お尻叩きする家


小学六年生の時、近所の親戚の家へ遊びに行ったら、たまたま二つ違いの従妹が母親からお尻を叩かれている最中だった。

「何したん?」
「宿題終わったって嘘ついて遊びに行こうとしたんよ」
「へぇ」

そっけなく返事をしたもののじつは僕も宿題をやらずに遊びに来ていた。
怒られると思って何も言わなかったが、従妹はお尻を叩かれすぎて悶えていてそれを黙って見ているのにも後ろめたさがあった。

「僕も、よくやってるけどなぁ」

従妹を庇うつもりで余計な一言を言ってしまった。

「そうなん?今日はちゃんと宿題終わってから来たん?」
「えっ、と…」

結局すぐにバレてしまって「じゃあ終わったら次はアンタやな」と言われた。
この母親のお尻叩きはとにかく強烈な威力で、僕も叱られて何度か喰らった経験があるのだがそのたび泣かされていた。

「はい、じゃあ交代して」

母親の太ももからようやく下ろされた従妹のお尻には掌のあとが一杯ついていてすっかり腫れあがっているのがわかった。
数十発じゃ、あんな風にはならないよなと思いながらすぐに僕の順番。

「もう今年六年生か」
「うん」
「じゃあ、ちょっとやそっとじゃ痛くないね?」
「えっ…」

お尻叩きはなんと二百発に決まった。
しかもパンツを下ろされた状態で直の痛みに耐えねばならなかった。
ちなみに今までされたのは、最大でも五十発ほど。
僕にとってはとんでもない数だった。
従妹はさっきまで叩かれていたのに僕がお尻丸出しにされると黙ってこちらを見ていた。
バチンバチンとお尻叩きが始まると、僕は痛さのあまり二十発ぐらいで母親に許しを請うた。

「大袈裟ねぇ、六年生でしょう?宿題してない方が悪いのに」

平手打ちの威力は緩まず、むしろ弱音を吐いてしまったことで根性見せなさいと数段強まったようにも思えた。
バチバチ打たれるたびに腫れていくお尻はやがて感覚を失い、七十発を過ぎるころからは正直あまり痛みを感じなくなっていた。
だから何とか耐えられたのだと思うが、序盤の痛みのまま二百発打たれていたらと考えるだけでもゾッとする。
と言うか、二百って。
子供のお尻ペンペンなんて、百発ぐらいが上限じゃないのかよとあの時の母親に言いたい。

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