転職の悲劇


昨年の4月に中途で東北大学卒の美女が情報システム部に入社した。
「凄い美人が情シスに居るんですよ!」
当時、新卒一年目だった健太が研修で一緒だったとかで最初に熱を上げた。
「へえ。そんなに美人なんだ。じゃあ顔を拝んでやろうじゃないか」
会社にもよるだろうが、いわゆる社内SEと言われる職種は当社では雑用係りのようなものだ。
村松は健太が惚れ込んだエリート女に営業との力関係を見せつけてやることにした。
「LANが繋がらないから見て欲しいんだけど」
直接彼女に内線をかけて呼びつけた。
初めて見る彼女は理知的で正統派の美人だったが、慣れない職場でストレスが激しいのか、
近くで見ると肌もボロボロでせっかくの長い黒髪も充分に手入れが行き届いていないように見えた。
村松は女の美貌を判断する時、肌の滑らかさを重要視する。
だから、正直なところ、あまり彼女に興味を持てなかったが、
健太をはじめ大勢の営業マン達は唾を飛ばしながら彼女の美貌を大絶賛している。
国立大出の理知的な顔がスケベなアへ顔に変わるところを見てやるのも悪くないか。
そんな良からぬことを考えた。
「なんかさっきの人、この会社の女はバカばっかりとか言ってたけど、何様のつもりなんだろ」
彼女が自席に戻った後、すぐに村松は独り言の様に言った。
案の定性格の悪い営業事務職のオバちゃんが食いついてくる。
「それ、私も思った。情報リテラシー?とかなんとか、えっらそうに」
「え?テレパシー? なんだか分からないけど、それ、酷い!」
あっという間に「新しく情シスに入った女、知的ぶってて偉そう」という噂が社内中に広まった。

続きは http://misa770.blog.2nt.com

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