お稲荷さん異聞


 その日は午後から雲行きが怪しかった。稲光が一瞬したかと思うとぽつぽつと大粒の雨が落ちてきた。

 「こちらにはよく来られるんですか」

 「初めてなんです」

 そう答えたお客はしかし初老の男で

 「この町の方ですか」

 との問いに

 「県内です」

 と答えた。

 「私はこの町に長く住んでいるので」

 「ああ」

 男は合点がいったというように下を向いて笑った。

 「何。どうしたんですか」

 「いや。なんでも」

 これだけの会話でも言葉のアクセントや抑揚から男が遠くから特に都会から来た客ではないことが分かって少しほっとした。

 「ここのところ雨が多いですよね。お湯加減どうですか」

 そう言いつつも湯船に入って軽いキス。

 「たまんね~な~」

 「はい」

 男の手をおっぱいに誘導。

 「小さいですけどね」

 私ゆき30歳(四捨五入)。

 「ああ」

 「ゆ・き。たまんね~な~って褒められてるんですよね」

 スレンダー長身。おっぱいとおしりは控えめ。

 ボーイッシュなショートカットで指名競争ナンバーワン。

 「ああ」

 男はあちらの世界をさまよっているようだった。

 69の最中に暴発。

 よだれを垂らすお稲荷にTKOよろしくバスタオルをかぶせた。

 
 「お茶飲んでいいですか」

 紙コップにお茶を注ぎ男にも手渡すと、

 「このゴールデンシャワーは。お茶か」

 って何を言っているの。

 「昔駐車場でトイレが間に合わなくて車の陰で用を足した娘の右のお尻には小さなほくろがあった」

 『え゛~。まんま私なんですけど~』

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