妻を常務に預けてしまった(5)


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 妻を常務に預けてしまった(5)

 妻の雅美は、旅行から戻って常務を愛しているように思えた。雅美も悩んでいた。幾ら財産が貰えるからと言って常務の子供を妊娠することに少なからず抵抗を持っていた。旅行からはピルも服用していなかった。その後のセックスは生で行い膣の中に出している。妊娠は時間の問題のように思えていた。

「雅美、俺のDNAを後世に残してくれ、お願いする。癌が進行している。雅美とセックスできる期間も残されていない」
 常務が涙を零しながら雅美に訴えた。その涙には抵抗できなかった。
「私、常務の子供を産みます。妊娠させてください」
「妊娠するように頑張ろう」
 二人は、抱きあって身体を重ねていた。常務も生きて来た証を残すために最後の奮闘を御粉っていた。

 私にも常務から内線があった。常務の部屋に入ると常務が土下座した。
「君には不服かもしれないが雅美が妊娠することを許してくれ。俺の残された命は僅かしかない。俺の血の繋がった子孫を後世に残して置きたい。俺が愛している雅美に産んで貰いたいのだ」
「雅美は、承知したのですか」
「雅美は、承知してくれたが主人が心配だと言っていたので-----その代り、俺の全財産を君達に相続する」
「----常務、椅子に座ってください」

「解ってくれたか---ありがとう。ありがとう----もうすぐに弁護士が来る」
「弁護士が----」
「俺の財産を君達に譲渡する段取りをしてくれる弁護士なのだ」

 ドアがノックされた。
「高見と申します。常務、身体は大丈夫ですか」
「医師からは恐らく半年と言われた。俺はいつ死んでも良くなった。この間、話したように雅美が妊娠したら私の財産を雅美夫婦に譲渡するようにして貰いたい」
「譲渡すると譲渡の税金が50%になります。ここは雅美さんに書類上だけ離婚して貰い、妊娠、出産まで待ちます。配偶者は財産の1/2を相続する権利が発生します。無駄に税金を支払うこともないです」
「ご主人、私の話に納得して貰えますね」
「解りました。お願いします」

 その一週間後に書類上で離婚した。雅美夫婦は、その日からマンションを解約して常務の屋敷に転居した。昼間は夫婦で生活しているが夜になると雅美は常務の寝室に行った。妊娠するべく常務と毎夜に渡り交わっていた。

 その2ケ月後に雅美が妊娠した。雅美が妊娠した時の喜び方は尋常ではなかった。妊娠したことを悦んだ翌日から体力が低下していき、入院した。後半年の命と言われていたが彼は頑張っていた。雅美が女の子を出産した。出産した翌日に赤ちゃんを常務に見せに行った。常務は涙を流して喜んだがその翌日に亡くなった。出産を心待ちにしていたのだろう。赤ちゃんの顔を見ることができて死去してしまった。

 雅美は、常務の館林と婚姻していたが相続を終えると弁護士が私の河野性に戻してくれた。その翌年に3人目を出産した。男の子であった。館林常務から相続した資金で10階建てのマンションを建設した。私は会社を退職してマンションの管理人になった。雅美は3人の母親になったが元気に母親として格闘している。

 雅美は妖艶になった若い時代があつたが、今は主婦として忙しい日々に埋没している。これも人生なのである。     完

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