偶然の神の微笑(1)


久しく妻と二人で夜外出することもなかったが、子供たちが各自の生活を始めたのにつれて、又二人で飲みに行くことが習慣になった。暇な土曜に限られるし、二人共に勤めを持っているので月に一、二度程度であるが若い頃とは違ってまた楽しいものである。行き先はいつのまにかKホテルのラウンジと固定してしまい、二人で静かに話のできるカウンターの角のほうに場所も決まってしまった。
夫婦でこんな場所にこんな夜遅くに来る珍しさもあってか、ウエイターにすぐ顔を憶えられて、黙って座っていてもオーダーは
『ウンいつもの』だけで済むようになった。
そんな土曜日を何度かすごした頃、隣の席のご主人から声をかけられた。
「良くご一緒いたしますね。私こういう者で。私らも土曜だけの夫婦の楽しみでしてね」
と名刺を出された。連れの女性は色白でピンクのルージュの良く似合う人で、なんとなく見憶えがあるような気がしたが、妻は何度も隣合せに席を取ったことをはっきりと憶えていた。赤の他人同士だが同じような生活をしているのが面白く、いろいろ個人的なことまで話し合うような関係となった。いつのまにかKホテルに飲みにゆくのが、小山さん夫婦に会える楽しみも加わった。
ある晩、もう帰ろうとしているところへ二人がやってきた。なんと彼らはラブホテルからの帰りだったのだが、そんなことも契機となってか、セックスまでが話題の中でオープンになってしまった。

小山さんはHT誌の愛読者だそうで、何冊かをまとめて借りて読んだが、こんな世界もあるのかと週刊誌では知っていても驚いた。小山さん夫婦はこの世界を知ってはいても、飛び込んで実際に行なってみる勇気もないし、むしろしたくともできないもどかしさを楽しんでいる普通の人たちだった。
でもHT誌の中には我々のような人たちが、この世界に足を踏み入れた例が書いてあり、あるいは我々にもこんな、チャンスがあるかもしれないと妻と寝物語に語った。

その時妻が
「一度だけだったら。小山さんだったら興味あるな」
と意外とポジティブな反応をしたので、
「どうして、小山さんなら?」
「知らない人じゃいやよ。小山さん、掌が暖かそうだから。奥さんも清潔そうだもん」
そんな会話の後の夜は、二人共小山さんの夫婦を想像して燃えた。

しばらくたって小山さんが、このKホテルにスワッピングルームがあったとニュースを仕入れてきた。
もちろん品格のあるKホテルだから、そのためではなく間取りがそれに使えそうだと、小山さんが客を案内して判ったのだそうだ。
それから二組の夫婦の間で交際のことが現実味を帯びた話になって、小山さんの積極性に引きずられて、
「奥さん、私みたいなのはお嫌いですか?」
という小山さんの問い掛けに妻は、
「主人さえ許してくれれば」とささやくような声で答えた。
「伊田さんはもちろんOKですよね」
と私に聞かれ、
「えっ、えっ、ええー」と戸惑いながらあやふやな答をした。
追っかけるようなあわただしさで、小山さんが妻に
「奥さんもですよね?」
と聞くとコックリとうなずいて、
「あなた、恥ずかしいじゃないの」
と私の背中に顔を隠したので皆で大笑いとなった。
「じゃ、次の時はかならずね」
小山さんが4人に申し渡すように言うと、連絡をくれることになって分かれた。

 

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続き: 偶然の神の微笑(2) また濡れてきたセックスに挿入した二指をゆっくりと動かすと


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