最強の相棒


奴と出会って2年半が経ち、俺等はバッテリーを組み母校でもある東京の無名校帝実学園を春の選抜大会で初出場初優勝に導いた。
そして今、春夏連覇を狙う俺たちは夏の甲子園の決勝のマウンドで睨み合っていた。
俺は中学3年の時奴と初めて出会い衝撃を受けた。
シニア全国大会ベスト4をかけて奴と戦ったが三打席連続三振に抑え込まれた。今までシニアのスター扱いされていた俺は自分に悔しさが込み上がったが、それと同時に奴の球を受けてみたいと思うようになった。
そしてシニアの全日本でバッテリーを組み準優勝に導き、奴と俺は同じ高校に進学した
1、2年と俺と奴は飛び抜けた活躍を見せたが甲子園は遠かった。
3年になるとプロのスカウトがチェックしに来るようになった。奴は右の大型投手として151キロの速球に、落差の大きいフォークを操り高校ナンバーワン投手として騒がれ、俺は高校通算60本のホームランを打ち、強肩強打の捕手として俺たち二人は野球関係者を賑わせていた。
そして今春夏連覇まであと二人
しかし九回裏ツーアウト二、三塁と絶対絶命、俺のタイムリーと奴のホームランで2対1とリードをしているが、向かえる打者は唯一の1点をホームランで取った4番清崎。
ここまで相手にホームランを打たれたが1、2打席共抑えていた為俺等は抑える自信があった。
しかしベンチの指示は敬遠、俺は悔しさを堪えながら立ち上がり右手を横にのばし敬遠を指示する。
だが奴は帽子を深く被り俺を睨み立ち尽くしたまま投げてこない。
俺は異変を感じタイムを取りマウンドに向かう。
「どうした、気持ちはわかるが、監督の指示だわかったな?」
「悔しくないのか、健司は?」
「悔しいさ、でも俺達だけのプライドだけで勝負はできねぇよ、チームの皆、監督、学校関係者の期待を背負ってるんだ。その為にはここで勝って連覇しなきゃなんねぇんだ」
「わかったよ・・・・なぁ健司?」
「何だよ?」
「俺はプロに行く」
「俺もだよ」
何故奴がこんな事を言うのかわからなかったが答えはすぐにでた。
もう一度敬遠の指示をだし、奴も納得し投げる体勢にはいる、
その時俺は奴が一瞬微笑んだのを見逃さなかった。
奴の球は大きく逸れストライクゾーンへ
かろうじて左手を伸ばし難なく取り、すぐに奴の元へ向かった。
「ホントにプロにいくんだな?」
「あぁ、その為にはこんな所で逃げてなんか、いらんねぇんだ」
「しょうがねぇな、また俺が怒られ役か・・・OK勝負しよ」
「健司、迷惑かけんな」
「もう慣れたよ」
俺等は一瞬だけ目をあわせ微笑む
俺はしゃがみストライクゾーンにミットを構える
球場は歓声が響き、ベンチをみると監督は苦笑いしながら、何も言わずベンチに座っていた。
奴はランナーがいるにもかかわらず振りかぶって俺のミットめがけ豪速球を投げ込む。
ストライク
審判のコールと共に歓声が鳴り響く
ツーストライクと追い込むも2球続けてボールと外れツーストライクツーボール、奴は帽子をとり汗を拭い俺を見て微笑んでいる。
最後はもうあの球しかないという顔だ
奴は俺のだしたサインに頷き奴は振りかぶる
鷲が翼を拡げる様な大きなフォームから放たれる球は俺が見たことのないフォップしながら浮き上がる様な伸びのある球が俺のミットにちかずく。
パンッ!
ストライクバッターアウト審判がコールすると球場全体が物凄い歓喜で鳴り響いた。
電光掲示板には156キロと表示されていた

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