村境の道端に祀られる「道祖神」には兄妹結婚の伝承が

     
塞の神は集落の入り口にあって外部から邪霊が侵入することを防ぐ神で、現在でも、村境の道端に小祠で祀られているのをしばしば見かけることができる。
この塞の神は中国の道の神「道祖」の観念と習合して「道祖神」とも呼ばれ、村落の入り口だけでなく、峠や橋のたもとなど交通の切所に祭られ、旅人の道中の安全を守る神とされている。
また、この塞の神はしばしば男女二体の像で表され、夫婦和合の神であり良縁・安産・子育に霊験ある神ともされている。
そして、その男女は夫婦であり、しかも兄妹であるとされている。

大島健彦氏は、塞の神にからんで伝えられている兄妹結婚の民間伝承を全国にわたって採録しおり、その数は八十五例以上にのぼるが、それらの幾つかを記す。

 (a)群馬県勢多郡粕川村月田
 美男美女の兄妹がいた。
二人はそれぞれに、夫婦となるにふさわしい相手を探すために国中を歩き回る。
二人がいずれも探しあぐねて再び家に帰って来た時、求めていた相手というのは、実の兄であり、実の妹であることに気付く。
そして、兄妹は夫婦となった。

 (b)栃木県上都賀郡栗野町上粕尾・下粕尾
兄妹がいた。
二人とも性器が大き過ぎて誰とも合わないので、相手を探すために、それぞれに諸国を歩き回ったが、結局どちらも良い相手が見つからなかった。
そこで、兄妹同士で合わせてみたら、うまく合ったので夫婦になった。

 (c)岐阜県吉城郡宮川村中沢上
ある双生児の兄妹がおり、兄は旅に出て行き、妹は女郎になる。
幾年か後、兄が旅先で女郎を買いに行き、美しく気立ての良い女郎を見染めて通いつめ愛し合うようになり結婚を約束した。
しかし、身の上話で二人が双子兄妹であることを知り、二人は渕に身を投げて心中した。
その後、この地方では双生児が生まれると、二人を別々に育てて後に夫婦にしてやると云う。