乗り合わせたタクシーの女性運転手


駅前のタクシープールから乗り込んだタクシーの運転手が女性の声だった。
「どちらまでですか?…あっ…」
ルームミラーで私を確認して彼女は固まった。私はダッシュボードに掲示された運転手の名前を見て固まった。
「お前…美代子か…」
バブル崩壊の煽りを受けたようにして離婚した元妻の美代子だった。
「20年ぶりだな、元気にしてたか?」
「ええ、こうして元気に働いてるわ。」
別れた頃と比べて、柔らかな美人になっていた。
「お前…」
「何よ…」
「今でも綺麗だな…」
「ばかね…」
あれからどうしていたとか、誰かと恋をしたとか、そういうお互いの生活には触れず、車の中だけが昔にタイムスリップした。対向車のライトに時折浮かぶ美代子の横顔を見つめていた。
台所に立つ美代子、向かい合って食事する美代子、ベッドで喘ぐ美代子、俺に抱かれてクネる美代子の細い体を思い出した。美代子の体をもう一度味わいたいと思った。僅か2年半の夫婦生活の想い出を探した。
車が停まり、ドアが開いた。タイムスリップが解けた。
「ありがとうございました。」
こちらを振り向き微笑んだ美代子はバタンとドアを閉じて走り去った。見えなくなるまで見送った。

我が家に着いた。小走りで駆け寄り俺のカバンとコートを受け取る妻。美代子より8歳年下の妻に、8年前の美代子を見た。
この夜、50歳の体が妻を求めた。細い体をクネらせ喘ぐ妻。吐息が耳をかすめ、
「今日、大丈夫よ…」
震える膣に精を注いだ。何もかも似ていた。美代子に似た妻を抱きながら、48歳でタクシードライバーとして働く美代子の暮らしを案じた。

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