「男の肌‥匂い Ⅲ」


「匂い Ⅲ」
 去年秋から このブログを始めて、女房とのことを振り返る内に ほかの方のブログも読み、彼Kとのことを思い出して 自分がバイであることを認めざるを得なくなりました。

 そうすると思い当たるのが 今迄記憶の底に隠れていた過去の男との接触の記憶です。と云っても 大した深い関係では無いのですが、大学までの学生生活での バンカラでオープンな、〝マスの 飛ばしっこ〟みたいのは 別にしても、何か 私の身体に滲み付いた〝バイの 匂い〟は、受けたイタズラのほかに こんな甘酸っぱい記憶もあります。

 小雪のチラツく 宿直の夜のことでした。宿直は 技術屋と事務屋が一名ずつですが、事務屋が電話番なのに対し 技術屋は、作業情況の巡視と 製品サンプルの採取の立会いがあります。その日の泊まりの相手は 会社に入ったばかりの若い子でした。私が二十歳を越え 彼が十代の終わりです。彼は東北生まれの 色が白く痩せていましたが肩幅はある、今で云えばショタ風な 額に長い黒髪が掛かる長身の子でした。愛想の好い子で 私が見回りに出ると云うと、〝じゃぁ 布団敷いときますから…〟と云います。

 雪は 本降りにはなら無いものの、巡視中ずっと降り続き 傘無しで出た私は、作業服をジットリ濡らして戻ります。事務所には 自社のコークスを燃やすストーブがあり、側に椅子を置いて それに作業服を干します。下着のまま 少し火にあたっても、人と気の無い ガランとした事務所は寒くて敵わないので、早々に 寝ることにします。寝室に行くと 彼はもう床の中です。まだ起きていて 「ご苦労さま…」と云ってくれます。急いで 彼が敷いた布団に潜り込みましたが、歯がガチガチ当たって 寒くて震えが止まりません。

 ジットして堪えていると 左側に寝ていた彼が、見兼ねたのか 「寒いでしょう… 温めて上げましょうか…」と自分の左手で、私の側の布団の端を 持ち上げます。もう渡りに船で 「いいの…?」と云ったときには彼の懐に飛び込んでいました。それでも まだ身体は震えています。「大丈夫 ですか?」「ウン…ゴメンね 君こそ冷たいだろ…」‥、彼は黙って 自分の左足を私の脛の間に差し込み、私の肩を 抱いてくれます。私は嬉しくてつい 足を弛め、右手で彼の胴を抱いて密着させ 深くガップリ腿を組み合わせます。

 5分程すると どうやら人心地が付き、「ありがとう… 温ったかくなって来た!」「そうですか 良かったですね」と 彼は、私の腿の間の自分の左腿を 私の左腿の内側に擦り付けるようにします。思わず私もそれに応じて 右腿を彼の左腰の上に深く掛け、胸を摺り合せて 全身でピッタリ抱き合い、お互いに お互いの身体を揉みあうようなことになります。〝アッ… 〟ふと気が付くと 気持ち良さに夢中で揉み合っている内に、それまで縮み上がっていたペニスが 何やら脹らみ掛けています…〝これは マズイ!〟。

 思わず腰を引いて 勃起を彼に悟られまいしますが、彼が私の身体を引き付けていて ウマク離せません。あるいはもう 彼は既に私の勃起を感じていそうです。これはもう変に隠すより 口に出してしまった方が良いと思い、「君… ゴメンね。ボク 勃っちゃたんだ」‥ すると意外にも彼は拘らず…と云って恥ずかしがるでも無く、「いいえ… 僕もです」と云います。左手を下げ 手の指先の外側で彼の前に軽く触ってみると、確かに 彼のも勃っています。「そうか… このままでいいぃ?」「はい…」‥ 何か ホッとします。

 何となく 暗黙の諒解が成り立ち、私は左手を彼の首の下に差し込み 右手でシッカリ胴を抱いて、正面から肚を合わせ 首筋を交差させ頬擦りをすると、彼も同じように 抱き返して 頬擦りをします。今考えれば 当然のように、キスをする情況ですが それはしません。お互いのペニスは 肚の間に上向きに収まり、私は 当時ヤッテいた〝布団への 擦り付け〟と同じ情況が、ナマの身体を抱いて 出来るのです。とうとうガマン出来なくなり ペニスの裏を彼の肚に押し着けて、ソロソロと 腰を使ってしまいます。

 恥ずかしいし 浅ましいのは判っていても、ナマの身体を抱いて腰が使えるなんて もう堪りません。〝もう… どう思われてもイイや〟と 覚悟を決めて腰を使い始めたとき、ふと気が付くと 彼も眼を瞑ってソロソロと、ペニスを私の肚に擦り付けて 腰を使い、悶えるように 蠢き始めているのです。〝こいつも「擦り付けマス」を 私の身体でヤッテいる!〟‥ それはゾクゾクするほどの嬉しさでした。その内ペニスは ガマン汁(カウパー汁)でヌルヌルになり、射精寸前になったので 「チョッと 待って…」と少し休みます。

 「イヤだな… 後が…」「何… ですか?」「だってオレの布団 まだ冷たいんだもの…」「…そうですね 二人でそっちへ行って温めれば…」「そうして くれる?…」 彼ももう少しこの情況が続けたいらしく、私の布団に移って 温め合いの再開です。…と云うことは また〝擦り付け〟も再開される訳で、お互い〝射精したらお終いで 後始末が大変…〟と判っているので、寸止めしては 1時間以上もイク・イカ無いの境を揺蕩(たゆた)い、やがて明日の仕事もあるので 「じゃぁ 寝ようか」と私から切り出して終わりました。

 寝る前 私はトイレに立ち、今の温もりを思い出して タップリ2回マスを掻きました。入れ違いにトイレに立った彼も 小便にしては時間が長かったので、恐らく マスを掻いて来たのでしょう。とにかく 彼のコダワリの無さは不思議でした。お互いの 「擦り付けマス」はともかく、東北には 〝肌で 温め合う〟風習があるのでしょうか。その後も彼は その夜のことは全く忘れたように笑顔で対応してくれました。独身時代の性体験には 何かと嫌な面もあるのですが、この思い出だけは 甘酸っぱく忘れることが出来ません。[終わり](「でんでん虫」・「茫々録」 より)

 

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