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細い糸


妻の許可を得、昨年娘を連れて別れた元妻の告別式に行ってきました。
娘にとって元妻は私たちを捨てた女性。酷く拒みましたが、「気持ちは理解できる。でも命がけでお前を産んでくれた人だ。最後のお別れだけはしよう」と諭しました。

元妻との離婚後も元義両親とは年賀状、手紙だけで連絡を取り合っていました。「じいじ、ばあばとしてあの子の成長を遠くから楽しみにしたい。娘の不始末は本当に申し訳ない」と元義両親は土下座したのだ。
理由をつけて元義両親に娘を託し、元妻は男と会っていたのです。知らぬこととはいえ元義両親は片棒を担いだ、そんな罪悪感が二人に土下座させたのだろう。元義両親が常識人であることを私は知っている。だから手紙でのやり取りだけは許した。以来、誕生日・入学などの節目にはお祝いも送ってくれました。私も時候の挨拶とともに娘が成長していく写真を送ったりもしました。そんな繋がりだったので電話番号は教えず<住所>という細い糸だけで繋がっていました。そこへ電報が届いたのです。

<○○死亡 理不尽なのは承知 さいごに△△ちゃんにお別れをさせてもらえないだろうか 通夜ーーーーーーーー 告別式ーーーーーーーー>

とあった。私は迷った。元妻とは別れて10年になる。
今更という思い、娘に最後のお別れをという思い。女房に相談すると「△△の気持ちを尊重してあげて…。あなたの気持ちはどうでもいいの!」とピシャリ。
元妻は私と娘を置いて家出同然に消えました。当時、娘は6歳。小学校に入学したばかり。母親が突然いなくなった意味がわからず、ただ泣くばかりの娘。あの時の記憶はまだ娘の中にあるのだろう。娘は16歳の高校2年生になりました。行方不明の元妻。弁護士にお願いし、法的手続きを進めました。幸い、元義両親が自宅を抵当に銀行から借り入れ、慰謝料などの立て替え払いをしてくれたのが助かりました。
それと私の母親が専業主婦だったので、事情を察して同居。実家と我が家(当時購入したばかりのマイホーム)を往復しながら娘の面倒をみてくれました。周りの人たちが手助けしてくれたのがありがたかったです。
一年ほどして大きな転機が訪れます。社内で異部署の交流会がありました。そこで、女房と知り合ったのです。
女房も×1一人娘あり。旦那が浮気をしたので離婚したそうです。
そんな話で盛り上がっていたところ、同期が「捨てられた者どうし、付き合っちゃえよ」と笑いながら。
それがキッカケになり半年ほどで家族デートするようになっていました。このころ裁判で離婚が認められ、結婚する障害はありませんでした。娘も妹ができると喜んでいました。元妻が家を出て二年になるころ家族写真と入籍だけしました。住まいはまだローンが残っている我が家。元妻の物が残っていて違う住まいを提案したのですが「そんなの贅沢よ。いらない物は捨てればいいの…。使える物は使います」と倹約家の女房殿に頭があがりませんw
そんなこんなで幸せな家族の元に電報が届いたのです。

娘を載せて車で向かいました。
会館に到着すると私を見つけて元義父が話しかけてきました。
「迷惑をかけたにも関わらず、足を運んでくれて…」そして隣の娘を見て
「立派になって…」と涙を流しながら娘に話しかけました「高2です」と娘。
10年ぶりに会う元義父は老いていました。警察から連絡があり、元妻が発見された経緯を話してくれた。
いわゆる事件性はなく孤独死だったそうです。数日たって家主が部屋に入り発見したそうです。遺体を引き取るとき無理を言って義父は部屋を見せてもらいました。狭い、風呂もトイレもない6畳一間のアパート。数着の服と昔の家族の写真。壁に貼ってあったカレンダーに娘の誕生日が記されていたそうです。
だから、理不尽なお願いだとわかっていても△△ちゃんに最後のお別れに来てもらいたかった、と義父は心中を吐露しました。遺影の元妻は若かった。写真は間違いなくかつて私が愛した元妻でした。10年、どこでどんな暮らしをしていたのだろう。過去は戻せないけど、もっと早く連絡くれれば良かったのに…。馬鹿だな。と私は思った。
焼香をしながら娘は遺影の前で涙を流していました。元妻の面影が蘇み返ったのかもしれません。
私には遺影が、<ごめんなさい。ありがとう。そして、さようなら…>と語りかけているように見えました。焼香を終えると出棺を待たずに帰りました。懐かしい元妻の親戚、憔悴しきった元義両親、これ以上同じ空間にはいられなかったのです。

元妻の死。一人娘なので老いた元義両親には何も残りません。娘も数年すれば成人します。
そのときは自分の判断で「おじいちゃん、おばあちゃん」と呼んで訪問しても差し支えがありません。
我が家は女房のことをママと呼び、喧嘩もするが仲のいい姉妹。関係は何一つ変わらないでしょう。
人には天寿があります。そのときが来るまで手紙の細い糸は切らないでおこう。泣き疲れたのか助手席の娘は眠っています。運転しながらそんなことを考えていました。惜別と細い糸。複雑な胸中を綴らせていただきました。ありがとうございました。

 

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みんなのコメント

1 名前:名無しさん2026年08月17日(月) 13時57分09秒

どうも、ここに書く内容では無いようでは?ごめん