働けなくなった僕の代りに、嫁がレンタル妻を始めました


「それって、家政婦とは何が違うの?」
僕は、嫁に質問した。嫁が提案してきた話は、僕の知識では一発で意味が理解出来なかった。

僕が職場の人間関係で心を病んでしまったことで、経済的に苦しい状況になってしまった。僕の実家も嫁の実家も色々と助けてくれてはいるが、将来のことを考えると気持ちは暗くなる一方だった。

そんな日々が続く中、嫁がパートをやめてフルで働くと言い出した。嫁は、IT系の小さな会社の受付のような事をしていた。そこそこ給料も良かったが、結局パートなので生活が成り立つほどではなかった。

嫁が提案してきた話は、パート先の社長さんが個人的に始めた事業で、レンタル妻というような内容のものだった。掃除洗濯はもちろん、食事を作ったり家事のいっさいをするという感じのものだ。ただ、日給が驚くほど高く、僕は戸惑っていた。

『うん。家政婦みたいなものだけど、本当の奥さんがするようなことも全部するって言う内容なんだ』
嫁は、少し言いづらそうに説明をする。
「全部って?」
僕は、まだ意味がわかっていなかった。
『うん。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり……』
嫁は、言いづらそうだ。僕は、やっと意味を理解した。そして、当然のことながら反対した。少し口調も強くなっていたと思う。

『でも、私が働ける場所なんて、パートくらいしかないよ。資格もないし……』
嫁は、なぜか申し訳なさそうだ。嫁の有美は、資格を持ってはいないが、とてもルックスには恵まれている。どうして僕なんかと結婚してくれたのかな? と、思うくらいに可愛いと思う。

僕は、さらに反対を続けるが、申し訳ない気持ちも大きくなってきていた。僕がこんなことになってしまったばかりに、有美を追い詰めてしまっている……。僕は、謝りながら、僕もちゃんと頑張ると告げた。

『無理しちゃダメだよ。だって、死にたくなっちゃうんでしょ? 絶対ダメ。ヒロ君がいなくなったら、私も生きていけない』
有美は、そんなことを言ってくれる。でも、どんな形であっても、有美が他の男性と夫婦のように生活するなんて、絶対に耐えられない。

僕たちは、長い時間話を続けた。そして、半ば押し切られるように、有美が詳しく説明を聞きに行くことに同意した……。有美が聞きに言っている間、僕は色々と考えてしまった。そして、その仕事のことも調べた。でも、情報はほとんど出てこなく、表の商売ではないのかな? と、感じた。

どちらにしても、僕は反対するつもりだ。有美のような美しい女性がレンタル妻として家にやってきたら、絶対にセックスをしようとするに決まっている。そんな事をさせるつもりはない。

帰ってきた有美は、
『そんなに心配しなくても大丈夫だと思う。お客さんは、ほとんどが奥さんに先立たれた年配の方ばっかりで、その……エッチなことになる事はほとんどないんだって』
と、報告してきた。僕は、ほとんどないって言うことは、少しはあるって事だよね? と、質問した。
『……うん。でも、やってみたいな。ヒロ君に、お金のことで心配させたくないから』
有美は、そんな風に言う。僕は、自分のせいで有美にこんな苦労をかけていることに、申し訳ない気持ちで泣きそうになってしまった。

そして、1ヶ月ほど色々と話し合った結果、有美はそこで働くことになった。最初の日、僕は心配で仕方ない気持ちだった。でも、帰ってきた有美は、明るい顔で報告をしてきた。掃除や洗濯をして、色々と話し相手になる感じだったそうだ。
『心配しすぎだったね。考えてみたら、そんなにお金払える人だったら、他にいくらでもそう言うこと出来るんだもんね』
有美は、そんな風に言う。

僕も、なるほどと思った。給料が高いと言うことは、当然利用者が支払う金額も高いはずだ。そんなお金を日常的に払える人ならば、いくらでもセックスの相手を確保出来るはずだ。

僕は、やっと安心した。そして、有美のレンタル妻生活は始まった。お金の心配がなくなり、目に見えて明るくなった有美。僕も、有美の明るい笑顔に癒やされる日々を過ごしていた。でも、ある日突然、
『ゴメンね、明後日まで3日間泊まりになっちゃうんだ。めったにないみたいなんだけど、お給料凄くもらえるみたいだから……』
有美は、少し申し訳なさそうに言う。僕は、泊まりがあるとは聞いていたが、まさか3日間も帰ってこないとは思っていなかったので、心配する気持ちが大きくなってしまった。
でも、僕はなるべく明るい顔で、僕のことは大丈夫だから無理しないでと言った。
『うん。頑張ってくるね』
有美は、そう言って家を出た。働きもせず家にいる僕……。文句を言う資格もないと思う。でも、さすがに泊まりは心配になってしまう。

働いている間は、基本的に連絡は取れない。そういう契約だ。本当の緊急時は、会社の方に連絡をするシステムだ。僕は、3日間、身が焦がされるような時間を過ごした。

『ただいま! ゴメンね、寂しかった? 私も寂しかったよ』
有美は、そんな風に言いながら戻ってきた。見た感じ、特に変化はない。心配しすぎだったかな? と、思いながら彼女を出迎えた。

いつもよりも、少しおしゃべりになっている有美。僕は、まだ不安を感じていた。そして、どんな感じだったのかと質問した。
有美は、いつも通りの感じの説明をする。僕は、一緒に風呂に入ったりしたのかと聞いた。
『う、うん。でも、水着着てだよ! 裸は見られてないから!』
僕は、一気に不安な気持ちになり、本当に水着を着て入ったのかと聞いた。
『ホントだよ。ちゃんと用意してくれてたから……。本当にそれだけだよ』
有美は、そんな風に説明をする。僕は、強いショックを受けながらも、僕が文句を言える立場ではないなと思い出していた。有美は、申し訳なさそうに何回も謝ってくる。その態度からも、本当にそれ以上のことはなかったんだろうなと感じた。

僕は、どうしてこんなことになってしまったのだろう? どうして有美がレンタル妻なんてしているのだろう? そんなことばかりを考えて、落ち込んでしまった。でも、僕が病む前に稼いでいた額よりも稼いでしまっている有美に、何も言えない自分もいる……。

有美は、毎週のように泊まりの仕事をするようになってしまった。
『ゴメンね。断りづらくて……。なるべく泊まりはないようにお願いしてみるね』
有美は、本当に申し訳なさそうに言う。でも、僕は気にしないで泊まりの仕事も入れて良いと言った。正直、泊まりの仕事の給料がとんでもなく高額なので、それに目がくらんでしまっている部分もあると思う。

お金の心配をしなくて良いと言うことが、こんなにもストレスを軽減してくれるとは思っていなかった。そして、すっかりとこの環境に慣れてしまった僕もいる。

そんなある日、久しぶりに有美とセックスをした。いつも疲れてすぐ寝てしまう有美が、
『ヒロ君、いつもゴメンね。仕事も慣れてきたから、もう平気だよ。ねぇ、……久しぶりに、しない?』
有美は、恥ずかしそうに誘ってきた。僕は、大喜びで彼女に抱きついた。すると、すぐにキスをしてくる有美。僕は、飛び込んできた彼女の舌に舌を絡ませながら、細い身体を抱きしめた。

夢中でキスをしながら、どうしてこんなに積極的なのだろう? と、思ってしまった。僕は、そんな気持ちを持ちながらも、いつものように彼女のパジャマを脱がせていく。細いウェストに、小ぶりでも形の良い胸。本当に、綺麗な身体をしていると思う。
この身体を、他の男に見られてしまったのだろうか? 本当に、水着を着ていたのだろうか? 僕は、嫉妬でおかしくなりそうだった。

そして、いつもよりも少し荒っぽい形で彼女を抱いた。
『ヒロ君、すごいっ、あっ、ダメぇ、うぅっ、あっ、あんっ』
有美も、いつもよりも感じているようなリアクションだ。僕は、いつも以上にあっけなく射精してしまいそうになり、動きを緩めた。
『疲れちゃった? じゃあ、交代するね』
有美は、そんな風に言うと僕と体制を入れ替え始める。そして、騎乗位になると腰を動かし始めた。僕は、驚いていた。こんな風に、有美が上になったことがあっただろうか? 僕は、異常にドキドキし始めていた。
何か、有美に変化があったのではないか? 僕は、悪い想像を膨らませてしまう。でも、全裸の有美が他の男と一緒にお風呂に入っている姿を想像した瞬間、あっけなく射精してしまった。

射精した途端に冷静になった僕は、興奮しすぎてコンドームをつけていなかったことを思い出した。そして、慌てて謝る。
『大丈夫だよ。それに、そろそろ子供欲しいな……』
有美は、そんな風に言う。僕は、今は働いていないので、しっかりしないといけないなと思った……。

ただ、有美のセックスの仕方が変わったことが、僕に暗い影を落とし始めていた。そして、考えれば考えるほど、レンタル妻というモノが異常に思えてくる。実際は、どんなことをしているのだろう? そんな疑念で、おかしくなりそうだった。

結局僕は、有美がどんな風に働いているのだろうかと調べることにしてしまった。と言っても、普通の方法では調べようがない。僕が考えた方法は、有美のカバンにカメラを仕込むことだった。
有美が仕事に持っていくカバンは、結構使い込んであるタイプだ。ごく小さな穴が開いていても気がつかれないと思う。僕は、前の職場でのスキルを生かして、カバンの持ち手部分に小さなカメラを仕込んだ。

僕の代りに働いてくれている有美を裏切るようで心苦しいが、どうしても気になってしまって止められなかった……。
一泊の仕事を終えて帰ってきた有美。いつものように、
『ゴメンね、寂しかった? 私もだよ~』
と、申し訳なさそうに言ってじゃれついてくる。僕は、お疲れ様と言いながらも、カメラのことがバレていないかドキドキしていた。

有美は、とりあえずカメラには気がついていなかったようで、いつも通りの感じだ。手早く夕ご飯を作り、楽しそうに話しかけてくる。僕は、有美の明るい感じを見て、何もなかったんだろうなと思うようにしていた。

そしてその夜、有美はいつものようにあっという間に寝てしまった。疲れ切っているのか、軽いいびきも聞こえる。僕は、有美が熟睡したのを確認して、そっと寝室を抜け出した。

有美のカバンから取り出したカメラの動画を確認すると、当然のことながら移動中の映像が映る。常時録画で48時間はバッテリーが持つようにバッテリーも増設してあるし、マイクロSDカードも512GBのものにした。
自分が働いていないのに、こんな物にお金を使うことに罪悪感は感じた。でも、気になってしまったことは確認せずにはいられない……。その性分が、心の病に発展したのだと思う。

移動の場面を早送りしながら確認していると、有美は電車を降りてタクシーに乗った。タクシーに場所を告げる有美。僕でも知っているような、住宅街として人気のある地名だ。高級住宅街と言っても良いエリアだと思う。

そして、タクシーを降りた有美。一軒家に近づいていく。見た感じで大きな家とわかる家だ。インターホンを押して会話をする有美。すぐに門扉のロックが解除されて中に入っていく。

『お邪魔します。お待たせしました』
有美は、そんな風に言って部屋に入っていく。
「有美ちゃん、こんにちは。よろしくお願いします」
そんな風に挨拶をしてきたのは、思いのほか若い男性だった。おそらく、40代後半くらい。早くも、妻に先立たれた年配男性というイメージが崩れてしまった。

『フフ。あらたまってどうしたの? なんか、初めの頃思い出しちゃった』
有美は、いきなり砕けた口調で言う。そして、声が消える。カメラは下駄箱を映しているだけで、二人の姿は映っていない。
『ダ~メ、それは後で。そんなに焦らないの』
有美が、おどけたような口調で言う。
「だって、キスしたらこんなになっちゃったよ。少しだけしてくれる? お願い!」
甘えたような口調で言う男性。僕は、この時点で絶望感しか感じていなかった。聞いていた話とはまるで違う……。

『え~? 仕方ないなぁ。じゃあ、少しだけ』

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