妻の約束


 ある日、会社で仕事をしていると、妻の勤め先から「妻が救急車で病院に運ばれた」と連絡してきました。
私が病院に駆けつけた時、医師の診察が終わったところで、妻は処置室に向かう途中でした。
医師は私に「流産です、胎児は2~3カ月ですね。しばらく入院したいただきます」と診断結果を告げました。
私は頭を思いっきり殴られたような気がしました。妻とは一年近く夫婦の営みが無かったからです。
後は妻の母に任せて、私は妻が入院できるよう寝間着や下着、身の周りの物を用意しに帰宅しました。
下着を取り出す時、整理ダンスをすべて開けてみましたが、私が知っている物ばかりで変わった様子はありませんでした
そして、いつも妻が使ってる乳液だけでもと思って鏡台の前を探していると、鏡台の後ろに隠すように紙袋がありました
中には、私の見たことのない可愛い薄ピンクのネグリジェと水色の花柄のブラジャーとショーツが入っていました。
確かに小柄で若々しく見える妻に似合うかもしれないが、34歳の女性が着るには恥ずかしいのではないか、
それとも、相手の男性の好みに合わせているのかとも思いました。用意した物を持って行くと、妻は処置も終わり、
病室にいました。しばらく妻の母と3人で入院間のことを話して、面会時間いっぱいまでいました。
 家に帰って、部屋で一人になると私と妻、相手の男性と妻のことで頭の中がいっぱいになり、眠れませんでした。
私が37歳の時、(妻・悠子は34歳)自営業に失敗して、会社勤めをするようになりました。初めての仕事なので
覚えるのに精一杯で、家庭や家族を顧みる余裕がありませんでした。その頃、妻は趣味の草花を通じて、
Iさんと言う高齢の女性と親しくなり、休日には朝出掛けて、夕方に帰って来るようになりました。
珍しい花の苗をもらったとか、Iさん手作りの薬膳料理をご馳走してもらったとか、目を輝かせて話してくれました。
Iさんには息子(茂樹・44歳・通称「しげちゃん」)があり、薬草の研究に熱心で、日本各地の山を歩いて薬草の採取し薬草園で栽培しいることや背が高く、体格が良い人だとも言いました。そして独身であることも。
ある時から、妻がIさん宅へ遊びに行った日は必ず「しげちゃん」と言う言葉が出てきました。
今日は薬草園でしげちゃんと一緒に苗木を植えたとか、薬草から漢方薬を作り方をしげちゃんに教えてもらったとか
いつも、嬉しそうに話していました。そんなある日、Iさんが怪我をして動けない時がありました。
休日前だけでもIさん宅に泊めてもらって看病したいと言うので、私も賛成しました。
一カ月ほどIさん宅に通った頃から、妻の様子が変わった来ました。「しげちゃん」と言う言葉も出てこなくなり、
物思いに耽っているようで、口数が少なくなってきました。妻は自分がもうIさん宅に泊まりに行く必要がなくなり、
寂しがってるのだと私は思いました。次の土曜日、私は休日出勤で会社で仕事をしていると、妻から電話があり
「今晩、Iさん宅に泊めてもらいます、食事の用意はしておきました」と言うのです。職場なので強くは反論できず
黙認と言う形で承諾してしまいました。家に帰ると妻の姿はありませんでした。いくら鈍感で、想像力の乏しい私でも
妻をIさん宅に引き付けるのは「しげちゃん」であることが分かってきました。仕事のことで妻を顧みなかった私にも
責任があると言う負い目から、妻がIさん宅に泊まりに行くのを強くは止めませんでした。
これまでのことを事細かに思い返しては反省、これからどうなるのか心配しながら、いつしか眠っていました。
次の日は午前中は仕事の都合で病院に行けず、昼休みの時間に入院の手続きに行きました。
ついでに妻の病室を覗いたところ、いませんでした。同室の女性が「さっき、旦那さんが来られて一緒に出られました」
と言います。私は内心(私が旦那なんだけど)と思いながら礼を言って、部屋から出ました。
そして、病院の玄関を入る時、病院の脇から裏の公園に行く、二人連れを見掛けたのを思い出し、公園へ行ってみました
公園には誰もいませんでしたが、東屋に男性の後ろ姿が見えました。東屋の病院の側に板塀が張り巡らされていました
私は遠回りして、板塀に近づき、隙間から覗くと真近に男性の横顔が見え、眉の濃い知的な感じの面立ちでした。
その足元に女性が跪き、頭を前後に振っているのが見えました。女性の頭に男性が両手で挟むように置いていたので
女性が誰かは分かりませんが、男性の性器をフェラしている様でした。しばらくして男性が「悠子、もういいよ、誰かに
見つかるといけないから」と言うと、女性が顔を上げ「私、今週はしげちゃんの所へ行けないのよ、寂しくないの?」と
言って、再びフェラを始じめました。確かにその顔は私の妻でした。しばらくその状態が続き、しげちゃんに射精感が来たのか、一瞬身体が強張り、「うっ」と呻くと妻の頭は動かなくなりました。そしてきれいに男の性器を舐め上げ、
ズボンの中へ入れジッパーを上げていました。しげちゃんがベンチに座り、その膝に妻が抱きかかえられるように座ると
大きなお父さんが小さな娘を抱きかかえてるように見えました。妻が「ねえ、感じてくれた?気持ちよかった?」と
尋ねると、しげちゃんは「うん、すごく感じた!俺、悠子のこと大好きだよ、退院したらまた来てくれるだろう?」と
答えていました。妻は「うん、きっと行く、今度はちゃんとしげちゃんの赤ちゃん産むからね、いっぱい愛してね」と
言いながら、しげちゃんの首を抱えながらキスしていました。私は会社へ帰る時間もあったので、その場をそっと離れ
帰社しました。程なく妻が退院することになりましたが、私は抵抗があり、仕事を口実に妻の母に行ってもらいました。
そのあくる日、会社から帰宅して食事を済ませると、妻は床に手を付いて「今度のことは、私の気の緩みから生じたことです。離婚してください、なにもいりません。ただ子供(私たち夫婦に男の子が一人います。寮のある私立中学に在籍していて不在)だけには会せて下さい」と言い、頭を下げました。私は黙っていました。続けて「これからも今まで通り
毎週休日前にはしげちゃんに会いに行きます」とはっきり言いました。私は黙って、その場を去り、その日から空いている子供の部屋で寝ています。離婚が一番いいのか、それとも私が辛抱していればいいのか、選択に困ってしまいました。
私の優柔不断さがそれに答えることができませんでした。毎日、そのことばかり考えて、きっぱりと決断できない自身を恨んだことも度々です。しかし、その答えは私が出すことはありませんでした。半年ほどそんな状態が続いたある日、
突然、妻が会社に電話をしてきて、しげちゃんが山で薬草の採取中に足を滑らせて、谷から転落して怪我をしたと言うのです。妻が電話の向こうで泣いているのが分かりました。そしてすぐにIさん宅へ行くと言いました。
私が会社から帰ると、妻の自動車はあるのに家の中は真っ暗でした。そっと部屋の前に行くと、妻の押し殺したような泣き声が聞こえてきました。その日はそのままにしておきました。朝、妻も仕事があるので起きてきたので、しげちゃんのことを聞くと、亡くなったそうです。葬儀だけでも行きたいと言うので、私は当然行くべきだと答えておきました。
妻としげちゃんは流産したとは言え、子供までなした仲なのですから。葬儀は日曜日に決まり、妻は朝からIさん宅に出掛けて行きました。私は妻の部屋に入り、大きな紙袋を三つ見つけました。妻がしげちゃんと一緒にいる時に使った衣服
肌着、身の回り品など、しげちゃんの親族に見られないうちに持って帰ると予想していたからです。ミニのワンピース
見覚えのある薄ピンクのネグリジェ、鮮やかな色地に可愛い花柄の入った下着類、若い女性向けの物ばかりでした。
これがしげちゃんの好みで、彼とって妻は若い女性以上に可愛い存在だったかも知れません。そして写真は一枚だけ
日付は妻が退院した次の日曜日になっていました。妻としげちゃんが一本の苗木を一緒に植えようとしているところです
二人とも幸せそうな笑顔で、本当の夫婦のように見えました。私はその品々を妻がどうするか見守ることにしました。
一週間ほどして部屋を覗くと、それらすべてが無くなっていました。きっと家庭のごみ類と一緒に出してしまったと思います。二カ月もするとすっかりしげちゃんのことも忘れたように元気を取り戻してきました。私も妻と離婚せずによかったと思うようになっていました。そんなある日の朝、吐き気がすると言って食事をしませんでした。私は、流産で入院したことを思い出し、必ず病院で診てもらうよう強く言って仕事に出掛けました。妻は午前中、休暇を取って病院に行ったそうです。結果は妊娠、3カ月、女の子だそうです。つまり、妻のお腹の赤ちゃんはしげちゃんの子供です。
妻は私に一言「産んでもいいかな」と言いました。妻が公園の東屋でしげちゃんと約束していたことを思い出しました。
無性に腹立ちを覚え、「だめだ!!」と言うべきなのに、私は「いいよ、君さえよければ」と言ってしまいました。
妻は本当に心からしげちゃんのことを愛していたのだろうか、それとも一時的な性的な結び付きからくる快楽に溺れていただけなのだろうか、私には全く想像も理解もできません。もしかしたら妻にも分からないことかもしれません。
いずれにしても、どこまでもしげちゃんは私達に付き纏って来るような気がしました。
 そして今年、女の子「悠香」小学校に入学しました。妻に似てとても可愛い顔です、目元から額にかけてはしげちゃんと祖母に当たるIさんに似て知的な感じがします。きっと、将来は美人になると思っています。そして何より嬉しいのは、私のことを「パパ―」と言いながら抱き着いてきてくれることです。今ではしげちゃんに感謝しています。

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