妻と元カレが運命的な再会をして……


妻とは、結婚してもう14年経ちます。二人とも今年40歳で、子供も二人います。中学2年生の息子と、小学6年生の娘がいて、二人とも私ではなく妻に似てくれて、美男美女です。
妻はぱっちりした二重まぶたで、日本人離れしたエキゾチックな顔の美人です。ハーフとかに間違えられることも多いですが、100%日本人です。

そんな妻と私なんかが付き合うようになったきっかけは、当時私がバイトしていた先の、同僚の女性の紹介でした。
当時、妻は付き合っていた男性に浮気をされて、その上捨てられてしまって酷く落ち込んでいたそうで、そんな妻を元気づけてあげてと、バイトの同僚の女性に紹介されました。

初めて妻に会ったとき、あまりの美しさに言葉を失いました。そして、私が彼女と付き合えるはずもないなとあきらめました。

なので、私は本当に、単に彼女を元気づけようと行動しました。一緒に遊びに行ったり食事をしたり、下心なく、ただ元気づけようと明るく振る舞いました。
そんな風に過ごしているうちに、いつの間にか恋人同士になれました。付き合い始めたばかりの頃は、元カレの影が色濃く感じられましたし、ため息をつく彼女を見ては、私も胸が痛かったです。忘れられないんだろうな……そう思うと、私は自分がとても無力に感じました。

でも、そんな影もどんどんなくなっていき、妻は明るさを取り戻していきました。そして数年後、何とか結婚までこぎ着けました。その頃には、もう元カレの影は完全に消えていました。そして、私もそんな事は気にもしなくなっていきました。
その元カレは、間違いなく私よりもいい男だったと思いますが、私が彼女と一緒にすごした長い時間が、私に力を与えてくれたのだと思います。

今は、私は独立して自営で仕事をしていて、妻には経理の仕事を自宅で手伝ってもらったりしています。仕事も何とか順調で、今年家を建てることも出来ました。

仕事で疲れて家に帰ると、庭からリビングの様子が見え、家族が楽しそうにリビングで集っているのを見ると、本当に心から幸せだと思えます。
『おっかえり~』
ドアを開けると、妻の元気な声が響きます。妻は昔から、黙っていると冷たい印象がしてしまうくらいに整った顔の美人でしたが、中身は本当に可愛らしい子供みたいな女性でした。
結婚して長いのに、いつも玄関に迎えに来てくれて、無邪気で屈託のない笑顔で迎えてくれます。
そして、少し遅れて子供達も、
『パパお帰りなさい!』
「お腹空いたよ! 早く食べようよっ!」
と、玄関まで来てくれます。

私は、疲れが溶けていくのを感じながら、私がこんなに幸せで良いのかな? と、自問してしまいます。あの時、彼氏に振られた直後で、自暴自棄になっていた彼女の弱みにつけ込んだだけだったのでは? 卑怯なやり方だったのでは? 私ではなく、他にもっと彼女を幸せに出来る男がいたのでは? そんなネガティブな気持ちを持ってしまいます。

私は、彼女を幸せにするため、彼女にふさわしい男になるため、全力を尽くしてきたつもりです。でも、幸せを感じれば感じるほど、どうしてもそんなネガティブな気持ちが出てきてしまいます。

そんな思いは押し隠し、楽しく食事を始めました。
『ママ、何かご機嫌だね。良い事あったの?』
娘が妻に聞きます。
『わかる? 良い事あったんだ~』
ご機嫌な様子で答える妻。確かに、今日はいつも以上に明るい気がしました。

「なにがあったの?」
息子も、興味がわいたようで聞きました。

『ないしょ~。でも、生きてて良かったわ』
ニコニコとしながら答える妻。

『なになに!? 教えてよぉ~!』
娘は、そんな風に食い下がります。
『えっとねぇ、長年喉に刺さってた魚の骨が取れたんだよ』
と、笑いながら答える妻。
「なんだよそれ」
『ちゃんと教えてよぉ!』
子供達に言われても、はぐらかす妻。でも、本当に楽しそうで、何があったのかはわかりませんでしたが、私まで嬉しい気持ちになりました。

でも、それは私が考えているようなことではありませんでした……。

それを知ったのは、本当に偶然でした。子供達と同じで、妻に起きた”良い事”が気になっていた私は、妻がSNSをやっていたことを思い出しました。
音楽グループのファンクラブ的なコミュニティに入るためにやっていたはずで、オフ会みたいなものにも何回か参加していたはずです。といっても、女性しか興味を持たないようなグループのコミュニティなので、変な心配はしていませんでした。実際、オフ会の時の写真も見せてもらいましたが、女性しか映っていませんでした。

私は、薄い記憶を手がかりに、彼女のアカウントページを探しました。そしてそれはすぐに見つかりました。そこにある日記みたいなものを読んでも、そのグループの活動のこと、曲の感想などしか書いてありませんでしたが、あのご機嫌だった日の書込みに、意味のわからないモノがありました。

”最後まで面倒を見てくれて、天国に見送ってくれてたこと、本当に、本当に感謝!”
一ミリも意味がわからない書込みでしたが、多分これがご機嫌の理由なんだなと思いました。そして、特に怪しい感じもしなかったので、ここで調べるのを止めました。
何となく、プライベートを覗き見るのは、夫婦であっても良くないなと思ったからですが、今思えば失敗でした……。時間を戻せるのなら、この時に戻したいです。

そして、日々は何も変わらず流れていきました。でも、私にもう少し注意力があれば、妻の変化に気付くことが出来ていたのかもしれません。妻は、ダイエットして体重を落としたり、適当な安い美容室から、子供が出来る前に行っていたようなオシャレな美容室に変えたりしていました。
元々が充分に綺麗な妻なので、そんな変化に気がつけなかった私は、夫失格なのかもしれません。

あのSNSを調べた日から、数ヶ月経ったある日の日曜日、
『ママ、綺麗になったね。髪もツヤツヤになった!』
と、娘が言いました。
『そう? もともと綺麗でしょ?』
と、笑いながら言う妻。
「ホントだ。何か、肌も若返った? て言うか、痩せたでしょ!」
と、息子も言いました。

この言葉で、私は妻の変化に気がつきました。
「本当だね。どうしたの?」
私は、気の利いた言葉も言えず、そんな事しか言えませんでした。
『今さら? パパも綺麗な私の方が良いでしょ? 頑張ったんだから!』
と、少しすねたような顔で言いました。でも、そんな表情も可愛いと思いました。
そして、その夜は、本当に久しぶりに妻と愛し合いました。と言っても、子供が二人もいるので、声を殺しながら、音も立てないように気をつけながらの行為で、ムードも何もなかったですが、
「真希、愛してる、愛してる」
と、何度も小声で言いながら、静かに愛し合いました。

終わった後、妻は抱きついて甘えてきました。もともと甘えん坊の妻ですが、ここ1年以上……下手したら2年近くセックスをしていなかったので、こんな風にイチャイチャするのも2年ぶりだったのかもしれません。

そっと髪を撫でると、妻は気持ちよさそうに目を閉じ、キスをせがんできました。私は、やっぱりたまには二人の時間を作らなければなと、深く反省しました。
しばらく抱き合っていましたが、何となく妻の様子が変で、顔を見て見ると目の端に涙みたいなものが見えました。私は、
「ど、どうしたの? 何か、痛かった?」
と、慌てて聞きました。
『うぅん……。なんか、幸せだなぁって……。パパ、愛してる……愛してる!』
と言って、キスをしてくれました。でも、何となく、妻は自分に言い聞かせるようにそんな事を言った気がして、私はドキドキしてしまいました。もしかして、誰か好きな人でもで来てしまったのでは? そんな不安にさいなまれました。

でも、それは一瞬で終わり、妻はすぐにいつもの明るい笑顔に戻りました。そして、その日はそのまま抱き合って寝ました。真夜中にふと目が覚めると、妻が泣いていました。声を殺すように泣いていて、私はどうして良いのかわからず、そのまま寝たふりをしてしまいました。涙の理由にまったく心当たりがなく、私は何かとんでもない事が起きているのではないかと、不安な気持ちでいっぱいになりました。

声をかけようか迷っていると、妻が私に抱きついてきました。私が寝ていると思っているみたいで、起こさないようにそっと抱きついてくる妻。
『愛してる……』
小さな声で言う妻に、私は少しだけホッとしました。そして、気がつくと私は寝ていました。

朝起きると、いつも通りの良い匂いに包まれます。ベッドから抜け出し、キッチンに行くと、エプロンを着けた妻が朝食を準備していました。
『パパ、おはよっ! 昨日はありがとう♡ 愛してる♡』
そう言って、私の頬にキスをしてくれました。昨日の夜の不安が、一気に消えました。ただの思い過ごし……。そう思えました。

でも、妻の明るい顔に、時折影が差すように思えてしまいました。
不安が高まってしまった私は、とうとう妻のパソコンを調べてしまいました。

私は、朝家を出て会社に行った後、タイミングを見計らって家に戻りました。この日は、午前中は妻は銀行に行ったり、郵便局に行ったりしているので、チャンスでした。

私はすぐに彼女のノートパソコンを立ち上げ、SNSのアカウントにログインして中身を見て見ようと思ったのですが、それはあっさりと出来ました。妻のノートパソコンにはパスワードの設定もなく、ブラウザを立ち上げると、ブックマークにSNSの管理画面の登録もありました。
クリックすると、自動ログインであっさりとログインできてしまいました。まるっきり無警戒で、私が調べることなど考えてもいないのだろうなと思いました。
そして、そんな風に私を信頼してくれているのに、こんな風に覗き見るのは許されるのだろうか? そんな風に思ってしまいました。

でも、結局私は心配と不安に勝てず、彼女のアカウントの中身を見始めました。

それは、想像以上の悪いものでした。
SNSの会員同士がメッセージのやりとりを出来る機能があり、その中を見ると、妻は元カレとメッセージのやりとりをしていました。
“昨日は、本当に夢のような時間だったよ。まさか、もう一度真希ちゃんに会えて、抱きしめることが出来るなんて、嬉しすぎて泣きそうでした(^^) 
俺、やっぱり真希ちゃんのこと好きだわ……。こんな事言っちゃダメってわかってるけど、あの頃とまったく気持ち変わってなかった!
困らせるつもりはないけど、どうしても言いたかった。ゴメンね。忘れて下さい<(_ _)>じゃあ、またメッセージ待ってるね!”
いきなりこんなメッセージを見たとき、私は倒れそうでした。会って抱きしめた? 昨日の妻の様子がおかしかったのは、このせいだったんだ……。そう思うと、私はパニックになりました。そして、パニクりながらも、二人のやりとりした一番最初のメッセージを探しました。

“お久しぶりです。高橋です。高橋悠一です。偶然、あの人知りませんかの掲示板を見つけ、読みました。迷いましたが、メッセージさせてもらいます。
あの時は、本当にゴメンなさい。ずっと謝りたいと思っていました。あの時の俺は、本当にバカでした。
俺も、あの時が一番楽しい時間でした。ウソでもなんでもなく、毎日あの時のことを思いだしていました。
そして、真希ちゃんが何をしているのかな? 幸せになっているのかな? と、ずっとずっと気にしていました。
ブログを見て、結婚して子供もいることを知り、本当にホッとして安心しました。俺も、結婚して子供が二人います。今は、実家に帰って家業を継いでいます。俺は、元気で幸せに過ごしています。
気にしてくれて、本当にありがとう。あの書込みを見て、涙が止まりませんでした。
でも、こんな風にまた真希ちゃんと繋がりを持てて、こうして謝ることが出来て、本当に胸のつかえが取れた思いです。ありがとう。あの時の日々は、一生忘れません。真希ちゃんも、幸せに暮らして下さい。

ちなみに、タマちゃんはあれから5年後に、天国に行きました。最後に真希ちゃんに会わせてあげられなかったのが、心残りです”
こんなメッセージが最初でした。そしてこのメッセージは、何ヶ月も前のものでした。思い返せば、妻がハイテンションでご機嫌だった日のような気がします。喉の魚の骨が取れた……。そんな事を言っていた日だと思います。

私は、すぐに妻の返信を見ました。
“メッセージしようかどうか迷ったけど、メッセージします! 本当にビックリしました! まさか本人からメッセージ来るなんてねw 20年、あっという間だったね。
でも、良く見つけられたね! このSNSやってたの? それとも、誰か探してたのかな?w
私も結婚して今は二人の子供がいます。すっごく幸せな毎日だよ。心配してくれてありがとう! でもね、あの頃は本当に一番楽しかったよ! ずっとそれが続くと思ってたんだけどなぁ〜 まさか裏切られるとは……
今は実家にいるんだね。私は名古屋にいるよ。悠一さん←この言い方、すっごく懐かしいw も、幸せなんだね。本当に良かったよ。

ずっと忘れずにいてくれてありがとう。私も、ずっと忘れられずにいたよ。なんか、嫌なこともケンカしたこともあったのに、悪いことは全部忘れちゃったw 浮気されたこともねw 楽しかった日々だけが、ずっと私の胸にいます。

タマちゃんのことは、本当にありがとう。悠一さんと別れるよりも、辛かったかもw でも、天国に見送ってくれたんだね。本当に、感謝します。
もしも、イヤじゃなかったら、またメッセージください。
20年前に浮気されて捨てられた真希よりw”
私はそのメッセージを見て、全身から力が抜けていきました。もう、すっかりと忘れていたと思ったのに、妻は忘れていなかったんだ……。
そう思うと、私は足元の平和な世界が壊れていくように感じました。このメッセージだけでは、ただ過去を懐かしんでいるだけに思えます。でも、妻はこの前元カレに会ってしまった……。

私は、メッセージをヒントに、妻の書き込みを探しました。それはあっけなく見つかりました。
あの人知りませんかの掲示板には、妻の書き込みがありました。
“20年くらい前、エルトリート名大前店でバイトしているときに知り合った悠一さん。
バイトが終わった後、よく明け方までドライブに行ったりしてましたね。1年半くらい付き合って、同棲もしてました。
別れの時は、私が裏切られたみたいな形でとても悲しかったですが、私にとっては一番楽しい時間だったので、今頃どうしているんだろうと思い出しています。
実家に帰ったのかな? それともまだ東京にいるのかな?
何か知っているという方、連絡ください!”
こんな未練たっぷりの書き込みでした。

続きは http://moetataiken.com/archives/1027062758.html

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