狙われていた詩織


「ねえ、そこの綺麗なカノジョ。俺と泳がない?」

…これまでも、町並みや駅前なんかで何度こんな風に誘われただろう。
まさかと思ったけれどプールの中でまで、こんな風に誘われるとは思わなかった。
「間に合ってますから」
バカなナンパ男にそっぽを向いて詩織は答える。
こんな風に答えるのも、もう慣れっこだ。
それにもう、ほとんど嘘ではない。
「詩織、ごめんね?売り場が混んでてさ」
「ありがと、拓哉君」
暑いのに、わざわざソフトクリームを買ってきてくれた彼女の幼馴染の拓哉を見て、舌打ちしながら、真っ黒に日焼けしたその『バカ男』は去っていった。
「知り合い?」
「うふふ、そんなわけないじゃない」
渡してくれたソフトクリームをちょっとだけ舐めて、詩織は笑う。
自分と隣り合った椅子に座って今、ソフトクリームの冷たさに目を白黒させている彼を見てるとなんだか嬉しくなってきて、ちょっと悪戯しちゃえなんて思ってしまう。
「あれ、詩織?どこだ?」
突然いたずら心を起こしてウォータースライダーのてっぺんに駆け上った。
「きゃーっ!!」
脅かすつもりで思い切り、小さな頃みたいに両手両足で「ばんざい」しながらスライダーを滑っていった詩織を見つけて、拓哉は目を真ん丸くしていた。
「ふぅ、ふぅ…あはは、驚いた?」
詩織の腕を取って引っ張り上げてくれながら、彼はふくれっ面で、
「十分驚いたよ」
「うふふ、さっきの拓哉君の顔ったら」
そんな風に戯れている彼らの姿を先ほどの『バカなナンパ男』が見つめていたのを、詩織は知らなかった。

「じゃ、そろそろ帰る?」
「うん」
楽しい時間はあっという間に過ぎて、気がつけばもう「ナイター営業」の時間になっていた。
(早く帰らないと心配するよね)
自分へ言い聞かせて、詩織は更衣室の中へ足を踏み入れる。
ナイター営業をしているとは言っても、さすがにもう人影はまばらになっていて、黄昏の夕日が心もとなく窓から差し込んでいて、更衣室の中はどことなく薄暗い。
彼女独りしかいないその更衣室の中で、
「シャワー…浴びていこうかな」
口の中で呟いて、詩織は隣接しているシャワー室の扉のドアノブへ手をかけたそのとき…
「おっと、声出すなよ?」
背後からその手を抑えた、もう一つの日焼けして大きな手に、思わず立ちすくんだ。
「シャワー、浴びるんだったら手伝うぜ?」
「貴方はさっきの!?で、出て行ってください!!分かってると思うけど、ここは女性の更衣室ですから!」
「そっちこそ、自分の状況わかってんの?」
「えっ?」
眉を思い切りしかめながら、詩織はその男の顔を振り仰いだ。
「鍵かけたら誰も入ってこねーし、声も聞こえねーよ」
「あ…!」
言いながら、男は詩織の手を握り締めたその手でドアノブを回す。
否応なしにシャワー室の中へ押し込まれて、詩織はそれでも
「ひ、人を呼びます」
気丈にそう言ったのだが、
「…さっき、アンタが股を広げてスライダー滑ってた時に、どうしてもヤリたくなったんだよ。あんた可愛いし、スタイルもいいからさ。あんなエロいかっこしてたら犯されても文句言えねーよ」
「帰ってください!帰って!!」
男の勝手な言い分が彼女の声を震わせる。
「そういうわけだからさ、ヤラせてよ。」
狭いシャワー室の隅へ詩織を追い詰めていきながら、男は後ろ手でシャワーのコックをひねる。
勢いよく温水が流れ出すのと同時に、男が詩織に迫ってきた。

「!!」
叫ぼうとした詩織の唇を、男のタバコ臭いそれがふさぐ。
勢いよく流れているシャワーの水は、容赦なくその頬や額や髪を濡らして、
「ふ…あ…」
尖った舌で舐られている詩織の唇へも伝い落ちていった。
「あぅ!」
それでも舌の侵入は許すまいと食いしばっていた詩織の真珠色のその歯は、片側だけずらされたビキニから覗いた彼女の白い胸へ食い込む手で無理やり開かされた。
待ち構えていた男の舌は、すかさずそこから侵入して彼女の甘い舌を自分のそれと絡め、溢れる唾液をすすった。
(や、だ…こんなの…っ!)
シャワーの音よりも、男がわざとぴちゃぴちゃと立てている舌の音がより強く詩織の耳へ響いてきて、詩織に女の声をあげさせる。
「ふあ…あゥ、んっ」
彼女の胸を強弱をつけて弄ぶ男の手が、おぞましさよりも甘い疼きを与え、救いを求める叫びをむしろ甘いそれに変えてしまった。
「俺…上手いだろ?」
思う様、詩織の唇と舌を汚して、やっと男の唇は離れた。
「アンタ、マジで色っぽいわ…余計そそられるね」
その温水は涙ぐんでそっぽを向いた詩織の白いうなじや胸の谷間へ流れ続けて、冷たい詩織の肌を朱に染めていく。
「泣き顔もエロいね。あんたみたいな可愛い子を犯してグチャグチャにするの最高だわ」
「ひう!」
耳朶からうなじへ流れる水を逆に上るように、男の熱い舌がぞろりと這った。
耳朶の裏側へも尖らせた舌を這わせながら、男はさらに囁く。
「あんたの可愛いマンコ、俺の精子でいっぱいにしてやるから」
囁きながら、男の指はいつか尖ってきた胸の蕾を爪先でカリッと擦り、 押し潰したりを繰り返す。
(こんな、男に…)
抵抗することは諦めたが、感じるまいと唇を噛む詩織。
「…あ!」
だが、水の流れにそって、その尖った胸の蕾を男の尖った舌が這った時この上なく甘い疼きを彼女へ伝えた。
「ふあ…あん、ん…んっ」
そして一度声を出すと、もう止められなかった。
蕾を軽やかに流れていく温水と、それを転がす男の舌が、不思議な甘いリズムになって詩織の肌を震えさせる。
「声上げても大丈夫だぜ?シャワーの音で聞こえないからさ」
言いながら、男は胸の蕾へ軽く歯を立てた。
(感じちゃ、いけない…感じたくない)
片手の甲を唇へ当てながら、詩織はそれでも、男に愛撫されていない、まだ露になっていない片側の胸のふくらみの先が、痛いほどに尖っていることを嫌でも意識せざるを得なかった。
「…紐のビキニショーツって便利だね、こういう時」
「あっ!や…っ!!」
するり、と器用にビキニショーツの右側を結ぶ紐を解き、その痕を軽く人差し指の腹で撫でる男の愛撫を欲して止まない。
水でしっとりと濡れたショーツは下へ落ちることなく、半分ほどずれて彼女の左の腰からぶらさがった。
「意外とあんたも気持ちよくなってんじゃないの?」
秘所を手のひらで弄びながら、男はもう片方の手で胸のふくらみを愛撫するのをやめようとしない。
「ひあ…やぁゥ!」
「だってよ、ほら」
しばらく茂みを弄んでいた男の指が、するりと詩織の足の付け根へ潜り込み、すでに疼ききっていた彼女の花弁を撫で上げる。
「これ…シャワーじゃねえもんな?」
「…っ」
一瞬だが、目前にさらされたその指の間にねっとりとした液体が糸を引いていて、シャワーの水流に流されたのを彼女は見た。
「後ろから犯ってやるよ。ケツ向けろ」
屈辱に頬を一気に赤く染め、詩織は涙を堪えながらのろのろと後ろを向く。
「きゃうっ!!」
背後から、突然ずぶりと花弁へ差し込まれた三本の指を締め上げて、彼女はついに甘い声を上げながら背中を反らせていた。
その指が潜り込んだ瞬間、彼女の花弁は強烈な快感を彼女の背筋へ伝えたのだ。
「声も可愛いんだな」
男もまた、荒い呼吸にかすれた声で詩織の耳朶を食みながら囁く。
「もっともっと、叫べよ」
「……ひ!?」
彼女の花弁の中の襞を容赦なく擦り上げた指は、勢いよく抜かれざま、合わせ目にある小さなぽっちりを軽く弾く。
初めて味わう強烈な快感に絶え間なく足を震わせ、がっくりと頭を俯けて壁を両手でつかむようにしながら、詩織は喘いでいた。
「あ…?」
突如、男の指の動きがやんだかと思うと、その指は下から上へ彼女の内股のとある場所をなぞった。
「あはは!濡れすぎだろ!」
男の声が、耳元でからかうように言う。
その声に羞恥ではなく、ぞくりとした疼きを覚え、詩織もまた熱い息を吐いた。
その吐息が終わるか終わらぬうちに、
「…う…ああああーっ!!」
詩織は叫んで背筋を反らせた。
詩織の花弁が背後から侵入してくる男のそれを受け入れ、悦び蠢いた。
浅く、深く、それは詩織を貫いて花弁の中の襞を擦る。
日焼けした男の片手が背後から伸び、ビキニブラを上へずらして、 彼女の胸のふくらみを、乱暴に愛し始める。
「しっかり支えてろよ」
獣のような息を吐きながら、男は空いた片手を詩織の茂みへ潜り込ませた。
「は、ああ、あああゥ…あ、あ…ッ!」
激しく弄ばれて敏感になっていたその芽を再び擦られて、詩織の背中は一層激しく反り、花弁はさらに強く男のモノを締め上げて、
(あ…だ…め…真っ白に…なっちゃ…う)
虚ろに見開かれた詩織の目の前で、火花は散り続けた。
自分で動く時に与えられる刺激とはまた違う場所に与えられる強烈な疼きは、やがて体中に広がり、
「…かはゥ…!」
半開きの唇から透明な唾液を滴らせ、詩織は白い肌を痙攣させた。
弛緩して力が抜け、その場に崩れようとする体に男はさらピストンを叩き込む。
「やめ…あうっ…うっ…かふっ…っ!」
やめてという拒絶の言葉は声にならなかった。
男は詩織の腰を掴むと、壁に押し付けるようにして貫いた。
壁と男にプレスされるようにして貫かれる詩織は、ただ与えられ続ける刺激に耐え切れず、男がイクまでの間、ただガクガクと体を震わせながら涎を流し続けた。
「出すぞ!」
男は叫ぶと同時に、限りなく熱い物を彼女の花弁へ注ぎこんだ。
「ひっ…あ、あ…あついっ…」
もがく詩織の尻をがっしりと押さえながら男は射精の快感に打ち震える。
「…アンタ、やっぱり最高だったよ。このまま1回きりで終わるのが勿体ないわ」
己の欲望を詩織の中へ注ぎきり、男はやっと彼女を解放して笑う。
「…もう…いい…でしょ…私の前に現れないでください」
「はいはい。ポリにチクられてもイヤだしね」
かすかな声で訴える自分の視界の中、男のモノと自分の尻をつなぐ白いものがシャワーに流されていくのをぼんやりと眺めながら、詩織はそのまま床へずるずると尻をつく。
「あのショボイ彼氏にお礼言っといて。ごちそうさんって」
言い捨てて、男はシャワー室の扉を開け、出て行った。
(…流れてる…流さなきゃ)
尻をついたままの足の付け根から、どろりと白いものが流れていくのをぼんやりと見ながら、詩織は立ち上がる。
(流れて…流れて)

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