僕が女の子になった日


 この夏、僕の身に起こった衝撃的な出来事をお話します。
 少し長いですが、良かったら読んでください。

 僕は女装が趣味なのですが、このところスランプ気味で、春から仕事が忙しくなった事もあり、半年以上も女装をしていませんでした。
 女装をする人は分かると思いますが、男らしい体の部分を女らしく改善しても、別の部分が新たに男らしく感じ始めてしまい、際限のない状況になってしまうのです。
 例えば、すね毛を綺麗に除毛すると、ゴツゴツした膝や筋張った筋肉が目立ったり、眉毛を細く整えると、おでこの男らしさが目立ったりして、本物の女性に近づく事はとても難しい事でした。
 僕は何年間も女性に近づこうと試行錯誤を繰り返していましたが、最近の僕は女装の限界を感じていて、女装しても自分が女らしく見えなくなっていました。

 しかし、7月の中頃に仕事が一段落し、職場の同僚とゴルフに行った時に転機が訪れました。

 ラウンドが終わって同僚とロビーで話をしていると、見知らぬおじさんが話しかけて来ました。
「お兄さん、男だったんだね!」
 僕はおじさんが何を言っているのか分かりませんでしたが、彼は
「ラウンドが終わって大浴場に行くと、洗い場に女がいてびっくりしたよ!」
と言い、僕が大浴場の椅子に座って頭を洗っている姿を見て、女が男湯に入っているのかと思ったと言い出しました。
 興奮気味に話をするおじさんは、僕の裸が如何に女らしかったかを力説していて、僕の男性器を確認するまでは、僕が本物の女だと思っていたと言いました。

 すると同僚達も、言われてみれば僕が最近女っぽくなっていると言い出しました。

 確かに僕は、女装をしなくなってからも、骨盤を広げるストレッチや肩幅を狭くする体操を日課にしていて、家にいる時はコルセットで肋骨を絞って矯正していたり、毎日美肌の為に女性用のサプリメントを飲んでいたり、日々のスキンケアを継続していました。
 いつの間にか僕は、坊主頭の髪型なのに裸の状態でも女だと勘違いされる状態になっていました。

 僕は、おじさんや同僚達の話を否定しながらも心の中で喜んでいて、久しぶりに女装外出をしたい衝動が湧いて来ました。
 休日出勤が続いていた僕は、溜まっていた代休を消化することにして、平日に連休を取り女装外出をする事にしました。

 当日、男の格好で大きなキャリーバッグ二つ分の荷物を持った僕は、二連泊の予約をした地元のビジネスホテルにチェックインし、軽くシャワーを浴びて、ホテルの部屋の姿見に全裸姿を映しました。
 改めて見た僕の体は、肌が以前よりもスベスベしていて、痩せているのに程よくついた皮下脂肪のお陰で、男らしいゴツゴツした印象がなくなり、滑らかな女の体になっていました。

 そして、約半年ぶりに女装をする僕は、気合が入っていたのでを、昨日の晩に陰毛を剃り、かつら用の接着剤で男性器をタックしていたので、僕の股間は一本筋の割れ目の状態になっていました。
 また、胸は女性用の美容サプリメントに含まれるプラセンタの作用で、この半年の間にAカップ程度の大きさに膨らんでいて、コルセットで毎日絞っていたウエストは肋骨が細く矯正されたことでくびれていて、日頃のストレッチや体操の成果で、骨盤は横に広がり肩幅は狭くなっていました。
 僕は鏡の前で、胸を張り背中を反らしてお尻を後ろに突き出す姿勢をすると、鏡には少し背の高いアスリート系の女子高生のような裸が映りました。

 確かに、この裸を見れば僕を女だと勘違いするのも仕方がないと思えました。

 僕はスランプを脱したようで、自分の裸に女としての違和感がなくなっていて、見ているだけで嬉しくなり顔が勝手に微笑んでいました。
 僕は日焼け止めの成分を含んだボディクリームを全身に塗りながら、鏡に映る自分の女体を十分に鑑賞した後、外出の準備をする為にヌーブラやテープで胸の谷間を作ってから女物の下着を装着し、スランプの間に通販で衝動買いした洋服を試着する事にしました。
 
 先ずは、チュールスカート付きのキャミワンピから試着してみると、コットンで出来た薄いグレーのキャミソール部分は生地が薄く、下に着ているブラが刺繍や縫い目まではっきりと浮き出ていて、下に厚めのTシャツを着ないと外出は無理そうでしたが、それよりも、スカート部分の丈が短すぎて直立している姿勢でギリギリ下着が見えない状態で、とても外に着て行ける物ではありませんでした。

 1アウトか…。

 試着が出来ない通販ではよくある事ですが、背の高い僕はスカートの丈が短すぎる事が多く、このキャミワンピはダメ元で買った安物だったのでダメージはありませんでした。
 その後も、持ってきた女物の洋服を試着し、結果的には4勝1敗1引き分けで、外に着て行けない洋服は、最初に試着したキャミワンピだけだったので安心しました。
 あっ、1引き分けというのは、露出が多くて外を歩くには勇気がいるワンピースの事で、勝ちでも負けでもない感じでしたが、このワンピースが一番セクシーなものでした。
 僕は露出が控え目で、今年流行の胸元が透けているレースのワンピースを着る事にして、メイクを開始しました。

 化粧水と乳液を塗った後、医療用のテープをウィッグで隠れる頭部に貼って皮膚を引き上げると、顔の輪郭や首が細くなり、皺のなくなった僕の顔はかなり若返り、より女らしくなりました。
 男である僕は、平均的な女性よりも顔の彫りが深いので、ハイライトとシャドウを女性とは逆に塗り、顔がなるべく平坦に見えるようにベースメイクをして、10代の見た目に合わせたアイメイクを施しました。
 現実の僕は30前の男でしたが、女装した僕はかなり若く見え、メイクやファッションは女性アイドルのメイクや私服を参考にしていました。

 普段、男として生活をしている僕は、髪の毛を伸ばすことが出来なかったので、フルウィッグが必需品でしたが、最近のウィッグは安くて可愛いデザインのものが多く、坊主頭にしているお陰で、額に食い込むウィッグネットを装着せずに済んでいました。
 意外かもしれませんが、女装をする人には短髪の人が多く、ほとんどの人が僕と同様にウィッグを被る為に短髪にしていました。
 また、男として生活している僕は、ピアスを開ける事が出来なくて、イヤリングを愛用していましたが、ピアスと比べてイヤリングは種類が少なく、その事が不満の一つでした。
 僕は外出の目的を、可愛いイヤリングを探すことに決めて、流行りのチョーカーもついでに買うことにしました。

 メイクが完成した僕は、カラコンと付け爪を装着し姿見の前に立つと、そこには嬉しそうに微笑む可愛い少女が映っていました。
 僕が参考にしたワンピースは、乃木坂46の吉田綾乃クリスティーさんの私服と色違いのものでしたが、彼女より身長が10センチ程高くて痩せている僕は、彼女よりも女としてのスタイルが良かったので、写真に映ったアイドルの脚が酷く短く思えました。
 男性には分からないと思いますが、女がおしゃれをする対象は男性に向けてのものではなく、同性に向けてのもので、他の女よりも自分が綺麗になったり可愛くなる優越感は脳が痺れる程の快感でした。
 まして、その対象が一般の女性ではなく、一流のアイドルとなれば、僕の快感はマックスになり、顔が熱くなりました。
 それは、お酒に酔っている状態に似ていて、僕は正に「自分の可愛さに酔っている」状態でした。

 僕は理想の女に近づけた事が嬉しくなり、ワンピースと同じ白いレースのソックスと厚底のブーティサンダルを履き、お気に入りのクロエのバッグを持ってホテルの廊下に出ました。
 ホテルの廊下は無人でしたが、約半年ぶりの女装外出に緊張した僕は、酔いから醒め始め、急に不安になって来ました。
 そして、エレベーターホールまで来ると、僕は体形を隠す為のカーディガンを着た方がいいかも…とか、顔を隠す為のマスクを持ってきた方がいいかも…と思うようになり、一旦、部屋に引き返すことにしました。
 しかし、タイミングが悪いことに、廊下には子供連れの若い夫婦が出ていて、部屋に引き返すには、彼等と狭い廊下ですれ違わないといけない状況になりました。
 僕はやむを得ずエレベーターのボタンを押し、子供連れの夫婦から逃げることにしましたが、僕がエレベーターに乗り込むのと同時に彼等もエレベーターの前まで来てしまい、結果的に僕は彼等と一緒に狭いエレベーターに乗り込むことになってしまいました。

 緊張していた僕は、彼等と目を合わせないように俯いていましたが、小学生くらいの女の子が僕の顔を下から覗き込み、嬉しそうに
「ママ、このお姉ちゃん凄く綺麗!」
と、普通の声量で話し始めました。
 すると、僕と目を合わさないようにしてくれていた夫婦も僕の顔を見て
「本当だね♪」
と言うと僕に微笑みました。
 僕は女装がバレなかったことに安心し、微笑んで会釈をすると、エレベーターはフロントのある3階に停止し、女の子は
「お姉ちゃんバイバイ♪」
と言って両親と一緒に降りて行くと、エレベーターの前に立っていた若い女性従業員に向かって
「このお姉ちゃん可愛いよね?」
と話しかけました。
 すると女性従業員は
「本当!すごく可愛いね」
と女の子に言うと僕の方を見て
「行ってらっしゃいませ♪」
と微笑みながら言ってくれました。

 僕は客観的に見られても男だとバレなかった事に安心し、1階に到着したエレベーターから降りて、昼下がりの街に繰り出しました。
 久しぶりの女装外出は新鮮で、むき出しの生足に絡みつく初夏の生暖かい空気を感じ、歩く度に揺れるスカートの感触が
「今、自分は女装をしているんだ」
という実感を湧かせました。
 約半年ぶりに女装した僕は、女らしい姿勢や歩き方を確認するように歩き出しました。
 ホテルの1階にあるショップのショーウィンドウには、ヒールを履いて颯爽と歩く僕が映っていて、初めてヒールを履いた時の膝が曲がった不格好な僕の姿はありませんでした。

 そして、人通りの少ないホテルの前の路地を抜け、メイン通りに差し掛かると、平日だというのに人が多く、特に若い人が多い事に驚きました。
 僕は学生が夏休みになっていた事に気づき、人の少ない平日に休みを取ったことが、意味のないことだったと後悔しました。
 やはり、女装姿を多くの人に見られる事は恥ずかしく、僕はなるべく目立たないように俯いて歩きましたが、周りから軽蔑の眼差しで見れていないことや、ショーウィンドウに映る自分の女らしい姿を見ている内に、自分の女装に自信が出てきて、胸を張って肩幅を狭く見せる姿勢をとりました。

 顔を上げて歩いていると、すれ違う若い女性が視界に入りましたが、みんな僕よりも女としてのレベルが低く、僕は歩く度に自信がついて行きました。
 あっ、視界に入るという表現をしたのは、女性は男のようにジロジロと人の顔を見ることをしないで、広い範囲を注意深く見ていたので、僕も女装をしている時は女性の様に広い範囲を見るようにして、態度で女装がバレないように気をつけていました。

 すると、向かいから一人の女性が歩いて来ましたが、その人は一目で男と分かる女装をしていました。
 僕が最初に違和感を持ったのは彼の服装で、彼の着ているワンピースは流行を無視したものでした。
 しかも、彼の体形や姿勢や歩き方は男そのもので、何より口元のつくりが男にしか見えない状態でした。
 やはり、女装をする人にはマスクは必需品で、僕は思わず手鏡を出して自分の顔を確認してしまいました。
 しかし、僕の顔は十分に女性に見え、それどころか周りにいるどの女性よりも美人だったので安心しました。

 僕は男丸出しの彼が気になり、しばらく彼を尾行する事にしました。

 彼の姿は、安そうなボサボサのウィッグを被り、広い肩幅と分厚い胸板をしていて、胸の高い位置にある不自然な形の偽乳が上半身の逞しさを強調し、ノースリーブのワンピースからは筋肉質の逞しい腕が伸び、ゴツゴツとした手の甲には血管が浮かんでいました。
 また、くびれのない胴体と、上半身と比較して小さなお尻は、補正されることなくミニのワンピースが張り付いていて、短すぎるスカートからは太く筋肉質な脚が伸び、ピンヒールを履いた足元から「ノシノシ」という音が聞こえてきそうな男らしい歩き方をしていました。
 僕は女らしさの欠片もない女装男に驚きましたが、それよりも驚いた事は、彼とすれ違う人達が彼に全く無関心だった事でした。
 僕とは比べものにならない程、レベルの低い女装男が堂々と歩いているのに、自分は女装がバレるかもしれないと緊張していた事がバカバカしくなりました。
 結果的に僕に女としての自信をつけてくれた彼と別れた僕は、自分が本当に女に見られているかの最終確認をすることにしました。

 確認の方法は単純で、男からナンパされるかどうかでした。

 僕はナンパのメッカであるファッションビルに続く歩道を歩いていると、平日の昼下がりなのに夏休み中ということで若い人が多く、ナンパ師も何人か獲物を狙って立っていました。
 僕が10代後半から20代前半の女の子達と肩を並べて歩いていると、一人の男が僕と並ぶように歩き出し声をかけて来ました。
「ねえ、彼女、一人?今、時間ある?」
 僕はナンパゾーンに入ってすぐに声をかけられました。
 僕の周りには本物の若い女の子が何人も歩いていましたが、彼女達はナンパ師から無視されていて、声をかけられたのは僕だけでした。
 残酷な話ですが、女は見た目が全てで、その場には可愛くてスタイルの良い僕に敵う女はいませんでした。

 僕の女装は遂に「不気味の谷」を越えることが出来ました。

「不気味の谷」とはロボット工学の用語で、ロボットと人間との類似度を横軸に、そのロボットを見た人間の感情的反応を縦軸にした時に現れる谷のようなグラフの曲線を言い、ロボットが人間に似てくるにつれ、そのロボットを見た人間はロボットに好感を持つようになりますが、完全な人間の見た目になる直前に、人間の好感度が嫌悪感に変わり、そのロボットを不気味に感じる現象のことをいいました。

 精巧な蝋人形を怖いと感じたことのある人は多いと思います。
 また、逆に本物の人間とかけ離れたアニメのキャラクターに親近感を持つ人が多いのも、この現象が原因でした。
 これは女装にも言えることで、スランプになっていた僕は、女性と微妙に違う見た目が違和感と不気味さを感じさせていました。

 僕は自分が他人から完全な女に見られている確信を得られ嬉しくなりました。
 しかし、僕は必死に僕を口説いてくるナンパ男を無視していました。
 意外かもしれませんが、僕は女装をしますが男には全く興味がなく、恋愛やセックスの対象は女性だけなのです。
 それでは、何で女装するのかというと、可愛い女の子になる事は、それだけでとても気持ちの良い事で、その気持ち良さは男や不細工な女には一生味わう事の出来ない特別なものでした。
 僕には、可愛い女の子が更なる刺激を求めてアイドルになる気持ちが良く分かり、出来ることなら僕も女性アイドルになって皆から見られたいと願う程でした。

 僕はナンパ男を振り切る為に、女の子達の流れに従ってファッションビルに入りました。
 さすがに、女物のお店しかないファッションビルの中までナンパ男は追ってきませんでした。

 ファッションビルは冷房が効いていて、僕は自分が汗をかいていた事に気づき、メイク崩れを確認する為に女子トイレに入ることにしました。
 女子トイレには何度も入ったことがありましたが、定期的に清掃されている筈の商業ビルのトイレは、いつもの様に汚れていました。
 男性には分からないと思いますが、女子トイレの汚れ方は男子トイレとは違い、故意にゴミを捨てて汚している感じで、中国人の汚し方とよく似ていました。
 女も中国人も自分さえ良ければいいと思っていて、とてもモラルが低く、男子トイレの不可抗力で床におしっこをこぼす汚れ方とは質が違いました。

 やがて、汗が引きメイク直しが終わった僕は、店内に戻り買い物を楽しむ事にしました。
 1階のアクセサリー売り場には、可愛いアクセサリーが沢山ありましたが、やはりピアスに比べ、イヤリングの品揃えは悪く、気に入ったイヤリングを探すのに苦労しました。
 僕は、いっそのことピアスを開けようかと思いましたが、ただでさえ女らしい僕がピアスをして会社に行くと、色んな噂がたつので諦める事にしました。

 そして、気に入ったイヤリングとチョーカーを幾つか買った僕は、ついでに洋服を見ることにしてエスカレーターに向かうと、女物のお店しか入っていないファッションビルに似つかわしくない男の子達が僕の後をついて来ました。
 彼等は、1階のアクセサリー売り場にいる僕を、入り口に集まって見ていた子達で、僕の見た目について「可愛い!」とか「モデルじゃない?」とか「ブラ紐が透けてる!」と話をしていました。
 すると男の子達は僕の予想通り、エスカレーターに乗っている僕を見上げながら小声で
「見えた!」とか「白のレース!」とか「ハミケツしてた!」
と言って嬉しそうにはしゃいでいました。
 彼等は僕のスカートの中を覗いて盛り上がっている様子でしたが、彼等が見たものはパンティではなく、スカートの裏地やショーツの上に重ね穿きしているショートパンツでした。
 膝上丈より短いスカートで生活をしていると、座ったり屈んだりする瞬間に、ほぼ100%の確率でスカートの中が見え、普通の女性にとってミニスカートを穿く時にショーパンを重ね穿きする事は常識で、僕も当然のようにレースの見せパンを穿いていました。
 しかも彼等の見ていた物は男のお尻で、僕は何だか彼等が哀れに思え、同時に可愛いと思いました。

 その後も男の子達は僕の後をついて来ましたが、ナンパをしてくる気配がなかったので、僕は彼等を無視してショッピングに集中することにしました。
 お店では、ショップの店員さんとおしゃべりを楽しんだり、お客さんから店員さんに間違えられたりしながら存分に女の子の気分を味わいました。
 やはり、女性は見ていないようで他人をよく見ていて、僕が着ているワンピースが地元では売っていない益若つばささんがプロデュースしたブランドのものだと気づいていましたが、そんな鋭い観察眼を持つ女の子達も、僕が男である事には気づいていませんでした。

 ちなみに僕は、何年も女装の為にボイストレーニングをしていて、喉ぼとけを引っ込めることで女声を出せるようになっていて、声で女装がバレることはありませんでした。
 厳密にいえば、このテクニックは大人の男の声を、声変り前の少年の声に戻すテクニックなので、本当の女声ではありませんでしたが、低音の響かない子供の声は女声と区別が出来ない状態でした。
 この発声方法は習得に時間がかかりましたが、男らしい喉ぼとけの出っ張りが目立たなくなる効果もありました。

 僕は自分が男だったことを忘れる程に幸せを感じていましたが、僕の後をついてくる男の子達も、僕のスカートの中を覗くことで幸せを感じている様子でした。
 僕は男の時に、階段の前を歩く女性からバッグや手でスカートの後ろを押さえる仕草をされた経験が何度もあり、自分が痴漢扱いされたような気分になっていたので、自分がスカートを穿く時は、見られてもいいショーパンを穿いてスカートの裾を押さえないようにしていました。
 そのことが珍しかったのか、それとも男の子達がLINEで「パンツ丸見えの女がいる」と連絡を廻したのか、僕のスカートの中を覗くギャラリーは徐々に増えていました。

 僕は男には興味がありませんでしたが、男からセックスの対象の女として見られる事は気持ちの良いことで、もっと見られたいという願望が出てきました。
 今、着ているワンピースはひざ上15センチくらいの丈で、エスカレーターの下からはギリギリパンツが見えない状態でしたので、僕は商品の入った紙袋をホテルに持って帰るついでに、もっと丈の短いスカートに着替えることにしました。
 すると、驚いたことに、ファッションビルを出てホテルに向かう僕の後を男の子達がついて来ました。
 僕も中学生くらいの頃は、可愛い女の子の透けて見えるブラや、短いスカートに興奮した経験があったので、始まったばかりの夏休みに浮かれている彼等の気持ちも分からなくはありませんでした。

 彼等は僕をナンパする勇気はない様子でしたが、僕の5メートルくらい後を執拗に追ってきて、何とホテルのエレベーターに3人の男の子が一緒に乗り込んできました。
 僕は泊まっている部屋をとくて特定されたくなかったので、強制的に停止するフロントのある3階で降りることにしました。
 すると、男の子達も僕に続いて3階でエレベーターを降りましたが、やはり僕と距離を置いていて、小声で僕の話をしながら嬉しそうにしているだけでした。

 僕はフロントの前に置いてあるパンフレットを手に取り、読むふりをしながら、彼等が立ち去るのを待ちましたが、彼等はパンフレットを読む僕を嬉しそうに眺めていてホテルから出ていく気配がありませんでした。
 僕が途方に暮れていると、行きのエレベーターで僕に挨拶をしてくれた若い女性従業員が微笑みながら僕に話しかけて来ました。
「お帰りなさいませ、大浴場でしたら16時50分までが女性用となっておりますので、今でしたら、ご利用になれますよ♪」
 僕の泊まっているビジネスホテルは、3階に男女入れ替え制の大浴場が一つあり、女性従業員は、僕がパンフレットで大浴場の入浴時間を確認していると勘違いした様子でした。

 僕は、僕が視界からいなくなれば、男の子達も諦めてホテルを出ていくかもしれないと思い、コインランドリーコーナーの奥にある大浴場の脱衣所で時間を潰すことにしました。
 大浴場の入口の前には、別の女性従業員が立っていて、微笑みながら僕を見ると
「どうぞ♪あと30分程で入れ替えですので…」
と言い、男の僕を女湯に案内してくれました。

 時間は16時過ぎの中途半端な時間でしたので、大浴場に人がいないと思っていた僕の予想に反して、脱衣所には若い女性が3人もいました。
 彼女達は洋服を脱ぐ動作を一瞬だけとめて、僕を見てきましたが、すぐに洋服を脱ぐ動作を再開させました。
 幸運にも、彼女達も僕が女だと思ったようで、警察に通報される最悪の事態は避けることが出来ました。

 しかし、次々と洋服を脱いでいく女性達の隣で、洋服を着たままでいる事は不自然で、かと言って、すぐに大浴場を出て行くことも不自然でした。
 僕は、やむを得ず畳んで置かれているタオルを何枚か取ってロッカーの前に立ち、ゆっくりと着ていたワンピースを脱ぎ始めました。

 実は僕には、女装のスランプになる前に、女装をして何度か女湯に入ったことがありました。
 女湯と聞くと男性はハーレムのような場所を想像する思いますが、実際の女湯は酷い所で、女子トイレと同様にゴミが散乱し、何より、中にいる女性のほとんどが体形が崩れていて、ハーレムというより相撲部屋に近い感じで、目を背けたくなることはあっても、性的に興奮することはありませんでした。
 勿論、中には若くて綺麗な女性もいましたが、ゴミ集積場にケーキが置かれていても食欲が湧かないのと同じで、やはり性的に興奮することはありませんでした。

 ゆっくりと洋服を脱ぎ下着姿になった僕をしり目に3人の女性達は全裸になり、嬉しそうに大浴場に入って行きました。
 僕は、このタイミングで一旦脱いだワンピースを着て大浴場を出て行こうと思いましたが、脱衣所の大きな鏡に映った僕の下着姿は、同じ鏡に映る全裸の女性達に引けを取っておらず、むしろ僕の方が女としてスタイルが良く感じました。
 それに、女の子として買い物を楽しんで来た僕は、女の精神状態になっていて、若い女性の裸を見ても男としてセックスの対象として彼女達を見ることはなく、まるで同性と一緒にいるような感覚で
「僕の方が脚が細くて長いし、お腹も出てなくてスタイルでは絶対に負けてない」とか
「僕よりおっぱいは大きいけど、その分、乳輪も大きいし少し垂れてるから、僕の方が形の色も綺麗」
と思っていて、男として興奮することはありませんでした。

 僕は開いたロッカーの扉で大浴場からの死角をつくり、彼女達に見られないようにウィッグを取って、坊主頭の上からタオルを巻き、ブラとショーツを脱いで全裸になりました。
 大きな鏡に映った僕の裸は、股間をタックで女性化していることもあり、3人の女性達に引けを取らない女らしい身体でしたが、胸にヌーブラの痕が赤く残っていたので、フェイスタオルを胸に当てて隠すことにしました。

 女の精神状態になっていた僕は、女として胸についたヌーブラの痕を見られる事が恥ずかしく感じていました。
 何故なら、ヌーブラには厚みがあり、背中の開いたドレスを着る時以外にヌーブラをすることは、胸を大きくみせたい時で、僕は自分が見栄を張って胸を大きく見せようとする女に思われたくありませんでした。

 僕には男湯にも女湯にも入った経験があり、男女の体の隠し方の違いを知っていました。
 それは男女の性器の違いからくるもので、男は胸や乳首の形状に個人差が少なく性器が露出しているで下半身だけを隠しますが、女性は胸や乳首の形状に個人差があり性器が露出していないので胸を隠す傾向がありました。
 勿論、男女共に何処も隠さない人も多くいますが…。

 僕はフェイスタオルを胸に当て、垂らしたタオルでついでに下半身を隠す女性として最も一般的な体の隠し方をして大浴場に入りました。
 すると、椅子に座って体を洗っていた女性達が僕の方をチラリと見てきましたが、直ぐに視線を外してくれたので、裸の状態でも僕の女装はバレていないことが確認出来ました。

 初めて入ったビジネスホテルの大浴場は、大浴場とは名ばかりで、洗い場が片側に6席しかなく、湯船も幅が3メートル程で、奥行きが2メートル程しかない6人入れば満員と言った感じの狭いものでした。
 僕は、こんなに狭い女湯に入るのは初めてで、至近距離でヌーブラの痕を見られることが恥ずかしかったので、直ぐにお風呂から出ることにして、彼女達から1席離れた席に座り胸が見られないように注意しながら簡単に体を洗うと、無人の湯船に彼女達に背中を向けて浸かりました。

 男と比べて体を洗うのに時間の掛かる彼女達は、会話の内容から九州の女子大生だと分かり、他人の僕に興味がない振りをしていましたが、会話の内容がダイエットの話題に変わったので、彼女達がしっかりと僕の裸を見ていたことに気づきました。
 男の僕にとって、豊満な乳房が女の魅力の一つだと思っていましたが、女性にとっては痩せていることが理想の体型だったようで、女子大生達は如何に自分が太っているかを不幸自慢していました。

 やがて、僕の胸にあったヌーブラの痕が、体全体が温まったことで目立たなくなり、これで胸を見られても女として恥ずかしくなくなりました。
 僕はカラスの行水気味でしたが、お風呂から出ようとすると、体を洗い終わった女子大生達が湯船に押し寄せて来て、退路を塞がれてしまいました。

 僕は3帖程の広さしかない湯船に3人の女子大生と一緒に入ることになりました。
 すると、一人の女子大生が微笑みながら
「どこから来たの?」
と僕に話しかけました。
 女子大生に話しかけられた僕は、湯船から出るきっかけを失い、女装のために地元のホテルに泊まっているとは言えなかったので
「家族旅行で、群馬から来ました」
と九州出身の彼女達と共通点のなさそうな土地の出身だと嘘をつき、なるべく会話が弾まないようにして、ついでに女の子が一人で大浴場に来た不自然さを誤魔化すために少人数でホテルに泊まっている振りをしました。

 また、女子大生達が初対面の僕に敬語を使わなかったので、彼女達が僕を年下だと勘違いしていると感じた僕は
「お姉さん達は、どこからいらっしゃったのですか?」
と敬語で尋ねると、彼女達は福岡から来た女子大生だと答え、僕に
「高校生?」
と尋ねてきました。
 やはり、彼女達は僕の発育途上の乳房とパイパンにした股間の印象から、10歳くらい年上の男を、自分達より年下の女子高生だと思い込んでいました。
 僕は、なるべく早くここから逃げ出したかったのですが、女子大生達は背の高い僕の部活を聞いて来たり、陰毛の処理の話をしたり、中々湯船から出るきっかけを与えてくれませんでした。

 やがて、彼女達は核心である痩せている僕の体型について質問し始め、露骨に僕の裸を見てきました。
 僕には小さいですが乳房もあり、男性器はタックをして体内に隠していましたが、じっくりと股間を観察されれば、僕が女ではないことがバレてしまいます。
 タックした僕の股間は、睾丸を体内に押し込み余った陰嚢の皮で、股の下に折り曲げた陰茎を両側から包んで接着したものなので、大陰唇同士がピッタリと貼り付いた割れ目はありましたが、割れ目の奥にある小陰唇や陰核がない状態でした。

 僕は、スタイルの良さを褒めてくれる彼女達の視線を下半身から逸らせる為に
「そんなことないですよ…私は胸が小さいのがコンプレックスなんです」
と言って、お湯に浸かって見えにくい胸を見せる為に膝立ちになって、彼女達の注意を僕の小さな乳房に集めてから、股間をタオルで隠しながら立ち上がり、湯船の縁に座って足だけをお湯に浸ける姿勢になりました。
 マジシャンがよく使うテクニックでしたが、彼女達の注意は僕の胸に集中していたので、僕は自然な動きで股間の割れ目をタオルで隠すことに成功しました。

 僕は自分の乳房を揉みながら彼女達の乳房の大きさを大げさに羨ましがりました。
 すると女子大生達は「そんなことないよ~」と謙遜しながら立ち上がると、一人が僕の隣に座り裸体を僕に密着させ、残りの二人は僕に向かい合うように反対側の湯船の縁に座り、自分の乳房を僕に見せなから、僕の小さな乳房や乳首を可愛いと褒めてくれました。
 特に彼女達は僕の乳頭と乳輪が小さいこと羨ましがり、冗談っぽく
「男の子みたいだねw」
と言いました。

 僕は「男の子」というワードに過剰反応してしまい、自分が男だとバレたと思い動揺したリアクションを取ってしまいました。
 僕は不自然な反応したことを悔やみましたが、僕の向かいに座っている女子大生が
「ごめんね!そう言う意味で言ったんじゃないよ♪それに本物の男の乳首は、もっと小さいしw」
と胸が小さいことを気にしている女子高生の僕が、傷ついたと勘違いしてフォローを入れてくれました。
 僕の乳頭は本物の女性と比べると小さなものでしたが、プラセンタが配合されたサプリメントを飲む前と比べると3倍くらいの大きさに肥大化していて、初潮を向かえたばかりの女の子と同じくらいの大きさになっていました。

 僕は男であることがバレなかったことに安心しましたが、女の精神状態から醒めてしまい、改めて男として裸の女子大生3人に囲まれている状況に興奮してきました。
 付き合っていた元カレの性感帯が乳首だった話で盛り上がっている女子大生達は、本物の女性だったので、どこも隠そうとはせず、僕には彼女達の乳房は勿論、脚を開いて座っている股間にある女性器がはっきりと見えていました。

 僕と違い本物の女である彼女達の股間には、ビキニラインが手入れされた陰毛と二十歳前後の使い込まれていない陰核と小陰唇がありました。
 男の感覚に戻ってしまった僕は、視覚からの刺激と密着した女子大生の柔らかい肌の感触を感じ、急に心臓の鼓動が早くなり、顔に血が上り耳が熱くなり、股間が疼き始めました。
 勃起していない状態の陰茎を、かつら用の接着剤で股下に固定している僕の男性器は、海綿体に血液を送る血管も圧し潰されていたので、男として性的に興奮しても勃起することはありませんでした。

 しかし、あまりにも強い性的な刺激を受けた僕の男性器は、徐々に陰茎に血液が集まり膨張し始め、接着された割れ目を自ら剥がそうとしていました。
 裸の女子大生達は、急に大人しくなった僕の変化に気づいたようで、目のやり場に困り赤面して俯いている僕の顔を覗き込んできました。
 僕は男として性的に興奮していることを彼女達に気づかれてしまいました。

 すると、女子大生達は突然
「キャ~!」
と一斉に悲鳴を上げたので、僕は終わったと思い、自分が警察に連行される姿を思い浮かべていると
「可愛い~!!」
と言って、僕に抱き着いてきました。
 彼女達は元カレとのセックスの話を聞いた、男性経験のない処女が恥ずかしくて赤面していると勘違いしたようで、隣に座った女子大生が、僕に乳房を押し付けながら、顔をキスが出来る程の近さに近づけてきました。

 男の精神状態に戻っていた僕の理性は限界の状態で、熱くなった陰茎が膨張し始めている股間を両手で押さえ付けて快感に耐えるしかありませんでした。
 すると、後ろから
「そろそろ、入れ替えの時間で~す」
とホテルの従業員が大浴場のガラス戸を開けて教えてくれました。
 ホテルの従業員に注目した僕達は、会話が一瞬途絶えたので、僕に女湯から出るきっかけが出来ました。
 僕は間髪入れずに
「あっ…ママとご飯に行く約束をしているので、先に出ます…」
と女子大生達に言うと、僕の体に纏わりついている全裸の女達を振りほどいて脱衣室に逃げ込みました。
 そして、素早くバスタオルで体を拭くと、従業員が出て行った脱衣所で、女子大生達に見られないように、頭に巻いたタオルを取ってウィッグを被りました。

 僕のタックした股間の割れ目は、お湯と汗で接着剤の粘着力が弱まっていて、今にも勃起した陰茎が飛び出しそうな状態になっていました。
 もし、この場で勃起した陰茎を女子大生達に晒したら僕の人生は終わってしまいます。
 僕は取り敢えずショーツを穿いて、股間の暴発を抑えることにしました。

 僕は何とか最悪の事態を回避出来て一息つきましたが、体を拭いても噴き出す汗で濡れてくる身体に見せパンが張り付き上手く穿くことが出来ない状態で、また、付け爪をしている指でブラのホックを留めることが困難だと判断した僕は、ショーツ一枚の上からノーブラの状態でワンピースを着ることにしてブラや靴下をサンダルと一緒にファッションビルの紙袋に押し込み、スリッパを履いて大浴場から脱出しました。

 僕は取り敢えず、自分の部屋に戻ることにして、狭い廊下を歩きフロントの前まで来ると、僕の後をついて来ていた男の子達の姿はなくなっていました。
 しかし、ほんの数十分前までは閑散としていたロビーには、半袖のワイシャツで出っ張ったお腹を覆っているサラリーマンの集団がいました。
 17時前のこの時間は、チェックインのラッシュタイムだったようで、ロビーにいる男達は一斉に僕を見て嬉しそうな表情をしました。

 男の精神状態に戻っていた僕は、男なのにミニのワンピースを着ていることが恥ずかしくなり、脚が震えてきました。
 しかし、ここで立ち止まっていても仕方がないので、僕は俯きながら男達の間を縫うように歩きエレベーター乗り場の前まで行きました。

 2基しかないエレベーターの前は、おじさん達で渋滞していて、いつの間にか僕は狭いエレベーターホールで、おじさん達に取り囲まれていました。
 すると、一人のおじさんが
「お姉ちゃんもこのホテルに泊まってるの?」
とにやけた顔で聞いてきましたが、彼の息はアルコール臭く、おそらくこのホテルに来るまでの移動中にお酒を飲んでいた様子でした。
 僕は俯いた頭を縦に振って肯定の意思を伝えると、そのおじさんは
「お姉ちゃん可愛いね~、それじゃあ、おじさんの部屋で一緒に寝る?」
と言うと、周りの男達から下品な笑い声が起こりました。

 どうやら、ここにいる男達は全員知り合いのようで、恐らく社員旅行でこのホテルに宿泊する感じでした。
 すると、他の男達も僕の方を向いて
「お姉ちゃん、いい匂いがするね~お風呂に入って来たの?」
と言って、顔を近づけて来たり
「いいなあ~おじさんも一緒にお風呂に入りたかったよw」
と言って僕を言葉で弄んで来ました。

 男の僕には彼等が性的に興奮していることが分かりました。
 旅行中の開放感の中、お酒を飲んで気持ち良くなっているところに、大人しい女の子が湯上りの格好で現れれば、僕でも男として興奮する筈でした。
 しかも、一人なら理性が働く筈の彼等には、集団心理が働いていて「赤信号、皆で渡れば怖くない」という心理になっていました。

 逃げ場がエレベーターしかない、この場所では、僕は男達からの辱めに黙って耐えるしかない状況でしたが、一人の男が
「あれ?これってブラジャー?」
と言って屈むと、僕が持っている紙袋の中から、勝手にブラを取り出していました。
 大人しそうに黙っている僕を、何をしても騒がない女だと思った酔っ払いの男達の行動は、更に大胆なものになっていました。
 僕は咄嗟に男からブラを奪い取り丸めて握り締め胸の前に持って行きました。

 すると、僕の乳房は自分の手に当たって揺れてしまい、それを見た男が
「おっ!お姉ちゃん!ノーブラか!」
と言い、ワンピースのレースで透けているデコルテ部分を覗き、直接僕の乳房を確認しようとしました。
 僕はこの状況に耐えられなくなり、一旦フロントまで戻ろうとしましたが、男達に退路をブロックされ
「可愛い顔して、こんなスケスケの服を着て、男を誘ってるのか?」とか
「男が欲しいなら、俺達がいくらでも相手をしてやるよw」
と言うと男達は僕の乳房やお尻を触って来ました。
 僕は集団の男に襲われる体験をしたことがなかったので、体が震え声が出せない状況になっていました。

 僕の精神状態は、また女になっていました。

 痴漢に遭って声が出せない女性がいることは、痴漢の体験談で聞いたことがありましたが、自分が体験することになるとは思っていませんでした。
 すると、ロビーの奥の方から
「おい!お前ら!あんまり騒ぐな!他のお客さんに迷惑だろ!」
という声が響くと、男達の動きが止まりました。
 どうやら声の主は男達の上司のようで、彼等は同じ会社の同僚であることが分かりました。

 何とか集団痴漢の状況から解放された僕は、体を震わせながら立っているのかやっとの状態でした。
 やがて、エレベーターが到着し、男達が次々と乗り込み始めたので、僕はフロントまで戻り、エレベーターが空くのを待つことにしました。
 すると、満員になったエレベーターから
「あれ?お姉ちゃん、乗らないの?」
という声が聞こえ、僕はエレベーターの中に無理やり押し込まれてしまいました。

 しかし、さっきまで僕の体を触っていた男達は
「何階ですか?」
と優しい声で聞いてきました。
 男達は上司の一言が効いたのか、大人しくなっていたので、僕が自分の部屋の階数を伝えると男はボタンを押してくれました。

 しかし、男達が大人しかったのはエレベーターのドアが開いている間だけで、ドアが閉まると無数の手が僕の体に伸びてきて、さっきよりも激しく胸を鷲掴みにされたり、スカートの中に手を入れられて、僕にはない膣口を探るように股間を触られると、肛門に男の指が入ってきました。
 永遠に感じられた十数秒の後、エレベーターのドアが開き、僕はエレベーターから放り出され、ホールの床に倒れ込みました。

 ホールには驚いた表情のおばさんが立っていて、閉まりかけのエレベーターのドアから僕がエレベーターの床に落としたバッグや破れた紙袋が投げ出されました。
 床にはバッグの中身や、紙袋に入れていた下着や靴が散乱していましたが、ホールにいたおばさんが、僕に「大丈夫?」と優しい声を掛けながら拾い集めてくれました。
 僕は涙を流しながら震えていて、床から上体を起こした姿勢で声も出せず動けなくなっていました。
 
 僕の背中をさすってくれていたおばさんは、下りのエレベーターが到着したので
「ホテルの人を呼んできてあげるから待っていてね」
と言い残してエレベーターの中に消えて行きました。
 優しいおばさんのお陰で、少し落ち着いてきた僕は我に返り、ホテルの人に事情を聴かれると男なのに女湯に忍び込んでいた事もバレるので、僕はおばさんが集めてくれた荷物を持って立ち上がると、その階は僕の部屋がある階だったので、自分の部屋に戻りました。

 テンキーを操作して部屋に入った僕は、ウィッグを脱いでベッドに倒れ込みましたが、僕の小さな乳房と股間には男達の指の感触がジンジンと残っていて、僕は体に怪我をしていないか確認する為にワンピースを脱ぎました。
 幸い僕の体には怪我はありませんでしたが、脱がされかけていたショーツと内腿は濡れていて、ワンピースの裏地もベトベトになっていたので、僕は知らない間におしっこを漏らしていたことに気づきました。
 僕はぐっしょりと濡れているショーツを脱いで匂いを確認すると、ショーツを濡らしていた体液は無色透明でサラサラとしていて何の匂いもしませんでした。

「これって、おしっこじゃない…男の潮吹き…?」

 僕は自分の体の反応に驚いていると、小さな乳首がパンパンに膨れていることに気づきました。

「乳首が勃起してる…?」

 男の僕は、プールの水の冷たさで乳首が勃起した経験がありましたが、こんなに大きく乳首が勃起した経験はありませんでした。
 僕は自分の勃起した乳首を触ると、体に電気が流れるような快感が走りました。
 触った乳首の感触は勃起した陰茎と同様の硬さがありました。

 僕は恐る恐る勃起した乳首を指で摘まんでみると、また電気が走るような快感かして、僕の口からは
「あっ!んんっ…!」
という女の喘ぎ声が出ました。
 僕の胸の先端には、敏感な亀頭が二つも生えたような状態で、僕は自分の乳房を揉みながら乳首を触る事を止めることが出来なくなっていて、先ほどの男達に集団レイプさせる自分を想像し、大きな喘ぎ声を出しながら女の子がする方法でオナニーをしていました。
 僕は狂ったように喘ぎ声をあげ、快感の波に耐えていると、男の僕にはない筈の子宮がウネウネとお腹の中で動く感触がして、何かを漏らした感覚がすると頭の中が弾けて、気が遠くなり、ベッドの上なのに何処かに落ちて行く感覚がしました…。

 僕は知らない内に眠っていたようで、目を覚ますと時間は18時前になっていました。
 僕が女湯から出たのが、17時前だったので1時間近く寝ていました。
 僕は男としてのオナニーやセックスの経験は何度もありましたが、こんなに感じたことはなく、しかも、陰茎は勃起していない状態で、胸を触っただけでした。

 僕は起き上がって、ベッドの上を見ると、股間の辺りのシーツが大参事になっていました。
 僕の意識は、はっきりとしていましたが、体は気怠い感じでとても疲れていました。
 僕は濡れたシーツを拭くバスタオルを持ってくる為に、重い体を起こし立ち上がると姿見が目に入りましたが、鏡に映っていたのは僕ではなく知らない女でした。

 全裸で立っている坊主頭の僕の顔はメイクが崩れ、立っている姿勢も女らしいものではありませんでしたが、僕の姿は女らしいポーズをしなくても、女にしか見えない状態になっていました。
 今の姿を見ると、ほんの数時間前にボディクリームを塗りながら女らしいポーズをとっていた僕は、まだ男っぽさが残っていたことが分かりました。
 勿論、ほんの数時間で体が変化する訳はないのに、僕は別人…いや、別の性別になっていました。

 僕は自分の変化に戸惑いましたが、取り敢えず疲れた体に栄養を補給する必要があったので、部屋を片付けてご飯を食べに行くことにしました。
 しかし、僕のメイクは滅茶苦茶に崩れていて、付け爪も何枚か剥がれていたので、メイク直しをする必要がありましたが、疲れた僕には新たにメイクをする気力が残っていなかったので、男の姿に戻ることにしました。
 僕はかつら用の接着剤のリムーバーで、股間と付け爪を剥がしカラコンをとって、メイクを落とし、本日3回目のお風呂に入りました。

 そして、男性用のボクサーブリーフを穿き、胸潰しシャツを着ました。
 胸潰しシャツとは、通称ナベシャツと呼ばれるタンクトップで、体に貼り付く伸縮性のない生地が胸の膨らみを潰してくれる、女性がコスプレで男装をする時に着るものでした。
 乳房が大きくなっていた僕は、薄着になると胸の膨らみが目立つので、最近は常に胸潰しシャツを着けていました。
 僕はチェックのシャツにGパンとスニーカーという、普通の男の格好になって、ズボンの後ろポケットに男物の財布を突っ込み、スマホを持って部屋を出ました。

 僕は、改めて男は楽だと思いました。
 女性は出かける為に、持って行かなければならない物が沢山あり、手ぶらで出かけることは不可能でした。
 そして、エレベーターの前まで来た僕は、自分が倒れていた辺りの床にシミがあることに気づき、先ほどのレイプ未遂が夢ではなかったことを実感し、エレベーターに乗り込みました。

 やがて、エレベーターが3階に停止し、奥に乗っていた人を降ろす為に、一旦エレベーターから降りると、ロビーにいる複数の警察官が目に入りました。
 恐らく、僕に対するレイプ未遂事件の捜査の為でした。
 すると、僕に続いてエレベーターから降りて来たお客さんが従業員に
「何か、あったの?」
と尋ねると、従業員は
「あっ、お客様同士のトラブルがありまして…」
と答えました。
 確かに、僕に対するレイプ未遂事件をマイルドな言い方にすれば、お客様同士のトラブルで間違いはありませんでした。

 すると、フロントの前で従業員と話をしていた警察官が移動し、ロビーの奥のソファが見えると、そこには僕を助けてくれたおばさんと女湯で一緒だった女子大生達が座っていて、別の警察官と話しをしていました。
 僕は、おばさん達に悪いことをしたと思いましたが、自分がレイプ未遂の被害者ですと名乗り出る訳にいかなかったので、心の中で彼女達に感謝しながらエレベーターに戻りました。

 ホテルの外に出ると、前の道路には複数のパトカーが停まっていて、僕が思っていたよりも事件は大事になっていました。
 普通の犯罪は犯人や容疑者が逃げるものですが、今回は被害者が逃げているので捜査は難航している様子でした。
 僕はレイプ未遂の被害者でしたが、同時に女湯に侵入した迷惑防止条例違反の犯人でもあったので、早々に現場から立ち去りました。

 僕はスタイルを綺麗に見せる為に朝から何も食べていなかったので、とてもお腹が空いていて、いつも行く中華料理屋に行こうと思いました。
 すると、すれ違う通行人が驚いた表情で僕を見てきました。
 中には僕を二度見してくる人もいて、僕は自分の格好が気になり、お店のショーウィンドウに自分の姿を映し確認してみると、そこには、ボーイッシュな洋服を着た坊主頭の女の子が映っていました。

 男の服を着た僕はノーメイクで胸の膨らみも潰していましたが、どう見ても女の子にしか見えない状態でした。
 確かに、街で坊主頭の女の子とすれ違ったら、僕でも二度見する筈でした。
 僕は女装姿より目立った格好をしている状況の打開策を考える為に、取り敢えず大きな雑貨屋さんに逃げ込みました。

 夏休み中の雑貨屋さんは若い人が多く、みんな僕を見て驚いた表情をしていました。
 僕は違和感の元凶である坊主頭を隠すことにしてキャップを購入し、タグを外してもらったキャップをその場で被ると、僕の見た目は帽子を被ったベリーショートの女の子になりました。
 僕は学生の頃から女装をしていて、何年も試行錯誤を繰り返していましたが、今の僕はキャップを被って坊主頭を隠しただけで女の子に見える状態になっていました。

 僕は今日の午前中に同じ格好でホテルまで歩いていましたが、その時はこんな状況ではなかったので、僕が変わったのは今日の15時から19時の間の4時間ということになりました。
 僕の見た目は、4時間前と大きく変化していない筈で、敢えて言うなら雰囲気が変わっていて、見た目が優しくなったと言うか、弱弱しくなったというか、男のギラギラした脂っぽさが抜けていました。

 僕は取り敢えず当初の目的地の中華料理屋に向かうことにしました。
 キャップを被った僕は、すれ違う人から二度見される事はなくなりましたが、キャップに隠れていない後頭部やもみあげに違和感があるようで、通行人からチラ見されていました。
 やはり、髪の毛を刈り上げている女の子は少数派で、その手の女の子は必ず奇抜なファッションとメイクをしていて、普通の格好をしてノーメイクの僕は目立っていました。
 僕は奇異な目で見られることが嫌になり、中華料理屋に行くことを断念してコンビニでお弁当を買ってホテルに帰ることにしました。

 僕がホテルに戻ってくると、道路にあったパトカーがなくなっていて、3階のフロントは閑散としていたので、僕へのレイプ未遂事件は何らかの形で決着がついた様子でした。
 部屋に戻った僕は夕飯を済ませましたが、時間はまだ20時で、やることのなくなった僕はテレビを観ながら、今後のことを考えました。
 それは明後日からの職場のことで、男の服を着ていても女に見えることは女装が趣味である僕には好都合でしたが、社会人の男としての僕にはピンチでした。

 僕は男に見える方法を考えましたが、男らしく髭を生やす方法は、髭自体を家庭用のフラッシュ脱毛器で永久脱毛していたので、脱毛器の使用をやめても髭が生えてくるのは早くて半年後になり、元々髭が薄かった僕は、例え髭が生えてもまばらにしか生えないの状況でした。
 やはり、メイクで男装するしかないと思った僕は、スマホで男装メイクについて調べ、実践してみることにしました。

 ネットにある男装メイクのテクニックは、コスプレでキャラクターになりきるものがほとんどだったので、参考になるものは少ししかありませんでした。
 しかし、女装メイクの逆をすればいいことに気づいた僕は、試行錯誤の末、メイクをしていることが分かりにくい、男装メイクの方法を見つけました。

 男装メイクは結果的に一般的な女性が普段しているナチュラルメイクと同じでした。

 女性のメイクの歴史や成り立ちを考えれば当たり前のことで、女性は女性が見て魅力的な顔になる為にメイクをしていて、女性が見て魅力的と感じる顔は男性の顔でした。
 まつ毛が長いことや、目が大きいこと、唇の色が濃いこと、鼻が高いことは、全て男顔の特徴で、女性は無意識のうちに、男の顔に近づける為のメイクをしていました。

 諸説ありますが、狩りをする人間の雄は、長いまつ毛で埃から目を守り、また、狩りの時声を出して獲物に逃げられないように、アイコンタクトや口パクで意思疎通を図るために目が大きく唇の色が濃くなり、より多くの酸素を取り入れるために鼻が大きく適応進化したと言われています。

 僕は男に見える方法がみつかり安心しましたが、これから会社に行く朝は、OLさんのように早めに起きてメイクをすることになるのかと思うと憂鬱で、何よりせっかく可愛い女の子に変身出来るようになったのに、その魅力を消すメイクをすることは精神的に苦痛でした。
 僕はせっかくの休日だったので、男装メイクを落として可愛い女の子のメイクをすることにしました。
 すっぴんの状態で女に見えるようになった僕は、いつもよりも可愛い女の子に変身出来ました。

 テンションの高くなった僕は、連休を取った明日の女装の為に、股間をタックし直しました。
 昨日の晩にタックをした時は、久しぶりだったこともあり、作業中に陰茎が勃起してしまい鎮まるまで作業を中断していたので時間がかかりましたが、今回は陰茎が勃起することがなかったので、短時間で作業を終え、接着剤が固まるまでの間、割れ目をテーピングで固定しました。
 僕の股間は、前貼りを貼った昔のポルノ女優のようになっていました。

 普段、タックすることのない僕は、女装の時は股間を押さえる為に股上の深いガードルを履いていたので、男性器が邪魔で穿けなかった面積の小さな可愛いショーツを穿いてみることにしました。
 ブラとセット売りされているショーツは、可愛いデザインをしていましたが、股上が浅く陰茎や陰嚢がはみ出してしまい、男が履くことは困難でした。
 しかし、タックをして女性と同じ股間の形状になった僕の下半身は、股上の浅いショーツを問題なく穿くことが出来ました。

 普段履くことのない女物のショーツは可愛くて、僕は更にテンションが上がり、昼に試着した時に引き分けたセクシーなワンピースを着ることにしました。
 胸元がV字にざっくりと開いたサマーニットのタイトミニのワンピースは、僕の体に張り付き、細いウエストと大きなお尻を強調しましたが、背が高いことで太った印象はなく、大人っぽいセクシーな感じになり、僕の見た目はまるでキャバ嬢のようになりました。
 しかし、僕は大人っぽいワンピースに生足は似合わないと感じ、20デニールの透けた黒のストッキングを履くと、僕の脚は網タイツを履いた時のように更にセクシーになり、今日買ったイヤリングとチョーカーを着けるとセクシーさが更に増し、子供っぽいメイクが似合わなくなったのでメイクを派手目にして、明るいブラウンのセミロングのウィッグを被り、ヌーブラを重ねて胸の谷間を強調すると、僕の見た目はキャバ嬢を通り越して高級クラブのホステスさんのようになりました。

 僕はセクシーな女になったことで、叫びたくなる程、嬉しくなり、普段は背が高くなり過ぎるので敬遠していた13センチのピンヒールのパンプスを履き、派手過ぎて御蔵入りさせていたブラウンのカラコンと派手な付け爪を装着すると、この姿を誰かに見られたいという想いが強くなり、先ほど警察沙汰になったばかりなのに、使い道がなくて予備のメイクポーチにしていたパーティ用のクラッチバッグからクロエの香水を取り出して体に振りかけ、スマホや財布と一緒にバッグに入れると、衝動的に部屋の外に出ていました。

 昼に女装で廊下に出た時は、不安と恥ずかしさしかありませんでしたが、今回は女としての自信しかなく、早く誰かにこの姿を見られたくて仕方がありませんでした。
 しかし、ホテルの廊下には人影はなく、到着したエレベーターも無人でした。
 僕は少し落胆しましたが、エレベーターにある大きな鏡に映った自分の姿を見てテンションが上がりました。

 黒のタイトミニのワンピースは女として理想的なプロポーションの体に張り付き、身体のラインを強調し、細くて長い脚を包む透けているストッキングは艶かしく、高いピンヒールとの組み合わせにより美しい脚線美を演出していて、真っ赤なルージュとネイルが大人の女らしさとセクシーさを感じさせました。
 僕は今の自分が世界一綺麗な女に思え、早く自分の姿を皆に見せびらかしたくなっていました。
 しかし、警察沙汰の事件を起こした僕は、ホテルの従業員とは会いたくなかったので、3階に停止したエレベーターの閉まるボタンを連打して、1階に向かいました。
 幸い、ホテルの従業員と顔を合わせなくて済みましたが、エレベーターが1階に到着しドアが開くと、女湯で一緒だった女子大生3人組と僕を助けてくれたおばさんがエントランスに入ってくる姿が見えました。

 僕は、一番会いたくない人達と遭遇し、ドアを閉めて逃げようと思いましたが、おばさんの夫と思われるおじさんが
「あっ、すいません!乗りま~す!」
と言いながら小走りで近づいてきました。
 僕は彼女達とエレベーターに乗りたくなかったので、エレベーターを降りてドアを押さえ、彼女達がやって来るのを待ちました。
 彼女達は僕に
「すいませ~ん」
と言いながらエレベーターに乗り込むと
「脚、綺麗~!」
「外人さん?」
「モデルさんじゃない?」
と口々に僕を見た感想を言い合っていたので、僕が昼に会った女子高生とは気づいていない様子でした。
 僕は、自分がレイプ未遂事件の被害者だとバレずに安心しました。
 女子大生達とおばさんは、久しげに話をしていたので、僕の事件の事情聴取の時に仲良くなったようでした。

 取り敢えず、ホテルの外に出ることの出来た僕は、メイン通りに出ましたが、22時過ぎの繁華街は、ほとんどのお店が閉まっていたので、人通りがありませんでした。
 僕は自分が美しくなった姿を誰かに見られたかったのに、とても残念な気持ちになり、この時間でも人が多そうな飲み屋街に行くことにしました。

 飲み屋街は、ここから歩いて5分程の距離がありましたが、自分の美しさに興奮している僕には気になりませんでした。
 しかし、しばらく歩いているとワンピースのタイトスカートの部分がずり上がってきました。
 僕は冬場にこの現象を何度か体験したことがあり、原因はストッキングとスカートの裏地が擦れて発生する静電気だと分かりました。
 僕は自分の美しいプロポーションを見られたいと思っていましたが、スカートがずり上がった下着姿を見られたいとは思っていませんでした。

 困った僕は、予備のメイクポーチにしていたパーティ用のクラッチバッグの中を見ると、普段は持ち歩かない携帯用の静電気防止スプレーが入っていました。
 僕は静電気防止スプレーを偶然に持っていたことに安心し、ビル陰に隠れてスカートの中にスプレーを振りかけると太ももに張り付いていたスカートの裏地が剥がれました。
 これで、しばらくは持ちそうだったので、僕は改めて飲み屋街を目指しました。

 やはり、22時過ぎの飲み屋街は人通りが多く、男達は露骨に僕の方を見てきました。
 僕は男達の視線を釘づけにしていて、すれ違った外人さんは僕に向けて指笛を鳴らしてきました。
 僕は歩いているだけなのにヒロインになった感じで気持ちよくなり、自然と顔が微笑んでいました。
 僕を無視する男は、男の時に執拗に声をかけてくる客引きだけでしたが、彼等の中には僕をホステスさんと勘違いして
「お疲れさまです」
と挨拶してくる人もいました。

 普通の女性は、生まれた時から女でしたが、僕は今日初めて女になったので、周りの人達の反応が新鮮で何時までの歩いていたい気分でした。
 しかし、靴に選んだ13センチのピンヒールは、歩くことに適しておらず、僕の全体重を支えているつま先が痛んできました。
 また、静電気防止スプレーの効果も薄れてきて、人前で股間にスプレーをする訳にもいかず、ホテルに戻ることにしました。
 ほんの数十分の外出でしたが、僕が今までしてきた、どの女装外出よりも、この外出は刺激的で楽しい外出でした。

 ホテルの部屋に戻ってきても、僕の興奮は収まらず、心臓の鼓動が鎮まる気配はありませんでした。
 僕は興奮を抑えるため、本日4回目のお風呂に入りメイクを落としました。
 しかし、僕の興奮は収まる気配はなく、テンションの高い僕は一度も穿いたことのないセクシーなショーツを穿き、ノーブラの状態で露出が多すぎて外に着ていけないキャミワンピをパジャマ代わりに着ることにしました。

 僕の穿いた黒いレースのショーツは、下着として股間を隠す機能がないもので、見た男を性的に興奮させる用途に特化したものでした。
 また、グレーのキャミワンピは、僕の発育途上の乳房の形に張り付き、乳頭の形は勿論、乳輪の僅かな凹凸やおへその窪みも浮かび上がらせていて、短すぎるチュールスカートは、何も隠す機能のないショーツが丸見えの状態になっていました。
 僕の見た目は、メイクを落とした幼い顔とセクシーなキャミワンピとのギャップで、セクシーと言うよりエロい感じになっていました。

 改めて見た僕の体は、ヌーブラで胸を底上げしなくても、十分に女らしく感じ、胸が膨らむ前の習慣でしていたヌーブラが必要ないものに感じました。
 そもそも、最近のブラは分厚いパッドが標準で付属しているものがほとんどで、僕のAカップの乳房でも胸の谷間が作れる機能を有していました。
 僕は、シリコンパッドで嵩上げする前提でブラを買っていて、僕の持っているブラはCカップ以上のものしかなかったので、明日は自分の体形にあったブラを買いに行くことにしました。

 僕はベッドの上で、日課のストレッチや体操をし、スキンケアやボディケアを済ませ、美肌サプリメントの影響で、むくみやすくなった脚に着圧ストッキングを装着しました。
 黒の着圧ストッキングは、つま先の空いたニーハイソックスのようで、僕の見た目は更にエロいものになりました。

 時間は23時過ぎでしたが、僕は興奮で全く眠気がない状態で、明日は一日中女の子の格好で過ごすつもりでしたので、お肌の為にも早く寝る必要がありました。
 僕は気を紛らわせる為に、テレビをつけましたが、面白そうな番組がなかったので、チャンネルを適当に変えていると、ペイチャンネルの映像が映りました。

 テレビに映ったAV作品は、これといってエロいものではありませんでしたが、僕は心臓が口から飛び出そうになりました。
 僕は普通の男ですので、AVやエロ動画は日常的に観ていて、好みのジャンル以外では興奮することはありませんでしたが、今の僕はAVを観る視点が代わっていて、男優側ではなく女優側に感情移入していました。
 僕は自分が男に勃起した陰茎を挿入されている錯覚を起こし、体と顔が熱くなり乳頭が陰茎のように勃起して疼き始めました。

 一旦、女の性欲の火がついた体は、理性では制御出来ないようで、僕は自分の乳房を揉みながら勃起した乳頭を摘み、テレビの中のAVと競うように女の喘ぎ声を上げていました。
 女の精神状態でするオナニーは、男のオナニーとは比較にならない程の気持ち良さで、僕は逝った瞬間、また気を失いそうになりましたが、今回は何とか踏み留まりました。
 荒い呼吸をしている僕は、股間を確認すると先ほどではないものの、透明なサラサラした体液が溢れていました。
 男のオナニーは射精すると、すぐに醒めるものですが、僕は逝ったばかりなのに、何度でもオナニーが出来そうで、また、乳首と僕にはない筈の子宮が疼き始めました。
 永遠にオナニーが出来る体になった僕は、このままでは頭がおかしくなると思い、テレビを消して乳首を触ることを必死に我慢して、呼吸が整うのを待ちました。

 何とか性欲が収まった僕は、お酒の力で強制的に眠ろうと思い、ホテルの小さな冷蔵庫を開けましたが、中身が空の状態だったので、部屋から10メートルほど離れた自販機コーナーに行くことにしました。
 僕は濡れたショーツを脱ぎ、高校生らしい可愛い綿のショーツに履き替え、ショートボブのウィッグを被ると、カーディガンを袖を通さず肩から掛けて露出した上半身を隠し、スリッパを履きコインだけを握りしめ、恐る恐るドアを開けました。

 24時を過ぎたホテルの廊下には人影がなかったので、僕は足早に自販機コーナーに駆け込みました。
 僕の乳房はAカップの大きさしかない筈でしたが、走ることで体が上下すると、乳房も上下に揺れて、乳房が下にさがる瞬間に衝撃があり不快な痛みを感じました。
 僕は胸が揺れることが痛いことだと初めて知りました。

 僕は人と出会いたくなかったので、缶ビールを買って直ぐに部屋に戻ろうとしましたが、自販機コーナーはビールだけが売り切れていました。
 僕は諦めて部屋に戻ろうと思いましたが、2階下の奇数階にも自販機コーナーがあったので、思い切って移動することにしました。
 僕は小走りでエレベーターの下降ボタンを押し、すぐに引き返して廊下の陰に隠れました。
 やはり、ノーブラの状態で走ると乳房が上下して痛みが走りました。
 女装を始めた頃の僕は、女装イコール、ブラをすることと思っていたので、男には必要のないブラをしていましたが、今の僕にはブラは必需品になっていました。

 僕は、到着したエレベーターが無人であることを確認して、エレベーターに駆け込みました。
 僕は何とか人に見られずエレベーターに乗れましたが、エレベーターが動き出した時の重力の変化を感じた瞬間、股間に何かが漏れる感触がしました。
 恐らく、先ほどのオナニーで逝った時に出た体液が、尿道に残っていて、それが漏れ出したものでした。
 僕は結構な量のお漏らしをしてしまい、部屋に戻ろうと思いましたが、エレベーターは2階下のフロアに到着したので、ビールだけは買うことにして、廊下に誰もいないことを確認して自販機コーナーに入りました。

 幸い、自販機コーナーは無人で、ビールはほとんど売り切れていましたが、135ミリリットルの缶ビールだけが売れ残っていました。
 普段飲む銘柄のビールではありませんでしたが、僕はやむを得ず購入しようとすると、たった2本買ったところで売り切れになってしまいました。
 僕は、昼間の社員旅行の男達を思い出し、彼等がホテル中のビールを買い占めているのだと思いました。

 僕はカーディガンの両ポケットに缶ビールを入れて、ついでにおつまみを買おうとしていると、遠くでエレベーターが到着する音が聞こえ、誰かがこちらに近づいてくる気配がしました。
 僕は咄嗟に自販機コーナーの入り口に背を向けて、買う予定のないジュースの自販機を見ていると、誰かが自販機コーナーに入って来ました。
 僕は心臓の鼓動が聞こえてくるくらい緊張しましたが、入って来た人は一人だけで
「何だよ、売り切れかよ…」
と言う、男の独り言が聞こえてきました。

 僕は、これで男はすぐに出ていくと思い、安心しましたが、男が動く気配がしなかったので、恐る恐る振り返ると、ホテルの浴衣を着た男が、赤い顔をにやつかせて僕を見ながら、自販機コーナーの出口を塞ぐように立っていました。
 僕が目を逸らそうとすると、男は
「あれっ!昼間のお姉ちゃんじゃん!」
と言い、僕に近づいて来ました。

 僕は男から距離をとるために後退ろうとすると、震えた足に力が入らず、尻餅をついてしまいました。
 すると、肩に掛けたカーディガンが床に落ち、倒れた衝撃で揺れている乳房の形が浮き出たキャミワンピが剥き出しになり、M字開脚に開いた股間に張り付くショーツが丸見えの状態になりました。

 すると、男は
「やっぱり、エロい姉ちゃんだね、パンティにシミが出来る程、濡れてるじゃん!」
と言いながら、僕にゆっくりと近づきましたが、彼の股間だけが不自然に揺れていました。
 やがて男が浴衣の前を開くと、不自然に揺れていた物の正体が勃起した陰茎であることが分かりました。
 男は素っ裸の上に浴衣を着ていて、前が完全に肌蹴た男の出っ張ったお腹には帯だけが残っている状態でした。

 男は勃起した陰茎を揺らしながら、僕をレイプする為に覆い被さって来ました。
 僕は男の汚い体が怖くなると反射的に
「キャーー!!!」
と大きな声で叫んでいました。
 僕は自分が女の声で悲鳴を上げたことに驚き、男も僕の大きな悲鳴に驚きました。

 我に返った僕は、床を這うように移動し自販機コーナーの外に出ました。
 すると、すぐに男も勃起した陰茎の先から透明な体液を垂らしながら僕を追ってきましたが、廊下に出てきたのは男だけではなく、僕の悲鳴を聞いた宿泊客も廊下に出てきました。
 僕が男に襲われていることを、一目で察知したお客さんは
「何してるんだ!」
と男に言い、女性のお客さんは、男の勃起した陰茎を見て、僕に負けない大きさの悲鳴をあげました。

 僕は、この場から逃げることしか頭になかったので、男が乗って来たエレベーターが、まだこの階に停止していたので、すぐにエレベーターに乗り込み、2階上の階に急ぎました。
 そして、僕は泊まっている階を特定されないように、降りる時に上の階のボタンを全て押して、部屋に逃げ込みました。

 僕はホテルの従業員や警察が部屋に来た時のために、女物を全てキャリーバッグに仕舞うことにしました。
 結果的に朝まで眠れなかった僕の部屋には誰も訪ねてくることはありませんでした。
 考えてみれば当然で、この部屋は男名義でチェックインしていたので、捜索の範囲外になっていました。

 しかし、騒ぎを起こした僕は、このホテルに連泊する訳にいかなくなったので、予定が変わったことにして今日の朝にチェックアウトすることにしました。
 フロントの壁には、僕が自販機コーナーに忘れてきたカーディガンが掛かっていて、従業員は女性のお客さんに
「このカーディガンはお客さんのものですか?」
と聞いていました。

 僕の急な予定変更に快く応じ、一泊分の料金しか請求しなかった良心的なホテルでしたが、僕はしばらく利用出来なくなりました。

 これが、僕が性別の壁を越えてしまった日の出来事です。
 この日を境に僕の生活は、180度変わったものになってしまいました。

 今は男として勤めていた会社も辞めていますが、その話は、また気が向いた時にお話しします。

 あっ、期待はしないでくださいね。
 お話の内容は、ごく普通の女の話ですから…。

 拙い文章を最後まで読んで頂きありがとうございました。

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