近郊各停の女


 夏が来ればといってもまだ梅雨の走りで半そでのシャツでは肌寒さを感じる今時分の季節のことだった。

 とあるローカル線の始発は女子高生で込み合っていた。その中に見覚えのある少女が。姪っ子のまゆだった。

 向こうもこちらに気づいたらしく目と目があったがすぐに目をそらし友人との会話に花を咲かせていた。

 次の駅まで10分程度。ドアの側で外を見ながらたたずむ少女は果たして次の駅で降りて行った。

 『こんな偶然もあるんだな。昼日中の下校とは中間テストでもあるのか』

 その時ふと脳裏に浮かんだのは2年前の夏のことだった。

 「おじさん。宿題手伝って」

 まゆ。花柄のTシャツにハーフパンツ。

 「プール焼けしたのか」

 小麦色の細い生足は小学生のようにしか見えない。

 確かスク水二階のベランダに干してあったな。

 こんがり焼けた肌も水着の部分は白かったりするのか。

 「おじさん。聞いてる」

 お、おおう。

 あっちの世界に行くのをかろうじて引き留められた。

 「おじさん。エロいこと考えてなかったよね。スク水に鼻を押し当てたいとか、水着のあとにべろちゅーしたいとか何とか」

 お察しのとおりだがもう帰る時間だ。

 駅まで何となくついてきたまゆ。

 「じゃここで」

 「うん」

 来た道を引き返すまゆが振り返った。時間が止まったかのようにそれは長く感じた。

 が、ホームに電車が入ってきて急ぎ電車に乗り込んだ。

 あのときホームに降りたまゆも振り返っていたのだろうか。

 

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