コロナ禍での贈り物➄


前回:  コロナ禍での贈り物④

正面に座ったTさんの顔を見ると、澄んだような表情でいつにも増して綺麗でした。
まるで美人女子アナを思わせるような人と2人でいることに、私はドギマギしました。
そして、ニットのサマーセーターの大きな胸の膨らみを見て、
モニター越しに見たTさんの生オッパイが頭に浮かびました。
沈黙が少し続きました。
Tさんは話を切り出しずらいようでした。
WEBカメラが少し動いただけで、私が見ていた?とは聞きずらいのでしょう。
私が逆の立場だったら、単なる勘違いかな?と思うようなレベルだと思います。
悩んでいるようなTさんの表情を見て、いつも明るく親切に接してくれているTさんの表情が頭に浮かび、なんだかTさんが可哀そうになって来ました。そして罪悪感のようなものを感じました。

沈黙が続いた後、Tさんは覚悟を決めたようで話を切り出しました。
’その・・・、私オンライン環境に疎くて、講習の後にモニターを切るのを忘れていたようなんだけど・・・、こ、こちらから私の方が・・その・・見えっぱなしになっていたということはなかったかしら?’
普段はいかにも頭が良さそうなハッキリした口調のTさんが、しどろもどろに言う姿に私は不憫さを感じました。
’何も見えませんでしたよ、気づきませんでした。’とウソを言えばその場はしのげたかもしれませんが、苦悩しているような表情のTさんの前で咄嗟にウソを言うことができずに、少し沈黙となってしまいました。
焦った私は’す、すみません・・・’と自分の本心に沿った言葉を返してしまったのです。
その瞬間。Tさんは目を大きく開き、顔がサッと赤くなりました。
’えっ!み、見えてたの?もしかして、高橋君・・・見てたの?’
’・・・’
’み、見てたのね!!’
'すみません・・・’と私は頭を下げました。
’やだやだっ、どうしよう~、う、うそでしょっ・・・’
Tさんはこれ以上は赤くなることができないほどの真っ赤な顔になり、
今まで見たことがないような取り乱し方をしました。
’いや~、うそ~’
普段は落ち着いた雰囲気のTさんが、動揺して何回も座る位置を直してしました。
’すみません。本当にすみません。Tさんが画面に映っていたからつい・・・’
’え~、やだやだっ、ど、どのぐらい見てたの?さ、最初から?’
’・・・・’
’講習が終わってから・・ずっと?その・・ま、まさか・・さ、最後までずっと見てたの?’
'私はその時、下を向き、言葉を発することができませんでした。
’やだやだやだっ、さ、最後まで見てたの~、うそでしょう~’とTさんは絶句しました。
’ご、ごめんなさい・・’
’え~ん、ど、どうしよう~’
Tさんは、両手で真っ赤になった顔を覆い、机につっぷしました。
’うそでしょ~’
Tさんの断末魔のような声が聞こえました。
肩を震わせて狼狽する姿は、いつもの清楚で聡明な態度とは非常に対象的でした。
無理もありません、いつも身近で接している年下の私に、
たぶん女性として最も見られたくない行為の一部始終を見られてしまったのですから。
しかも、一糸まとわぬ生まれたままのフルヌードでしてるところをです。
’え~ん、私、どうすればいいの・・・’
’・・・・’
'え~、うそでしょ~。’
Tさんは同じ言葉を繰り返し、ため息を何度もつきました。
’高橋君、わ、私・・・凄く恥ずかしい。は、恥ずかしくておかしくなりそう・・・’
気品ある女性が、恥ずかしさに苦悩する姿に、
私は下を向いて、ひたすら謝るしか方法はありませんでした。
'や~だ~、どうしよう~’
悲嘆にくれるその姿に、そのショックの大きさが感じられました。
しかし、Tさんは気丈にも私のことを責めることはしませんでした。
責めらることを覚悟し怯えていた私は、逆に自虐の念に襲われました。
Tさんはため息をつくのを繰り返しました。

やっとのことでTさんは顔を覆っていた両手を離して顔を上げました。
その顔には、異性にすべてを見られてしまったことに対する落胆ぶりが伺われました。
気品ある美女であるだけに尚更でしょう。
’高橋君に、その・・・す、すべてを見られちゃった・・てっことね・・・’
’ご、ごめんなさい・・’
’こうやって高橋君と正対しているだけで、私、凄く恥ずかしい・・。穴があったら入りたいとはこういうことを言うのね。そして・・・見られたことに対して、悔しい気持ちもあるわ。’
’・・・・’
Tさんは強い眼差しで私の方を見ていました。
’本当に恥ずかしいわ・・・、恥ずかしくてどうにかなっちゃいそう・・・’
’・・・・’
'時間は元には戻せないのよね。出来ることなら時間を戻したい・・’
’・・・・’
'でも、元はといえば、私が悪かったのよね。操作に疎かった私が・・・。
裸の女性が画面に写れば、若い男の人は見てしまうわよね。見ないでという方が無理よね・・・’
Tさんは良くできた人だ。私を非難することなく、自分のミスを悔いた。
’本当にすみません。我慢することができずに最後まで見てしまって・・・’
’・・・・’
’何と言ってお詫びしたらいいのかわかりません・・・’
しょげ返っている私を逆に不憫に思ったのか、
’でも、正直に言ってもらってありがとう。
これが中年のオジサンに故意に覗かれていたのなら、悔しくて悔しくてしかたないけど・・・。
故意ではないし、真面目な高橋君だから・・・。’

何かTさんは吹っ切れたような表情になっていました。
’本当にすみませんでした。’
’嘘をつかれた方が、私のモヤモヤはずっと続いていたと思うの。’
下を向いて、うつ向いている私に、
’あまり気にしないで。逆に私の方が謝らなくてはいけないのよ。切り忘れた上に・・・その・・・・む、むさ苦しいものをお見せしちゃって・・・’
'いえ、そ、そんなことないですよ。すごく・・すごく綺麗でした・・・’
Tさんは少しはにかんだ様子で、
’あそこにある・・あの大きな画面で見てたのね・・・’
’ごめんなさい・・・’
’こちらこそ、本当にごめんなさいね。でも・・・・ビックリしたでしょう?’
’あ~、は、はい。。。上品で綺麗なTさんが、あんなに凄いことするなんて・・・’
緊張が緩んだ私は、言わなくてよいことまで言ってしまいました。
そう思いTさんの顔を見ると、
冷静に戻っていた顔が、またみるみるうちに真っ赤になっていきました。(終わり)

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