく母の口から・・・、というか喉の奥からイチモツを引き抜いた。

チュポッ、なんていう可愛らしい音でなく、ぬぅぅぽんっていう感じ。

「はあ、はあ、あぶねー。イクとこだったぜ」

沢木は掴んでいた母の頭をそのまま自分の顔まで持ち上げると「おばさん、マジ最高! 」と嬉しそうにキスをした。キスというか顔全体を舐め回していた。

白目を向いていた母は、そのキスみたいなもので蘇生したのか、ビクンッと身体が反応した後、目の前にいる沢木に気付くと、最愛の人と再会したかのように勢いよく抱きつき、同じ様に彼の顔を舐め回した。

お互いが愛情表現として相手の顔中を舐め回し、跡が残るくらい強く抱き締めあいながら、沢木は母のアソコを愛撫し、母は沢木のモノを小さな手でしごいていた。

「はあ、はあ、おばさん、すんげー濡れてんな」

「はあ、はあ、こ、公平くんも、はあ、はあ、すごい、硬い、はあ、はあ」

「はあ、はあ、欲しくなったか」

「はあ、はあ、は、はい・・・、はあ、はあ、く、下さい、ほ、欲しい・・・です、はあ、はあ」

おでこに前髪が汗で引っ付いている母が、だらしない顔で懇願した。

「はあ、はあ、あははは・・・、まだだ! 」

『キャッ』という軽い悲鳴を聞いたか聞かずか、母の身体を押し倒した沢木が、間髪入れずに覆いかぶさると、そのままシックスナインの態勢に入り、勢い良く母のアソコを舐めだした。

「あん! あああ、ああん! 」

不意をつかれた母は、隣に寝ている父の事などすっかり忘れて、大きな声で喘いだ。

「うわー、ぐちょぐちょだな・・・。仕方ない、一回逝かせてやるよ」

「ふえ? 」

悶えながらも、役割として沢木のモノを咥えようとしていた母が、素っ頓狂な声を出しながら沢木の方を見やった。

沢木は、振り返ることなく口をすぼめると、母のおそらくクリトリスをロックオンし、そのまま一気に吸引した。

『キュウッ』

沢木の背筋が伸縮したと同時に、凄い音がした。

何という肺活量・・・。

「っ! アッ! 」

そんなことをされた母は人溜りもなく、ビクンッ、ビクンッ、と大きく身体をバウンドさせながら果てた。

腹筋がプルプル震えて、小刻みに身体が痙攣していた。

一瞬の出来事。

軽く噴いたのか、沢木の顔は母の分泌液で濡れていて、ダラリと広げられた足の間のシーツには、大きなシミが作られていた。

「あは、すっげーな、相変わらず」

母の愛液が入った目を擦りながら、沢木は無邪気な子供のように興奮していた。

その傍らでグッタリと仰向けのまま、まだ身体をビクビクとさせている母。

二人の熱気が部屋の温度を高めているのか、押入れの中が暑くてどうしようもなかった。

こちらに股を広げた状態でいる母のアソコを、沢木が覗き込んだ。

「あはは、おばさん、クリでかくなっちゃってるね」

私の方を振り向き、母のアソコを指差しながら沢木が、ほら見てみろよ、と言わんばかりに笑った。

母はクタッとしたまま動けず、沢木の行為を見ていない。

少し遠目だが、確かに先程沢木に抱えられながら私の面前にさらされた母のアソコには見られなかった突起物が覗えた。

沢木がその突起物に触れると、母は身体をビクつかせ、「だ、ダメ、あ、はあ・・・。イッたばかりだから、はあ・・・、さ、触らないで」と苦しそうに懇願した。

「ふーん。イッたばかりだから・・・、ねえ・・・」

母のお願いなど聞く耳を持たない沢木は、構わず愛撫を続けていた。

「アン! ほ、ホントに・・・。あ、ああ! だ・・・、本当に、あん・・・」

下半身をクネクネ動かし、沢木からの攻撃を交わそうとしているのだろうが、見方によっては愛撫に酔っておねだりをしているようにも見えた。

「じゃあ、こんなことも駄目なんだろうなぁ」

沢木が母のクリトリスを人差し指と親指で摘むと、グリッと捻った。

「・・・ほ、あん! 駄目ぇ!! 」

そう叫びながら、母は開いていた股を閉じると、反射的に沢木の腕を挟み、そのままピクピクと腹筋を揺らしながら二度目の気をやった。悲鳴と同時に、ピューっと小さく小水を噴いた。

「あひゃ・・・、あー、はあー、あー、ひゃあぁ」

母が発した奇妙な声を、私は生まれて初めて耳にした。その声は衝撃的で、背骨の上から下まで電気が走ったように、ビリビリと震えた。

「ごめんごめん。一度なんて言っておきながら、あんましおばさんが気持ち良さそうだったから、二度逝かせちゃった」

私なら二度も連続で絶頂を迎えたら、性欲も下がろうが、母のそれは衰える事はなかった。

「おばさん、入れて欲しい? 」

自分自身の鎌首を持ちあげながら、沢木が聞いた。

「あひ・・・、は、はい・・・。ほ、ほひいで、す・・・」

逆にエンジンがかかったのか、ついさっきまで『イッたばかりだから・・・』なんて拒んでいたのに、更なる快楽を情けない声で求める母。その目に映っている沢木のイチモツは、以前母に最高の快楽をもたらしてくれた、忘れることの出来ないもの。

薬物中毒者になった人が更生した後、ふとしたきっかけで薬物が目の前にある状況になった場合、その誘惑に負けて再度手を出してしまう、なんてことを耳にした事がある。沢木のモノが薬物とは言わないが、中毒性、若しくは依存性がひょっとしたらあるのかも知れない。

あれだけ家族を愛していた人が、一週間ほどの間、取り憑かれたように若いエキスに塗れ、快楽に溺れ、行ってはいけない道を夢中で突き進み、それを我が息子に気付かれたことを知り、慌ててその関係に終止符を打ち、夫に気付かれる事なく、家族関係が再構築出来たのは、単に麻疹の様なものに掛かっただけだと思っていたのだが、実はそんなものじゃなく、それは相当根深いところの意識まで蝕んでいたようだ。

「じゃあ、ほら、咥えて少しは奉仕をしろよ」

ようやく起きあがる事ができた母を又寝かせた。顔を横に向かせると、シックスナインの格好のまま、沢木がイチモツを母の口に押し込んだ。今度は最初から喉の奥まで突っ込んだらしく、母は沢木の腰ら辺に手を添え、一瞬「っごえ! 」と苦しそうな声を出したが、又目を白黒させながらも、母なりに一生懸命咥えようとした。が、上手くいかなかったので、業を煮やした沢木が、自ら腰を振り、一人でシックスナインを楽しんでいた。

「ジュボー、ジュボー、ヂュパ」

力無く横たわり、開いたままの母の口を使っている様は、まるでラブドールのようだった。

「もっと喉をすぼめて、舌使えよ、馬鹿」

「ふぁ・・・い。・・・んぺ、チロチロ・・・、んぽ、オエッ」

母の特権かと思っていた『馬鹿』という言葉が、こんなに切なく感じた事は無かった。

自分の同級生に見下されている母。

棘だらけの言葉が、私の心に鋭く突き刺さり傷を付ける。

母の言う『馬鹿』には、嫌味がなかった。決して相手を見下している言葉ではなく、親しみが込められていた。

だが沢木のそれには、そんな暖かさはある筈がない。

沢木が無言のまま起き上がると、ベッドの上で仁王立ちした。

夜が白んできたのか、段々と外が明るくなってきて先程よりも二人の姿がくっきり見えるようになっていた。

天に向かって聳える珍棒は逞しかった。大きいカリ首は今にも火を噴きそうなほど赤く染まり、太い棍棒のような竿部分には、力みを感じさせるかのように太い血管が浮き出て脈打っていた。母はそんな怪物の前に跪く

と、大きく舌を出し、自らフェラチオ行為を始めた。無言の圧力からなる命令・・・ではなく、母の意思によるものだと感じられた。

「んべ、ぺロ・・・、あむ、ちゅ、んべえろ、あむ・・・、あむ・・・、ちゅう、ぺロ」

「旦那が隣に寝ているのに・・・。よくやるよな」

聞こえているのかいないのか、母は無言で沢木のものを舐めていた。

「・・・そうだよな。この次、いつ会えるか・・・、うっ、判らないもんな」

片手で竿の部分を扱きながら、袋を優しく舐める母。沢木は気持ちいいのか、少し声が震えていた。こんなやり方をさらっとするということは、相当沢木に指導されたか、それとも元々備えていたものなのか・・・。

「あんたはもう俺と会えないものだと思っていただろ? それが偶然なのか神の思し召しなのか、今日、いま、こうして俺のチンポをしゃぶっている。可笑しなものだよな。長年セックスレスだった身体に、ちょっと火

を灯してあげたら、こちらの想像以上に瞬く間に燃え上がってしまって・・・。自分でも消し方が判らないんだよな」

母は顔を真っ赤にしていたが、目をぎゅっと瞑り、そんな沢木の話を無視したまま行為を繰り返していた。

「欲しいんだよな。あの時みたいに・・・。気が狂うくらいマンコをグチョグチョにされ、俺のこいつで子宮を壊されんばかりに突かれたいんだよな」

言葉攻めに反応したのか、母の尻は少しピクンと反応してしまい沢木に笑われたが、それでもフェラ行為はやめなかった。

母は沢木にどこまで支配されているのだろうか・・・。

母がM属性だというのは判った。

母の中にそういう血が流れていて、沢木はそれを見逃さなかった。どういう方法でこうなったのかは知らない(沢木は誠心誠意などと言っていた)が、母の心の隙間に付け入り、若さと体力と巨根でその関係を持ったこ

とは事実だろう。

でも映画や小説でもあるまいに、一度そういう関係になったからといって、こうまで年下にいいように主導権を握られるものだろうか。

少なくともこの一ヵ月は会ってもいなかったろうし、連絡も取り合っていないはずだ。それなのに、この二人はずっと昔からの主従関係のように見える。

何故母はそうまでして、沢木に奉仕をするのだろうか。

「でもどうかな。その願いが叶えられないかも知れないね」

どういうことだ。

ここまで愛撫を繰り返してきた母の身体はできあがっているし、沢木だって母のフェラでもう準備万端のはず。後はインサートするしかないじゃないか。

まだ、じらして母の属性を頂点まで高めて様というのか。

もういい加減、見せてくれ。

私は・・・、母が沢木のモノに狂う姿がみたいのだ。

「ふふふ、あんたも気が付いているんだよな・・・。もうあまり時間が残されていないってこと」

時間・・・。

そう言われ、父のベッドサイドにある旧式のデジタル時計をみると、五時十分を指していた。

「あんたの旦那はまるで機械のように決められたタイムスケジュールで過ごしているんだよな。例えば、夕方は六時四十五分に帰宅し、風呂、ビール、晩酌を済まし、読書に睡眠。まあ、今日は飲みすぎちゃったから読

書は割愛だけどな」

よく知っている。

まさに沢木のいう通りだった。母はそんなことまで話していたのか。

いや、沢木が巧みに聞き出していたのか・・・。

「だが、起床時間はどうかな」

母の顔色が変わった。そう言えば、父は毎朝一定の時間に起きて、新聞は一般紙と経済紙を隅々まで読み、朝食、トイレをすませ、身支度を整えると、七時きっかりに家を出ていた。

その起床時間は・・・。

「五時半だったよな。いくら酒を大量に飲んで早く寝たと言っても、起きる時間は変わんないよ。そうしたら、こんなにおばさんが一生懸命しゃぶって挿入準備を整えてくれても、セックスはできないよね。と言うこと

は・・・、最高の快楽を感じられずに又日々の生活に戻ることになっちゃう。俺は良いけど・・・、おばさんは困るのかな。だから必死なんだよね。なんかいつも以上に従順だと思ったら・・・。へへ、あはははは」

沢木の高笑いにも、母は関心がないかのようにフェラを続けていた。

そうか、だから母は焦っているかのようにフェラをしていたのか。

最初、沢木の誘いを断っていたはずなのに、いつの間にか時間がなくなっても求めているようになるなんて・・・。

「・・・聞こえてるよね。おばさん。ねえ・・・」

じゅぽ、じゅぽ、と大きな口を開けて、全身に汗をかきながらフェラをしている母が、一瞬沢木の方を見た。その目は不安に満ちあふれ、何かを懇願するかのようだった。

「さて、時間も時間だし・・・、そろそろ止めようか。これ以上ここでこんなことしていたら見つかってしまう」

沢木は母の髪の毛に優しく触れながら言った。

母はそんな沢木の言葉を更に無視して一心不乱でフェラチオを繰り返していた。

「ねえ、おばさん。もういいよ。今夜は楽しかったよ。久しぶりにおばさんとエッチなことが出来てさ。・・・一つにはなれなかったけど、また会う機会があるだろうから・・・」

沢木の腰に添えていた母の手に力が入っていた。

母は入れられたいと思っている。

一度覚えた快楽が、手の届く距離に置いてあったら、掴みにいくのが人の弱さなのか。

沢木は無造作に母の口からチンポを抜くと、涼しそうな顔で「そんなに欲しいの」と問いかけた。

母は照れているのか、怒っているのか顔を真っ赤に染めていた。顎に添えられた手を払うと、力強い声で答えた。

「そ、そうよ。判っているなら早くしてよ。・・・あんたも今日は余計なことをよく喋るわね」

「なんだよ。通常モードに戻っちゃったのか。あーあ、そんなんじゃとても二人で愛し合う事なんか出来ないなあ」

沢木はふざけるように笑った。

「あ、あんたが要らないこと言っているからでしょ。今夜はあんたの方から誘ってきたんだからね・・・。せ、責任取りなさいよ」

いつもの母の様でありながら、見た事のない母が沢木をキッと睨んだ。

「責任って・・・。おばさんのマンコに入れろってこと? 友達のお母さんなのによくそういうことを強要できるね」

「う・・・、うっさいわね。何が『友達のお母さん』よ。今更・・・」

「そう。そんな態度? 別にこっちはこのまま終わったって全然いいんだけどなあ・・・。んじゃ僕は、そろそろおじさんも起きる頃だし、見つかったら洒落になんないから、池田君の部屋へ戻ります。」

沢木はベッドから降りると、自分の服を集めだした。

「ち、ちょっと! ま、待ちなさいよ」

「何? 」

「う・・・」

「どうしたいの? 」

「・・・疼くのよ。あんたに逝かされて・・・。我慢できないの! 」

半分泣きそうな母が可愛く見えた。

「おじさん、横に寝てるよ」

「判ってるわよ」

「もうすぐ起きるよ」

あれだけうるさかった父の鼾は止まっていた。二人の会話の僅かな間にある静けさが一層緊張感を高めていた。

「判ってる! 」

「いいの? このままセックスしてしまって、もしも家族の誰かが眼を覚ましたら、更に欲求不満になるおそれが・・・」

苛立ちが爆発しそうな母が沢木の言葉を遮った。

「判ってる、もういいでしょ! だから、早く・・・」

「何を? はっきり言ってよ」

「く・・・、ーーーーっ! 」

眼に涙を一杯溜めて母が悔しそうに言った。

「入・れ・て・く・だ・さ・い!! いちいち言わなきゃ判んないの。この馬鹿! 」

怒って横をプイっと向く母の拳は、固く握られていた。

「従順なマゾのおばさんも好きだけど、やっぱりおばさんはこうじゃないとね。この気の強さ・・・。好きだなあ」

横を向いている母の顔を撫でながら沢木が言った。母も怒り顔のまま沢木の方を向いた。

二人とも、暫く無言で見つめ合っていた。ものの一分くらいだっただろうが、私には長く感じられた。

もうすぐ父が起きるかも知れない。

沢木は、一体どういう風にこの場の決着をつけるつもりなのだろうか。

母は・・・、どうしても沢木に入れられたいのだろう。

母の泣きそうな顔・・・。欲しくて欲しくてたまらないという感じ。

反対に沢木はニヤニヤ顔。入れてもいいし入れなくてもいい。余裕なのか、はたまた別の思惑があるのか、表情からは伺えなかった。

端から見ても、温度差が感じられる二人の距離感。

沈黙を打ち破ったのは、やっぱり沢木だった。

「おばさんを最初に見た時さ、年の割に・・・、はは失敬失敬、綺麗な人でビックリしたよ。つーか本当のこと言うと『ただそれだけ』だったんだけどね」

脈絡の無い話を、沢木は急に切り出してきた。

母の右眉がピクリと上がった。苛立ちも限界に近いのだろうが、それでも下唇を噛んで、黙って沢木の話に耳を傾けていた。

「牛丼屋で最初におばさんを見たときにさ、何かこうビビっと来るものがあったんだよね。テキパキと愛想が良くて元気で。汗をかいているんだけど、清潔感があって。それに何と言っても綺麗で。はは、あなたは多分幼い頃から言われ慣れているんだと思うけど、本当に美人だよ、冗談抜きで。俺が今まで見てきた女性の中でも相当上位にランクインするよ。はは、どうでもいいって? まあ、そんな顔しないでさ、もう少し聞いてよ」

母は沢木の『お喋り』に付き合いたくないのか、イライラオーラを全身に出していた。

「大学で話しているときに、あなたが池田君のお母さんって知ってさ。ああ、知ってるって? まあまあ。いや、はじめ言われても直ぐに判らなかったよ。だって彼と全然似ていないもんね。いやいや、彼も悪くないよ。不細工とかじゃない。そういうことじゃなくて・・・、違いすぎるよ、顔立ちがさ。だから判らなかった。でも、あなたの旦那さんを見て納得した。似てるねー。彼と旦那さん。そっくり。だから、初めて池田君のお宅へお邪魔した時はさ、正直あなたをどうにかしようと思ってきたよ。はは、それも知ってるって? 私もどうにかされたいと思ってましたって? 」

母が本気じゃないけど強めのグーで沢木の肩を叩いた。痛てて・・・。あはは、ゴメンゴメン、そうじゃないか、と沢木も軽く受け止めていた。

「だってさ、似ていないから絶対本当の親子じゃないと思っていたよ。それにさ、俺がだよ、最初大学で『昨日、駅前の牛丼屋に行ったら、めっちゃくちゃ綺麗な人妻みたいな店員がいてさ。年増なんか普段相手にしないけど、あれだったら一回してみてもいいかなって思うんだよね』って言ったときにね、誰だったかが、『あ、それ池田の母ちゃんじゃね』的なこと教えてくれてさ。そんで『じゃあ、池田っちん家に行くしかねえべ』みたいなムードになって、池田君も『別に。来たけりゃ来れば』って言ってくれたからさ。ああこれは本当の母親じゃないな、と。継母とかで、普段イジメられたりしているから、俺たちに成敗して貰いたいんだなあって思ったのよ。若い男に一発やられてしまった方がちょっとは大人しくなるんじゃないかって。これはもう、彼からのエスオーエスの合図だってね。誰が考えたってそうでしょ? 」

沢木独自の論理展開はアホらしくて聞いていられなかった。本当にあの時こんな風に思っていたのなら・・・、こいつ大馬鹿だ。

どういう生き方をしてきたら、こんな風に物事を捉える様になるのだろうか。

母がまたチラリと時間を確認し、我慢できずに沢木に抱きついた。沢木は母を抱擁すると、顔をあげさせ唇を軽く合わせた。母の唇はソフトよりハードを求めていた。ジュパ、ジュポっという音がした。

「んぱ・・・、おばさん、待って待って。もう少しだけ付き合ってよ。そんでね、えっと・・・どこまで話したっけ・・・。そうそう、そんで池田君の家に来た。あなたに会った。あなたの手料理を食べた。酒を飲んだ・・・、ここだよ。てっきり俺はこの酒を飲んでいる時に、みんなが気を使ってさ、『じゃあ、俺らは駅前のマン喫にでも行ってるから、後はご自由に』的な感じになると思ったのよ、なのにあいつら急におばさんと俺がやってるところを見たいって言いだしたてね。何時って・・・、あなたが台所かなんかに行っていたときかな。あ、勿論池田君もいなかったよ。その話し合いの時にはね。トイレかどっかに行ってたのかな。んでさ、こいつら話が違うじゃねーかって思ったんだけど、あんまり皆が期待しているんで、それを裏切ったら悪いかなって思ってさ。池田君が戻ってきてそれとなく言ったら、『え、本当にやる気でいたの』なんて言い出してさ。いきなりだよ。『聞いてないよ』的な感じなんて笑えもしないしさ、んなこと誰も考えてもいなかったからさ、面倒くさいから、こいつ酔わせて寝かせようぜってことになってね・・・」

思い出した。そういえば酒盛りが始まって暫くしてから、『じゃあ、そろそろおばさんロックオンするから』と沢木が言いだしたのだった。私が冷静を装いながらも必死にそれを拒んで、その場は何とか治まった。別に凄い言い争ったわけじゃなく、『マジで』、『え、違うの』、『冗談かと思ってた』、『ふーん・・・、オッケー判った』って、短いやり取りで沢木が引いたから、これも冗談かと思っていた。私がトイレに立って戻ってきたら、やけに皆が酒を注いできて、変だとは思ったのだが、周りの空気に従った飲んでしまったのだった。

当然、皆は母にもお酌をしたのだが、母も三倍返しとかいってやり返していた。ペースメイキングいう能力に関しては、母のそれはかなり高いものがあった。相手のペースを飲みこんで、自分のペースにしてしまう。更に言えば、母はやられたらやり返す人だった。だから、皆が母を潰しにかかってきてもそれを受け、尚且つ相手を攻撃し撃沈させる、なんていうことなど造作もないことだった。剣豪が群がる小童をバッタバッタと斬っていく様に、気持ちのいい位、短時間で奴らを潰していった。と言っても、私の記憶があるのもここまでで、沢木と母との一騎打ちのときは、意識が朦朧としており、何も覚えていなかった。母に軍配があがったという結果を聞いた時には、さすがだと思ったのだが。

「え、最初に聞いた話と違うって? ははは、そう、ごめん。嘘ついてた。・・・いや、だって本当の事なんか言えなくね? 嘘というか脚色だよ。・・・でも、おばさんってバッカスの生まれ変わりみたいに酒が強いからさ、あはは。違う、そういう話じゃない。ズレちゃった。何だっけ、おばさんがチャチャ入れるから判んなくなっちゃったよ。・・・あ、そうそう、池田君のこと」

沢木が何を言っているのか、よく判らなかった。

今この状況でどうしても伝えなければならないことなのか?

母じゃなくても、こっちまでイライラしていた。

それに、最後何て言ったんだ。

・・・俺の事?

何だこいつ・・・。何を言おうとしているんだ。

そんなことはどうでも良いとも思っているであろう母が、沢木の口を手で押さえて怒鳴った。

「いい加減にして! もう時間がないじゃない!! ・・・お願いだって言ってるでしょ!! 」

涙目の母が最期の懇願をした。怒りでふるふると身体を震わせていた。父の時計もかなりいい時間を指していた。父は相変わらずの様子で寝ていた。沢木は母の手を口から離すと、優しい口調で言った。

「判ったよ。入れる入れる。じゃあさ、おばさん跪いて咥えてよ。んで、おばさんのあそこも乾いちゃっているだろうからさ、俺が得意の指マンしてやるからさ。気持ちよすぎて泡を吹いちゃ駄目だよ、あはは」

母の表情が明るくなった。言われた通りの格好になった母は、凄い勢いで沢木のモノを咥えだした。

指マンをすると言った筈の沢木は、姿勢を変えることなく、そのまま右足を母の跪いている両足の間に入れると、足の指で愛撫をし始めた。

沢木の足の指は、太さは普通サイズより若干大きい程度だが、長さの方が標準以上にあった。驚いたのが、その動きが滑らかで繊細で、手の指と同じような愛撫をして、母を喜ばせていたことだった。

「あん・・・、き、気持ち・・・、いい、いい、・・・んあ、やん、ああ、そこそこ、・・・んくっ! 」

くちゅん、くちゅんと母のあそこからは直ぐにいやらしい音が聞こえてきた。

「おばさん、気持ち良いからって口が疎かになるんだったら、やめちゃうよ」

「んふぁ・・・、ほ、ほへんあふぁい・・・」

謝りながら慌ててフェラを再開する母の姿に、私の興奮は高まった。

小さな口一杯に頬張っているから、まともに返事をすることすら出来ない。

しかもそれは、日本人にあるまじきドデカイ珍棒。

母が乱れて性に狂っている姿が、こんなに私を興奮させるなんて・・・。

「そんなに気持ち良いの? 息子の友達に足で愛撫されてさ。旦那が隣で寝ててもう少しで起きるのに、ギリギリまでチンポを欲しがってさ・・・。ド変態ババアだね」

あああん・・・、んく、んく、んああ! ・・・んぽ、んぱ、ぎゅぐん! 

沢木の声が届いていないのか、母からフェラの音と喘ぎ声しか聞こえてこない。

「そう、それでね・・・。池田君のことなんだけど」

沢木の足は器用に母のあそこを愛撫し続け、母はその快楽に身を委ねながら沢木のモノを奉仕していた。

最早、母には沢木の言葉など耳に届いていない様に思われた。

目はトロンとし、鼻呼吸の為か鼻孔は膨れ、小さな口は大きなモノを咥えているので、馬鹿が馬鹿みたいにバカでかい食い物を頬張っているようで、その姿は滑稽だった。

加えて、沢木の足指愛撫は激しさを増し、クリトリスを摘まんだり弾いたりを繰り返し、終いには親指を母のあそこに入れてピストン運動をし始めた。

くちゅん、くちゅん。くちゅん、くちゅん、にちゃん、くちょん、にち、くちゅん、にち、にち、くちゅん、とだらしない音が静かな部屋に響いていた。

その都度母は、「ふぁん! ぶぅん・・・、うあん、・ぁん、ふぁ、あ・・・」とよがり声をあげていた。

「あんたの息子はさ・・・」

先程から私の事で、何を母に伝えようとしているのだろうか。

「あんたの乱れている姿が、見たくて見たくて堪らないんだぜ」

「! 」

母の表情が、一瞬だけ曇った。が、すぐに又奉仕活動を再開した。

「俺さ、あいつが何を求めいるのかが良く判らなかったんだ。話題がテメーの母親をやるやらない的な話から、『お前ん家、行っていい? 』って展開になってんのに、涼しい顔して『いいよ』だし。んで、時間も頃合いだし、そろそろテメーの母ちゃん抱いていいのかって言うと、『え本気で? 』とか言ってっし。ね、訳わかんないだろ。あいつ。・・・んでさ、思い出したんだ」

沢木が自らの口調に乗って喋り出した。彼はエンジンがかかると早口になるのだが、滑舌が良いので耳触りでは無かった。むしろ周りの人は、そのテンポの良さに聞き入ってしまうことがままあった。今は正にその『聞き入ってしまう状態』だった。

「エディプス・コンプレックスって知ってる? 」

母は聞こえているのかどうか判らないような表情で、黙々とおしゃぶりをしていた。

私はこの言葉の意味を知っていた。

まさかコイツ・・・。

嫌な予感がした。

心臓がドクンと脈打ってしまった。

沢木は、私の母に対する思いに気付いていたのか・・・。

母に知られたくはなかった。

頼むからこれ以上喋らないでくれ、という私の切なる思いは呆気なく裏切られた。

「ま、要は母親をテメーのモノにしたくてしたくて堪らないってやつさ。よくマザコンって言うけど、あれではない。性的な独占欲・・・、愛情って言えば聞こえはいいが、やりたさが強いかな。んーとにかく、あんたの息子はあんたをそういう目でみてるってこと」

動悸が激しくなって、息が荒くなってきた。自分自身気は付いていたが、改めて他人の口から言われると、とてもまともな感情ではいられなかった。穴があったら更に深い所まで掘って土を被せて生き埋めになった方がマシじゃないかって思えるほど居たたまれなかった。

「あいつが昔付き合っていたのって、知ってる? まあ、普通知らないか。そんなことわざわざ親に言ったりしないからね。二回生の時かな。結構地味目な子で、デブとかじゃないけど顔はお世辞にもいいとはいえない微妙な感じなんだけどね」

私の脳裏に、懐かしい思い出が蘇った。一人の女性との、甘く切なく透明感のある思い出。結局、私は彼女とセックスすることはなかった。何度かその手前までいったのだが、お互いそういう関係を望んではいなかった。肉体的でな快楽よりも精神的な安らぎを求めていた。だから、所謂『清い関係』のまま、その人とは別れたのだった。

でも、何でこいつが彼女を知っているんだろう。付き合っていたのは短い期間だったし、彼女とは学部が違っていたので学内で会うことは数える程しか無かったはず。大抵、私が一人住まいだった彼女のアパートへ行っていたので目撃される事も考えにくいのだが。

「実は俺そいつの処女をいただいちゃってさ。あはは、あんたの息子と別れた後だったんだけど、あいつってばその子に手を出してなかったんだよね。ああ、勿論最初は知らなかったよ、あんたの息子と付き合っていた事なんかさ。話しをしているうちにね・・・。だから処女だって聞いた時には冗談だと思ってさ、「またまた、じゃあマンコの匂い嗅がせてよ」って無知やりジーパン脱がせちゃったりしてね。いや、無理やりって言っても合意の上での『無理やり』だよ、俺ってほら、フェミニストだから。おばさんの時もそうだったじゃん。ま、それはいいんだけど・・・、何だっけ。そう、そうしたらホント処女特有の匂いっていうか、マンカスたっぷりつけた香ばしい匂いっつーか、おばさんはもう覚えていないだろうけど、あったでしょ? おばさんもさ。まだあげ初めし前髪の頃に。今は成熟して俺のチンポを入れて擦ってもらわないとおさまらないこのメス穴から、そんなスメルをプンプンと放出していた時期がさ。あははは。でもさ、俺という男がさ、何であんな地味な可愛くもない女を抱いたかっていうとさ・・・、覚えていないんだよねー。経緯っつうのが思い出せないんだよ。んー、ま、たぶんー、そのときー・・・、機嫌が悪かったんだろうね。あはは、んじゃなきゃ、あんなのさ、相手になんかしないかんね、普段は! て、見ていないから判んないよね、あんたの息子の彼女の顔なんて。あ、でも嫁に来ていたら大変だったよ。おばさんは綺麗なのに、孫は可愛くないっていう悲惨な結末になっていたかも。あはははは」

脳天を思い切り殴られたかのような衝撃を受けた。

彼女が、あの後沢木に抱かれていたなんて・・・。

自分の中の清らかな思い出が、音を出して崩れていくように感じた。

しかも、その彼女の容姿を馬鹿にする発言に怒りがおさまらなかった。

なに人の昔の彼女を馬鹿にしてんだ!

彼女は、お前が思っているような子じゃない。

そりゃ、確かに母と比べると・・・。

母と・・・。

比べる・・・?

忘れていた記憶が蘇ってきた。

いや、沢木の言う通りなのかもしれなかった。

自分の中で美化されてた思い出の『事実』がフラッシュバックしてきた。

その彼女とは、母の幻影を見ながら付き合っていたのかもしれなかった。大人しい子だったから、私がああして欲しい、こうして欲しいというこっちの勝手な女性像の強要を、出来得る限り叶えるために努力してくれていた。今思い返すとそんな健気な子だったような気がする。それなのに当時の私は、そんな積極性のない彼女を不服に感じていた。

その頃は従順な子と付き合いたかった訳じゃなかった。むしろ母のような快活な女性と付き合いたかったのだと思う。女性に奥手だったからせめて付き合っている彼女とは、いつも母と話しているようなテンポで会話がしたかったのだ。でも、その子は地味な見た目通り、おっとりとした、自分の意見を前面に出すことのない子だった。何を言っても『うん、うん』と頷くばかり。今になれば、そんな女性となんて願っても付き合えないのは解っているが、その時の私は、余りに幼稚だった。彼女に対し、理想の女性像、つまり、母親像を追い求め過ぎていたのだった。

一つ思い通りにならないと、他のことについても、だんだん気になり出していった。

倹約家というより貧乏くさいこと。服のセンスがダサいこと。空気を悪くするから友達にも紹介できないこと。顔が・・・、同じ名前なのにどうしてこうも顔のつくりが違うのか、『名は体を表す』という言葉はどこへ行ったのか・・・てこと。

自分の顔を棚に上げて「何でこいつと付き合ったのだろう」なんて真剣に思い悩んでしまっていた。

本当に今思い出すと、恥ずかしくて恥ずかしくて居たたまれなくなるような自分勝手な考えで、彼女の人生における大切な時間を台無しにしたのかもしれなかった。

こっちから告白して、あっちから別れを告げてきた。

「私たち、元の関係に戻った方がいいのかも・・・」

久しぶりにきた電話だった。

彼女は涙を堪えていた。こっちはもう熱が冷めていたから「そう」とだけ言った。彼女から「ごめんなさい」と小さな声で謝られた。謝らなければいけなかったのは私の方だったのに。

私なんかより、沢木の方が余程女性として扱ってくれるだろう。

そう考えると、こんな私に処女を捧げなくて良かったことが、せめてもの救いのようにも思えた。

いつのまにか怒りが消え、思い出は私の気持ちを暗くさせてしまった。

「つーか、そんな女だから、本当に忘れていたんだ。でもね、思い出しちゃったんだ。・・・何でだと思う? 」

やっぱり・・・。

というか、そうか・・・、そうだよな。

そりゃ知ってるよ・・・。

だから、沢木の野郎は彼女のことを・・・。

クソ、何だよ、コイツは・・・。

なんで何でも母さんに喋るんだよ・・・。

「ふふふ、実はね・・・、その子はね・・・、名前があんたと同じなんだ。あはははは。ねー、どうよこれ。どういう意味か判る? 」

予測はできていたことだが、ショックだった。

絶対母に知られたくなかった事実。

我が息子が自分と同じ名前の子と付き合って、自分を投影して疑似セックスを試みようとしていたなんて知った母親の心境は想像に堪えない。

息子にとって女性とのセックス、イコール母親とのセックスという図式。又は願望。

子を良識ある成人に育てるために、教育し、躾け、守っている母に対し、性的な感情を抱く故、唇を奪い、胸を弄り、尻を舐め、身体を抱き、嬲り、穴を貫きたいという欲望に犯されている息子。

母はどんな思いで、これを聞いているのか。

複雑な気持のまま、母を見た。

母は目を虚ろにし、喉の奥まで沢木のチンポを加えている最中だった。

聞こえているのだろうが、沢木の問いかけには無視の姿勢だった。

一定のリズムでフェラチオを繰り返す。

沢木の足の指に合わせて、腰も動かしている。

母は、悲しくないのだろうか。いやそん事はない。

どんどん少なくなっていく残りの時間を使って、公平君の逞しいチンポで私の身体を貫いて欲しい、今はこのことで頭の中が一杯なのだろう。

そんな母の姿を見て、途端に虚しさを覚えた。

母の性行為の一端を垣間見ていて、興奮はしている。というか、興奮しっぱなしでおかしくなりそうだった。

沢木に比して粗末な私のチンポは、ビンビンのまま充血していた。

呼吸は荒く苦しく、胸の高まりは爆発しそうで、早く母と沢木の交尾が見たくて見たくて堪らなかった。

あわよくば、私も・・・。

私も、母の中に。

このチンポを・・・。

だが、母の眼には私のことなど、欠片も映ってはいないだろう。

沢木の気持ちを下げないようにフェラをして、機嫌をよくさせインサートして貰いたい。

くそ。

くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ!

一瞬でも沢木に彼女を抱かれたことを肯定したことを悔やんだ。

そして、そんな野郎に身体を蝕まれ雁字搦めに支配されている母を憎んだ。

この売女! 雌豚!! 色情魔め!!!

・・・違う。

違う。そうじゃない。

ごめん。

ごめんなさい。

だって・・・。

だって、僕・・・。

・・・お母さん。

お母さん・・・。

お願いだから・・・。

僕を・・・。

「あいつは、彼女を抱くという行為を、母であるあんたを抱くという疑似行為にしたかったんだ。同じ名前の彼女に対して、あんたの名前を叫びながらチンコを入れたいと思っていたんだろうな。だから、その子を抱きしめる時なんか執拗に名前を連呼したらしいぜ。・・・でもね、ここからが面白いんだけどさ。・・・あっはっはっは、いかんいかん、笑けてくる。・・・いざって時にね、プププ、チンポが役に立たなくなるんだって。あっはっはっは。親子だねー。いっつも『へにゃん』ってなるんだと。だからあの子は処女のまんまだったんだってオチ。ぶあっはっはっはっは。フニャチンのくせにさ、何か強がっちゃって、『あれ、変だな・・・、疲れてんのかな』とか演技しちゃったりしてんだとよ。マヌケだねー」

沢木の言葉を聞き、母は明らかに動揺していた。咥えていた、というか口一杯頬張っていた沢木のモノに対する奉仕活動を止めて、複雑な表情をして沢木を見上げていた。

「・・・何だ、その母親のような顔は・・・。どうしたんですか? 池田君のお母さん。口がお留守になっていますよ。・・・ちゃんと、咥えて、くれないと・・・。入れられたくないのかよ! 」

オグゥ! という母の鈍い声が、私を切なくさせた。沢木は母の頭を抱え安物のオナホールのように、喉の奥を破壊せんとばかりに何度も突き刺した。顎が外れるのではないかというくらい、母の口は広げられ、乱暴に、執拗に、何度も何度も突き刺された。呼吸なんて出来ているのだろうか。その間も、沢木の足の親指は母のアソコに挿入されていた。母は白目を向いていた。

「ゴホッ、ゴホン、オエッ」と大きく咳き込むと、母は真っ赤な顔と涙で滲んだ目をしていたが、沢木を睨む事なく寧ろトロンとした眼差しを送っていた。

沢木はそんな母の思いなど気にも止める様子もなく、自身の分身を握っていた。そいつは、母に執拗なまでに舐められていたおかげで、テカテカに輝いていた。根本から天に向かって堂々と聳え立つその先は、武骨な頭首が力一杯握っている拳の様に、存在を知らしめていた。

沢木は母を立たせ抱きしめると、腰を上手にポジショニングし、インサートのタイミングを図っていた。

もう、いい・・・。

もう、嫌だ。

もう、どうでもいい、こんなこと。

何でこんなところで、母親の乱れる姿をみなければならないのか。

自分の過去も晒され、それも綺麗だった思い出も汚されて、しかもそれを得意気に語った奴が、その張本人で。

それだけに留まらず、今度は母親に手を出され、アッという間に堕とされ、性の虜にされ、一月以上経った今でもその呪縛は解けず、アソコをグチョグチョに濡らしチン○を入れられるのを今や遅しと待ち受けている母の姿を私に見せることに歓びを感じているこの男に、どうして気を許してしまったのだ
ろうか。

何で私はこんな押入れに、自由を奪われた格好でいなければいけないのか。

何でいつもあいつに主導権を握られているのだろうか。

ああああああああああああ!!!

ホント、嫌だ。

馬鹿みたいだ。

沢木がモゾモゾと穴を探しているのや、そこじゃない、とばかりに尻を振って、入れる手伝いをしている母を見て、とても阿呆らしくなった。

もう、やめようよ。

そういう意味のサインを沢木に送った。

沢木が私の視線に気づき、ウインクで応じた。

なんだよ。

笑ってんじゃねーよ。

いま入れる入れる、じゃねーよ、オッケーとかいいから。

そっか、入らないんじゃなくて、焦らしてんのか。なんか下手だな。判らなかったよ。よくそんなんで母ちゃんを堕とせたな。ああ、母ちゃんも悦んでいるのか、そっか、そういうのがいいんだ。そりゃ、良かったね。

おい、止めだ。

中止。中止。

もうそんな気が無くなったから。

早く俺を自由にしてくれ。

親父ももう起きるから。

母ちゃんもさあ、もうやめようよ。

そんな奴放っておいてさ、早く服着なよ。

いいの? 親父に見られちゃうよ。

十分楽しんだろ? さ、終わりにしようよ。

声に出す事なく、そう念じた。思いが届くだろうと思ったから。

でも、届かなかった。

沢木は母にキスをした。

キスをした、というより、唇を唇で塞がれた。

同時に、沢木の腰がアルファベットのエスの文字を描く様に動くと、彼の巨大な竜頭が母の体内にめり込んでいった。

メリメリっという音がした。

「ぐおお、お、ご、・・・お、お」

母の口から漏れた声は、快楽ではなく悲痛のそれだった。

待ち侘びた久しぶりの挿入は、一ヶ月のブランクで膣穴が縮まったことにより、母に苦痛を贈った。

母の苦悶の表情。

全身から湧き出る汗がキラキラしていて、母の姿を艶美に飾り付けた。

痛さからか、小さなお尻をピョコンと上にした母を見て、先程まで萎えて縮こまっていた私のモノが、一気に血流し、腹につかんとばかりに生気を取り戻した。

母の悲惨な状況や、ぞんざいな扱いをされる度に、私は今まで経験した事の無い性欲の高まりを、抑える事が出来なくなっていった。

こんな自分に、嫌気もさした。

「ふううん、うう、んんん、ンクっ!!!! い、ダ、ファメェ、イ、イクゥ!!! ンァ・・・」

甲高い悲鳴とともに、母の身体が二度三度痙攣した。

挿入されただけで、母はイッてしまった。

母の足は勿論、沢木の腰から下も、母の愛液でビショビショだった。

沢木は、一旦母の体から、チン○を抜いた。その場にドサリと崩れ落ちた母は、目を瞑り荒くなった呼吸を整えていた。沢木は俯せの母に覆い被さる様に乗っかった。

「一刺しでイッちゃったね、おばさん。・・・綺麗だよ。凄く綺麗。可愛いし。ああ、何かこんな素敵な姿を俺だけが独占しているなんて、勿体無いね。皆に見せてあげたいなあ。・・・そうだ、そうしようか」

背後からそう問い掛けた沢木に対して、母は答えなかった。いや、答えられなかったのだろう。

沢木は、悪戯小僧の様な顔をしていた。

「準備はいいかい、いくよ。ジャジャーン。ここで特別ゲストをご紹介します。池田君でーす」

え?

沢木はベッドから飛び降りると、私が潜んでいた押入れの襖を開けた。

全裸に俯せていた母と半裸に手を縛られていた息子が、狐につままれた様な表情で顔を見合わせた。

何が起きたのか理解出来なかった。

思考が完全に止まってしまった。

・・・なに?

母さん・・・?

・・・あれ?

あんた、いたの・・・?

私の目は、ただ母の姿を映していただけだった。

母も私を、ぼうっと見つめていた。

おそらく一瞬の事だったろうが、私たちは永い時間見つめ合っていたように感じた。

どちらともなく、我に返った。

母の高く短い悲鳴と私の驚きの叫びが、シンクロした。

『キャアッ! 』『わあっ! 』

「ひゃあはっはっはっは。ご対面だぜ。マゾ親子さんたちよ。どんな気分だい、現実を飲み込んだお味は? あはははは」

腹を抱え涙を流しながら、沢木は私ら親子を指差し、これ以上ないという高笑いを浴びせてくれた。

「さ、沢木! て、手前ー! 」

「こ、公平君! い、いやだ、ち、ちょっと! 」

母も私も、身をよじり、互いに見られたくない部分を、本能的に隠した。

沢木はベッドの上に飛び乗り、母の腰を背後から掴み「ダメダメ。隠すのはノーグッドだぜ、ママさん。息子はアンタが犯られているのを見ながら、自分のチンチンを弄りたくて仕方がないんだから。ほら、親として毅然とした態度で、俺のチン○でイク姿を見せてあげなよ」と、母の裸を私に見えやすいように強引に向かせ、同時に、奴のチン○を母の穴の入り口に『いつでも挿入できる姿勢』で待機させた。

騙された。

完全にヤラれた。

クソ!

何が親友だ。

何が母に恋してるだ。

ふざけんじゃない。

母を見ると、沢木にガッツリ腰を掴まれているのもさることながら、さ先程気をやったせいで、身体を起こすことが困難らしい。必死で離れようとしてもがいていたが、力が入らないようだ。

「沢木! テメーふざけんじゃねーぞ! こ、こんな事しやがって、どういうつもりだ!! 」

「あ? お前こそ母親の情事を覗き見しやがって、どういうつもりなんだ。・・・いけないなー。親友として忠告するけど。こんな綺麗なお母さんを泣かすんじゃないぞぅ。ひゃあはっはっはっは。ま、もっとも俺が今からこの雌豚をヒイヒイ啼かせてやっからよ。テメーはそこで小せーチン○を立たせて見てろや。あっはっはっは」

「い、いやー! み、見ないで!! 」

顔を真っ赤にして、母が叫んだ。

「か、母さん! 」

私も叫んだ。

もう、こんなクソ野郎に抱かれる母なんか見たくなかった。これ以上嫌がっている母を。・・・母を、母を取り戻したかった。

「母さん、そいつから離れろ! こんな事しやがって・・・。」

手を伸ばせない私は、精一杯上体を前方へ突き出した。が、そう叫んではみたものの、母を見ることができなかった。沢木に毒され、洗脳され、性虜にされている母を。

名前を呼ばれた。

見ると、母は右手を私に向かって、大きく伸ばしていた。

か、母さん・・・。

はは、どうだ。

見たか、沢木。

やっぱり、母は子を選ぶんだよ!

母さんは、俺だけの母さんだ!!!

「ひゃあはっはっはっは。馬鹿息子が! まだお前のママを聖母だと思っているのか! 」

沢木が母の尻をピシャリと叩いた。ヒィッ、という鳴き声をあげた母の穴に、竜頭を一気に突っ込んだ。

母の手は、二度と私に触れる事はなかった。

「アガァッ! ん、ああ、ンア、・・・グオ! 」

母の口から、沢木のモノが出てきそうなくらいだった。串刺し。長い肉棒が母の身体を何度も何度も貫く。加速度的に、力強く、母の身体に邪悪な毒を塗り込むかのように。

「アアアアッ! アアアアアアアッ! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

叫び声をあげる母の身体が、あり得ない角度に反っていた。両腕を掴まれ逃げる事ができず。何度も絶頂を迎えたのだろう、プシュープシューと音を立てながら、ベッドには母の愛液で作られた池が出来ていた。小さめのオッパイは、プルプルプルプルプルプルと小刻みに、しかも超高速に揺れていた。

やめろ・・・。

もう、やめろ・・・。

もう・・・、やめてくれよ・・・。

「止めろー! 」

「ンアアアアアアアア!! い、イグー!!! イグー!!! も、もう、や、やべでー・・・。く、ゥオ! お、おがじ・・・ぐなどぅー」

落雷を全身に受けたかのように、母の身体は硬直した。

沢木は肉棒を抜く事なく、更に挿入を続けた。

「んあん! そこ、ダメ、あ、ダメダメダメダメダメ、し、死んじゃうぅ! 」

「何だ、その手は・・・。ははは、いいんだぜ、息子の処へ戻ったって。母親面して説教してやりなよ。『いけませんよ。ママのセックスしてるとこ見るなんて! 』ってな、あっはっはっは」

私の手を掴もうと藻掻いていた母の手は空を切り、それは己の乳房を揉みだした。ぎゅぅっと力強く揉まれている乳房は、ペシャンコにひしゃげて肉マンの潰れたやつみたいだった。

突然、父の目覚ましが鳴った。

その大きなベル音は、部屋中に響いた。

そこにいる全員の動きが止まった・・・ということはなく、止まったのは私だけだった。

沢木は更に腰を動かすスピードを上げ、母は快楽の渦中にいた。

父はむくりと起きると、すぐに異変に気づいた。

半裸で縛られている息子。

全裸で四つん這いで突かれて喘いでいる妻。

突いているのは、息子の友達。

夢から覚め、目の前の光景を受け入れにくかったのだろうか、寝ぼけ眼を擦りながらそれを見つめていた父に、沢木が声を掛けた。

「これはこれは、お目覚めですか、マヌケな旦那さん。あんたが寝ている間に奥さんは何度も絶頂を迎えていましたよ。あんたのチン○が役に立たないから代わりにこの俺様が抱いてやってる訳だ。どうだ有り難過ぎて地べたを這いつくばって拝みたくなったか。あっはっはっは」

沢木は腰の動きを止める事なく、父にそう言った。

驚いたのは、父だった。

「な、何やってるんだ? 君は! 」

睡眠から覚めたばかりとは思えない程、俊敏に状況を判断するや、父はベッドから跳ね起きると、沢木に飛びかかった。

我が父ながら最高に勇ましいと思った、が・・・。

結果は、私の時と同じだった。

沢木は母を抱いたまま体をかわすと、父の腹に強烈な蹴りをくらわせた。父はそのまま吹っ飛び、壁に激突し踞まった。口から黄色いものを吐いてしまった。

「ひゃあははは、愉快だ! こんなに素晴しい夜明けはないぜ! 」

気がつけば、母は苦悩の顔から快楽の顔になっていた。涎を垂らし、目はイキ、手は自らの乳首とクリを弄っていた。聞いたことのない奇声を上げ、数え切れないくらいの絶頂を繰り返していた。

自分が招いてしまった事が・・・。

こんな惨事になろうとは・・・。

自分を恨み、呪い、悔み、罵った。

目覚ましの大音量が、母の叫び声、父の呻き声、そして悪魔の笑い声を、掻き消していた。

私は、ただ下を向いて、涙を流していた。

後悔しても仕切れなかった。

一体何がどうしてこうなってしまったのか。

押入れに入って身を忍ばせている事を了承したこと?

酔いに任せ、沢木に母との情事について煽ってしまったこと?

沢木を泊まらせたこと?

母を看病に行かせたこと?

沢木と母を会わせてしまったこと?

記憶を辿っているうちに、頭の中に浮かんできたのは家族の思い出だった。

私たちは、家族三人で幸せな日々を送っていた。

楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、辛いこと。

一緒に歓びを分かち合い、手を取り合って、支え合って生きてきた。

「アンっ! あ、アアアアアアア、いいの、いい・・・。ダ、らめ、また・・・」

「いいぜ、何度でもいきなよ・・・。気持ち良いだろうよ。息子に見られながらだと、尚更な、あっはっはっは! 」

母は今・・・、沢木と歓びを分かち合っている。

涙で目の前がぼやけていた。何か大切なものが失われようとしている・・・、そう思うと、私はその家族を傷つけている敵に向かって駈け出していた。手の自由は奪われていたが、関係ない。雄たけびをあげながら、そいつを吹っ飛ばそうと全身に力を込めた。

敵は笑っていた。

この野郎! 俺の家族に手を出すなああああああ!

敵の腰から下らへんにタックルをしようとしたその時。

目標物であった奴の足が、目の前からスッと消えた。次の瞬間、脳天に大きな衝撃を受けた。私はそのまま気を失った。

「おい、大丈夫か」

遠くから、聞き慣れた声がした。目を開けると父がいた。起き上がろうとすると、後頭部に鈍い痛みが走った。頭を押さえ呻いていると、父が「無理するな。まだ横になっていた方がいい」と私を抱え寝かせてくれた。待っていなさい、と父は部屋から出て行った。すぐにさっきまでの事を思い出した。

沢木は・・・、母は・・・。

思うが、二人は既にここにはいなかった。どこへ行ったのだろうか。動こうと思うが、頭が痛くて動けなかった。縛られていた手は自由になっており、毛布を掛けられていた。父がしてくれたのだろう。痛む頭を動かして、周りを見ると、ここは両親の寝室だった。ベッドの上は布団やら衣類やらがグチャグチャに残されていた。壁際には新聞紙が丸めて置かれてあった。父の吐しゃ物を始末した後だろうか。戻ってきた父が、「冷やすと楽になる」と保冷材をタオルにくるんで渡してくれた。ひんやりとしたそれは痛さを随分和らげてくれた。

「他に痛いところはないか。後で病院へ行った方がいい」私を気遣った言い回しをしていたが、父の顔からは生気が失われていた。

「いや、それより・・・、母さんは? 」

父は目を伏せ、黙って首を横に振った。

え、いない? どういうこと・・・。なに、聞こえない・・・。つ、連れ去られた?

父は静かに頷いた。

「これって・・・、誘拐とかになるのかな」沈黙が嫌で、妙なことを口走ってしまった。

父は又首を横に振った。

どういうこと? 連れ去られていく所をみたの?

父が弱弱しい声で、ぼそぼそと話してくれた。それは、私ら家族の崩壊宣言に等しかった。

私がタックルした瞬間、沢木は私の脳天へ踵落としを喰らわせたのだそうだ。父も腹を思い切り蹴られ動ける状態ではなかった。沢木が母に「ほら、言えよ。あのセリフ。オメー時期が来たら言うっつってたろ。今がその時期だよ」と髪の毛を引っ張りながら促すと、私・・・、公平君のチンポから離れられない。あなたがただ租チンなだけなら百歩譲って相手をしてあげなくもないけど、使用不可のインポチンポじゃ、もう嫌なの! と喘ぎ声を交えて、父に面と向かって言ったのだと。「そういうことなんだよ。糞爺。いや、男の用をなさないテメーは糞ババアかな、あっはっはっは」と、母と結合しながら抱えると、沢木はもう一度父に蹴りを入れていった。そしてそのまま、母を抱て部屋を飛び出して行ったらしい。

「な、何言ってんだよ・・・。そんなの言わされているに決まってるだろ。つ、連れ戻しに行こうよ」

ショックを悟られまいとして強気な私に、意気消沈している父。

「いや・・・、いいんだ・・・。母さんだって・・・、用が済めば帰ってくるよ・・・」

父に対してあれ程献身だった母から、面と向かって言われた言葉。異常な快楽に溺れていた最中だったとしても、話半分という受け取り方をしているのだろう。欲求不満を妻に与えてしまっていた夫であったということを、強く後悔しているという様子で、自分にそれを咎めることはできないということなのか。

「ば、馬鹿いうなよ。お、俺、母さんを連れ戻しに行くよ。多分、あいつのマンションにいるだろうからさ」

タオルを首にあてながらゆっくりと起き上がった。時計を見ると八時前だった。父はその場に立ちすくんだまま、動こうともしなかった。

「父さんはさ、仕事に行きなよ・・・。か、皆勤、無くなっちゃうよ」

父は大病をしたことも、大怪我をしたこともなかった。皆勤が自慢でもあった。この時間であれば、電車に乗らず、タクシーで直接向かえば、まだ遅刻しない筈だ。

私は無気力な父を無理やり着替えさせた。その間に、タクシー会社に電話をして、すぐに来てもらうよう手配をした。程なくしてきたタクシーに父を押しこみ、運転手さんに行き先を告げ、遅刻しないように送ってくださいとお願いした。

手がかりを探すわけでもないが、改めて家の中を見て回った。台所などは、昨日母が片づけていたから綺麗に整っていた。二階へ上がり自室に入ると、昨日の宴がまんま残されていた。
沢木の服や荷物は無くなっていた。ということは、あいつは自分のものはしっかりと持ちかえっていったのだ。やっぱり、奴は自分の家に帰ったのだろう。そういえば、母はどうやって連れていかれたのだろうか。まさか裸のまま外へ・・・ということではあるまい。一瞬、あいつならやりかねないと思ったのだが、脱衣所の洗濯かごの中に入っているはずの、昨日母が来ていた服が無くなっていたので、おそらくこれを着ていったのだろう。ちょっとだけ安堵した私は、着るものもままならないまま、自転車にまたがると沢木のマンションまで全力で漕ぎ出した。頭がズキズキ痛んだ。半分裸のような格好をしていたせいか風邪でも引いたかも知れない、体もだるかった。それでも、必死に自転車を漕ぎ、沢木のマンションにどうにか着くことができた。

着いて愕然としたのは、沢木のマンションは改築工事などしていなかったということだった。

『売却物件』という立て看板が建てられていて、住民は残らず引越していた。

マンションの入り口には施錠がされており中へ入ることができなかった。外付けの階段へ回った。こちらも使用できないようにバリケードをしてあったのだが、何とか乗り越えることができた。五階まで駆け上がり、沢木の部屋の前に着いた。ドアノブを回すと、鍵がかかっていなかった。玄関へ入ったが薄暗く、リビングはもぬけの殻。あるのは塵芥のみだった。

その日から数日間は、沢木の野郎を捕まえる事に駆けずり回った。それこそ浸食を忘れて。友達にも聞いてみたが捕まらなかった。というのも、奴は大学を辞めていたから。お前、知らなかったのか、と友達は呆れた顔で私を見ていたが、一緒の授業は無く、学食でしか会わなかったから、そんなこととは思いもしなかった。考えられる知り合いは全てあたってみた。だが、返ってくる答えは決まっていた。それならばと、子の不始末は親の不始末と思い、奴の実家にも連絡した。お手伝いさんが出て、「ご主人様は出張中でございまして、しばらく不在なのですが」というので、一大事なのです、と事情を説明し泣き落としで頼みまくったら、ようやく奴の親父にコンタクトを取ることができた。しかし「公平は勘当したから居場所なんか分からない。何か不始末があるのなら、もう成人なのだから本人に直接言って欲しい。こちらに言われても何もすることはない」と一方的に突っぱねられてしまった。

当然、警察にもいった。誘拐事件です、というと、受け付けてくれた警官はテキパキと応対してくれたのだが、経緯を説明するうちに、ああ、何だ、ちょっとお待ちを・・・、と刑事課から生活安全課の方へ回された。眠たそうな顔をした担当の方は「状況から言って、それはかけ落ちですね。まあ、捜索願を出されるのであれば、一応受理はしますが・・・」、と何とも心強い事をおっしゃって下さった。

私と父は、一度現実を受け止めることにした。

経緯や今後のことは置いたとして、母が家からいなくなったことは、揺るぎない事実だった。

それに、お互いがその原因について思い当たることがあったので、これ以上動くことが身を切られるようで辛かったのだった。

体は疲弊しきっており、精神的には崖っぷちまで追いつめられていた。

とりあえず、日常生活に戻ることにした。

二月ほど過ぎた頃、一通の封筒が郵便受けに届けらていた。差出人は母。消印は押されていなかった。中に手紙などは無く、ただ離婚届だけが入っていた。それは、既に母の綺麗な字で必要な個所は埋められているものだった。父はしばらくそれを放置していたのだが、考えに考えて、考えあぐねてからだろうか、強い決意の表情で「これ、出してくるよ」と私に離婚届を見せてきた。私は父の性格をよく知っていたから、「そう」とだけ言っておいた。戸籍から母が除籍された。感慨深いことなどなかった。ただ事務的な処理が一つ終わったということだった。

更に一年が過ぎ二年が過ぎ三年が過ぎた。

私も社会人になり、それなりに忙しい日々を送っていた。父は家事の一切ができないので、私が母の代わりを務めていた。会社員ではあるけれど、残業がほとんどないので、こんな生活スタイルも可能なのだと思う。朝は早くから起き洗濯をして食事を作り、夕方はできるだけ早く帰り、風呂を沸かしお酒の準備をして食事を作る。当初は、父の方が早く帰宅しているときもあったけど、寄り道をしてくるのか電車を遅らせているのか、今では父が無駄に待つことは無くなっていた。買い物は週に一回のまとめ買い。細かいものは会社帰りで間に合わせる。休日の午前中は、家中の掃除。おそらく母もこんな感じで家族を支えていたのだと思う。その母がいなくなって、一番寂しい思いをしているのは父だ。これ以上、不安材料を与えたくはなかった。離婚届を出してからは、父も私に気を使っているのが分かる。あれだけ寡黙で、休日になると一日中本を読んでいたのに、最近では「おい、駅前に旨そうなラーメン屋ができたみたいだぞ。お昼はそこへ行ってみるか」なんてチラシに付いてるクーポン券を手に持ち、私の部屋に来ることもあった。

秋に入ったある日、帰宅して郵便受けを見ると分厚い封筒が届いていた。宛名は私。差出人は・・・、「沢木公平」と記されていた。消印は、北海道だった。

その名前を見た瞬間、全身に悪寒が走った。忘れようとしていたあの忌まわしい出来事が、せせら笑う悪魔の手によって、私の記憶の引き出しをこじ開けられ、無理やり引っ張り出されてきた感じだった。中には手紙と大量の写真が入っていた。その場で読みたい衝動を抑え、家の中へ入った。封筒を自室の机の上に置いた。スーツを脱ぎネクタイを外しシャツと靴下を部屋の隅にある洗濯かごに入れた。着古しているトレーナーとスウェットの部屋着に着替えた。気持ちを落ち着かせるために、わざと階下へ下り湯を沸かして、お茶を入れた。一口啜ってから、湯呑みを持ちまた自室へ向かった。椅子に座り机の上の封筒から手紙を取り出した。手紙はパソコンで書かれたものではなく、手書きだった。母の字ではない。おそらく沢木の自筆だろう。

『やあ、大学時代一緒だった沢木という者です。覚えていますか。毎年仲間と旅行をしているのですが、この夏は北海道へ行って来ました。君は行ったことが有りますか。広大な土地、何処までも続く地平線、青い空、新鮮な牛乳や海の幸、ホクホクとしたじゃが芋、そしてビールにジンギスカン。大自然の恵みに囲まれていると、人間も自然界の一員だということを実感させられます。是非一度行って御覧なさい。少ないけど、写真を送ります。北海道の大自然の御裾分けだよ。土産代りだが、ありきたりの例のつまらない菓子折りなんかより、余程気が利いていると思わないかい。これを見ながらウットリとした顔で頬杖をついている君のことが、容易に想像できるよ。いや失敬。変な意味ではないのだよ。みんな気の合う仲間たちばかりで、本当に楽しく素晴らしい旅行だった。ひょっとしたら知っている顔もあるかもしれないな。僕の古くからの仲間ばかりだからね。君も参加したつもりで、写真を見るといい。長くなったけど、健康に気を付けて、頑張ってくれたまえよ。     湖畔の宿にて   沢木公平』

写真は、三、四百枚は入っていただろうか。確かにそれには、美しい風景も十数枚は入っていた。しかし、ほとんどが人物写真だった。口髭を生やした沢木が、輪の中心にいることは、写真を数枚見ただけで、良く分かった。沢木の他にも大勢がこの旅行に参加していた。アングルや枚数から想像すると、基本的には沢木がシャッターを切り、所々誰かが沢木を撮ってくれているようだった。総人数は二、三十人か。仲間内の旅行にしては、かなりの大所帯だろう。しかも殆どが女性だった。男性は沢木の他に数名。大学時代に沢木の取り巻きだった奴もいた。まだ付き合いがあったんだ。

パラパラっと全ての写真を見た感じから受けた印象は、大学のサークルの旅行みたいな感じだった。初日の集合から、交通機関での移動、目的地に着きそれなりのイベントをこなす様子や、旅館やホテルというよりは、ロッジや民宿のような宿での宴会模様。テレビや本などで見たことのある観光名所に行っているものや、地名は知らないが雄大な自然に触れているところ、釣りやバーベキューを楽しんでいるところ、夜は真っ赤な顔で酒を酌み交わしていたりと、まあ、そんな感じ。

分かってはいたことだったが、その中に母がいた。久しぶりに見る母は、やはり綺麗だった。

あの日以来、母が我が家から去って行った日、私は母を性の対象にしている。それ以前からもそうしつつあったのだが、今は完全に一人の麗しき女性として見ている。母の残して行った荷物は、衣類から化粧品、食器やハブラシなどの日用品に至るまで全て取って置いてある。一度、父が処分しようと言いだしたが、了承したフリをして、上手に段ボールに収納して私の押し入れにしまってあるのだった。父が寝静まった後などに、こっそりとその段ボールの中から、母の普段着や下着などを取り出し、ベッドに並べて、あの沢木に嬲られていた母を思い出しては自慰行為に耽っている。母がよそいきの時にしか使っていなかった口紅などは、私の性器に塗ったり舐めたりしていたので、私の方が使用頻度が高い位だ。アルバムの中にあった母の写真は、全てパソコンに取り入れてある。若かりし頃の母から、我が家にいたときまでの母を、ほぼ毎日見ている。さっきお茶を入れた湯呑みも、実は母が晩年使っていたものだった。父は、それを母が使っていたことなど覚えていなかったので、私のものとして日常に使用しているのだった。

写真の中の母は、元気そうだった。

他の女性を見渡しても、おそらく最年長者には違いないが、若さを保っていた。どの写真にも大抵母が写っていることから、姉さん的な存在なのだろうか。集合場所で、若い人たちに声を掛けている写真。おそらく「何やってんの。集合時間過ぎてんだよ。早く来ないと置いて行くよ! 」といっているのだろう。そんな口をしている。移動のバスの中では、沢木の隣。奴にビールの缶を手渡したりしている。「ほら、あんたも飲みなよ。若いんだから」そう言って若い兄ちゃんの肩をポンと叩いている写真。兄ちゃんは口からビールを吹き出している。周りがおしぼりかなんかで拭こうと慌てている。牧場では、腰に手を当てて牛乳を一気飲みしている。牛乳が気になるのか、目は下を向いているのに口は上にとんがっている。周りはその顔に指をさして笑っている。沢木にジンギスカンを食べさせている写真。そう言えば、沢木が右手を怪我している時に母が食べさせてあげていると聞いて、嫉妬したな。そうか、こんな風にして、食べさせてあげていたんだ。海にも行ったのか。浜辺には沢山のテントが並んでいる。テントの中で、これから着替えようとしているのか、ジーパンのチャックに手を掛けている母の写真。怒ったような顔をしているが、本気じゃないのはよく解かる。細身のジーパンを穿くようになったんだ。前はもう少し、緩い感じのパンツ姿だったのに。次の写真は、衝撃だった。母の水着姿。黒いビキニが眩しかった。どこを見ているんだろう。髪をかきあげ、まじめな顔で遠くを見ている。別にポーズをとっている訳ではなさそうだ。偶然の一枚か。お尻がエロすぎる。尻肉のはみ出し具合が、私のドストライクだ。お腹が少し出ていた。良いもの食ってんだろうな。心なしか全体的に丸みを帯びたというか、太ったというか。いや、それでもまだまだ、他の女性よりは細身なのだが。三年前のあの日見た母の裸体は、当然私の記憶に深く刻み込まれていた。しかし、どんな人間でも何年にも渡って記憶時完全再生を維持していく事は不可能に近い。母を思い自慰行為をする為、何らかの動画を見たり画像を見たり、それを想像上での母に照らし合わせてフィニッシュを繰り返しているうちに、果たして私が思い出している母の裸体は、本当にこうだったのか、という疑問が湧いてきた。騙し騙し、薄れていく思い出で行ってきた想像自慰。そこへ来ての水着姿の写真。狂喜乱舞する気持ちも分かるだろ。海での写真はどれも良かった。砂浜でスイカ割りというベタなことも、焼きトウモロコシを齧り付いているのも、水際で海水を皆で掛け合っているのも、疲れてパラソルで寝ているのも、どの写真も水着姿の母は、エロチックだった。他の女性も魅力的で、綺麗な人や可愛い人も大勢いるが、母には叶わなかった。宿に戻り、御馳走を肴に酒宴をしている。総じて言えることは、みんなが心底楽しんでいるということ。腹のそこから笑い、旅行を満喫している。仮に、私が仲間と旅行へ行ったとして、果たしてこんな笑顔をするだろうか。そんなことを思いながら、残り少ない写真を見終えようとしたその時。

誰かが、母を指さしている。その様子から、『ええ! 嘘。聞いてない。聞いてない』とはしゃいでいるように見える。

次の写真では、Tシャツを捲くって、お腹を見せている母が。

あれ?

まさか・・・。

嘘だろ・・・。

次の写真。

数人が垂れ幕のような、長い布のようなものを持ってきている。そこには、みんなからのメッセージが書かれていた。

ああ・・・。

そ、そんな・・・。

『Congratulations Pregnancy 公平パパ&○○ママ』

祝福の拍手。

花束の贈呈。

サプライズな演出による祝宴。

感極まって泣き出す女の子。

一緒になって泣く母。

沢木に頭を撫でられながら。

みんな顔をクシャクシャにして喜んでいる。

代表者が品物を渡す。

中から可愛らしい真っ白な衣装が。

母が涙を拭きながらお礼をする。

温かい拍手。

沢木と母を中心にした集合写真。

沢木は母のお腹を指さし笑っている。

母も片手にプレゼントを持ち、片手でピースなんかしている。

写真を見ながら、涙が止まらなかった。

私が『母』と呼ぶのは、もうやめなければいけないんだね。

幸せそうな母を、私は頬杖を付きながらいつまでも眺めていた。鼻水を啜りながら。

引用元サイト:ナンネット
引用元掲示板:禁断の木の実 > 母寝取られ

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