淫ら煙草


石川啄木の短歌に、こんな一首がある。

うつとりと
本の挿絵に眺め入り、
煙草の煙吹きかけてみる。

中学生だった俺が、学校の図書室でこの歌を初めて見た時、俺は『(作者が)自分と同じ事をしてやがる』と勝手に思いこんでしまった。

俺は小学五年生のころから、ひとりきりになってオナニーをする時、ハダカになってチンチンをいじってるうちに、タバコに火をつけて吹かしはじめる。
そして、オナニーのネタに使ってるエロ本のヌード写真に煙を吹きかけて、快感を高めるのだった。

もちろん小学生の分際でタバコなんてとんでもないことだ。
だからそんなオナニーなんか、たとえば親たちだけが親類の行事で家をあけた夜とかの、とびきりのタイミングでないと出来なかった。

 ○

俺がタバコと淫らとを結びつけるきっかけになった出来事がある。

小学四年生の夏休みが近づいたころだった。

俺は母ちゃんに頼まれて、郊外のおばさんの家に『お礼』を届けに行った。
手早く用事をすませて、俺は駅のホームの端っこに立って、向かいのホームに電車が止まったり通過したりするたびに、デジカメで撮影していた。

(そろそろ帰ろっか。)

俺はホームの端から、電車が停まるところまで歩いて行った……その途中、ホームに立つ広告看板の柱のかげにいる 二人の女子高生の姿に気がついた。

俺は目が点になった。

二人は長い黒髪で、制服もキチンと着ていて、一人はメガネをかけててマジメそのものって感じの女の子なのに、手にタバコを持っていて 唇から煙を吹き出していたんだ。

「どうしたの、タバコがそんなに珍しいの?」
そう声をかけられるまで、俺は二人がタバコを吸ってるのをガン見してしまっていた。

「ご、ごめんなさい!」
俺がその場を逃げようとすると、
「ダメ、こっちにいらっしゃい。」
と、メガネの女の子に腕をつかまれて引きずりこまれた。

「何これ、このカメラで私達がタバコ吸ってるのを盗撮してたのね。」
「そんなこと……してません……」
「きっと子どもに化けた、学校の諜報部員ね。そんなヤツは……」

女の子達は、俺のズボンを脱がしはじめた。
「捕虜じゃ、ふわけ(腑分け)じゃ~!」
「おおぅ、皮かむりながら なかなか立派なものよのぉ~」

俺のチンチンをつまみ上げて、二人は時代劇口調でふざけていた。
もう俺はオナニーを覚えていた。だから二人にチンチンをいじられるうちに 気がゆるんでチンチンがピン立ちになってしまった。
「すごいすごい、もぉコチコチ。」
「ふふっ、感じさせちゃお。」
メガネの女の子が、チンチンを持ち上げて、

ふ───ッ

とキンタマの所に タバコの煙を吹きつけた。
「おやおや、彼 感じたのね。」
「ホント、腰がピクピクッて動いたわね。」

二人にチンチンを触られるうちに、俺は顔に当たるタバコの煙がだんだん心地よくなってきた。
それを察したのか、メガネの女の子は、自分のくわえてたタバコを俺の唇に挟みこんできた。

変だった。タバコなんか嫌いなのに、女の子達にチンチンいじられながら、鼻にタバコの煙のチクチクする刺激を感じるとHな気持ち良さがいっそう強まるんだ。

 ○

今も俺は、オナニーを始めて気分が高まって来るとタバコに火をつける。

煙の臭いをかぐと、チンチンがピン立ちしてちょっとのシゴきで気持ち良さが倍増する。

そして、吹かした煙をエロ画像がうつるタブレットの画面に吹きつけると、そこにうつる女を、俺の煙で犯したような征服感が味わえる。

だけど、射精してしまうと一気にこの臭いが嫌になる。

窓を開けたり、ファンを回したりしてその臭いを追い出してしまう。
ウガイをして口の中の臭いも消しまくる。

俺の本格的オナニーには、まったりとした賢者タイムはないのだ。

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