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アネモネ 2


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 平成も終わりに昭和の終わりの頃の話をするのも「なんだかなあ」ですが、いやならスルーしてください。
 「ナイ〇ですよ」
が流行語〇賞だった某年4月、マンモス大学卒の私がUターンで就職したのは地元の企業でした。
 「さとみさん。えむお君のことよろしく頼むわね」
と上から言っているのは、スッピンは今や都市伝説の文子さんです。
 「お〇んこしてえんだっぺ」
 机の上を雑巾で拭きながら
 「アネモネ」
と私に話しかけてきます。
 『いいから早く机空けろよ』
 文子さんの机が今日から私の職場になるので。
 「アネモネって花ですか」
 「姉もねえ」
 ぷっ
 さとみさんがちょっと吹きました。
 「お世話になります」
 「お世話はちょっとできないわね」
 ちょっと厚めの唇が魅力的なさとみさん。
 聞けばすでに3人子持ちの30歳。

 『若い子。若い子はいないのか』
 入社初日から断末魔の叫びをあげる私。
 そんな絶望的な日々の中で一年が経ちました。
 「お願いします」
 ふりかえればさとみさんにお願いしてばかりいました。
 「高くつくわよ」
 そんな捨て台詞を残してさとみさんも異動してしまいました。
 代わりに美〇子さんが担当部署に配属。
 まじめな方でした。
 毎朝早く来て机の上の雑巾がけをしてくれた。
 「これってあなたのしごとよね」
 とか嫌味を言われたこともなく。
 それと恵子さんという30半ばの人妻さんも配属になりました。
 電話が遠いのか身をかがめて受話器を取ろうとするときお尻を上げるしぐさを見逃しているわけではないのですが、当時は熟女などという言葉はなく、スルーしていました。
 そんなある日、元ちゃんという♂社員が尾瀬へキャンプに行かないかということになりメンバーを募っていました。
 「えむお君もいきましょうよ」
 「太っているから山歩きはパス」
 でもいつもお世話になっている美〇子さんの誘いなので参加することにしました。

 5月の末でした。
 金曜日の夕方車に分乗して尾瀬に向かいました。
 島田さん(♂)の車には私と島田さんの二人だけでした。
 元ちゃん(♂)の車には、美〇子さんと恵子さんが乗っていました。
 山のふもとにある小さいキャンプ場。テント二つを立てるともういっぱいでした。
 バーベキューをやりながらビールの酔いも回ったところ気が付くと島田さんと恵子さんがいません。
 何気に木立の中に入っていくと立木にセミを発見。
 大きなセミが交尾していました。
 バーベキューに戻ると今度は、元ちゃんと美〇子さんがいません。
 テントの中でまたセミを発見。夏の盛りのようにセミが鳴いていました。

 翌日は死ぬほど歩かされました。
 帰りに寄った露天風呂の休憩所で偶然文子さんとバッタリ。
 「〇〇〇〇したの。心配で来て見たのさ」
 「ありがとうございます。こんな遠くまで来ていただいて」
 スッピンの文子さんが意外にもかわいいことに気づかされたことだけが唯一の救いでした。

 

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