他人(ひと)の皮を被る 三話


前回:  他人(ひと)の皮を被る 二話

屈辱の摘便が終わった後、晃は濡れタオルで奈津美の体を拭き清めた。

 尻穴からの汚液はストッキングを伝って足首にまで届いており、ストッキングを全て脱がせて拭う。
 奈津美はただ大人しく裸体を晒していた。奥歯を噛み締めるが、逃げようとはしない。

 逃げられないのだ。
 ここから無事に逃げ遂せるには、ビデオを破壊し、かつ衣服を調達する必要がある。
 ただ逃げてもビデオを残していては、恥辱の映像をネットに流されて破滅する。
 衣服がなければ、裸で見知らぬマンションの周りを駆け回ることになる。
 責任ある立場の奈津美にはどちらも不可欠な条件だが、手を縛られている上に晃の目があっては不可能に近かった。
 第一、こうもプライドの高い女性だ。男に排泄を晒したばかりで冷静な判断ができるはずもない。
 晃もそれを承知しているため、じっくりと奈津美を堪能できる。

 晃は奈津美の身体をゆったりとしたソファへ運んだ。
 仰向けに寝かせ、両脚を持ち上げて頭の横に下ろさせる。
 身体を腰から半分に折ったような形だ。
 脚が極端に長い奈津美にはそこまで苦しい体勢ではない。しかし奈津美は顔を顰める。
「腕と背中が痛いわ」
 彼女が呻いた。後ろ手に縛られた腕が背に圧迫されるらしい。だが晃はそ知らぬ顔だ。
「へぇ、そうかい。俺は痛くないね」
 その問答は今の2人の関係そのものだった。
 奈津美は溜息をつき、自ら手首の位置を腰の下に調節して痛みを和らげる。
 それは結果的に、尻穴を晃の目の前にまで掲げることとなった。

 晃は今一度、奈津美の尻に見惚れる。
 豊かな双丘と桜色の蕾。
 あれだけ薬液を排泄し、あれだけ二指で弄繰り回したにも関わらず、もう慎ましい菊の花に戻っている。
 そこを指で押し開き、口をつける。
「う、またお尻っ……!!」
 奈津美は驚愕の表情を浮かべた。
「こんだけ美味そうな尻してるんだ、興味を持たない方がおかしいぜ」
 晃は奈津美の尻肉を揉むようにほぐしながら肛門を舐める。
 尻を責められている、という感覚を強く煽るためだ。

「どうだ、気持ちいいか?」
「はぁ……はぁ……お、お尻で感じるわけ……ないじゃない」
 奈津美は鋭い目をしながら快感を否定する。
 だが、尻を揉まれながら肛門を舐められる、やはりこれが効いたらしい。
 奈津美の割れ目は次第に喘ぎ出し、ある時どろりと蜜を吐いた。
 濃いその蜜は腹筋を滑り落ち、横になったネックレスを伝って床に滴り落ちる。
「なんだ?また尻穴でイッたのかよ。着実に開発されてきてんなぁ、お前のケツも」
 晃が嬉しそうに言葉をかけた。奈津美は晃の視線を逃れるように目を伏せる。

 晃はさらに辱めようと、中指にたっぷりとローションを垂らして尻穴に押し付けた。
 最初の抵抗を越えると、滑り込むように中に入り込む。
 奈津美の腰が跳ねた。
 摘便の時は二本指も入った肛門だが、今は中指一本でも圧迫感を感じるほどに狭まっている。
 手前から奥までが指に絡みつくようだ。
 絡みつきを楽しみながら指を抜き差しすると、ローションのぬちゃぬちゃという音がしはじめる。
 それが尻穴に指を入れているという事実をよく表した。

「どうだ?指一本なんざ逸物に比べりゃ細いもんだが、それでもこっちの穴に入れられる屈辱感は堪らねえだろ、なあ課長さん」
 晃がさらに奈津美のプライドを揺らす。奈津美は何も答えないが、身体は正直だ。
 充分に中指を出し入れした後、晃は一旦指を抜いて肛門を観察した。
 指の分だけ開いた口が窄まり、艶やかに光る。やはり小人の唇だ。

「ちょっと待ってろ」
 晃は奈津美に一声かけて箪笥を漁り、直径2cmの球が連結した棒を取り出す。アナルパールという道具だ。
 10個の球が並ぶ形状も異様だが、細部まで純金製である事がさらに無機質さを増している。
「こんな道具も用意したんだ。金ピカで、きっとお前によく似合うぜ」
 晃は奈津美の目の前にアナルパールを見せ付ける。奈津美が顔をひきつらせた。
「ま……まさか、それを私のお尻に入れるつもりじゃないでしょうね。絶対に嫌よ!」
 生理的な恐怖からか、奈津美が身を捩る。
 だが不自由な体勢では力も入らず、すぐに晃に押さえ込まれた。
「暴れんな!クソひり出してるシーンをネットに流されてぇのか!?」
 晃が怒鳴りつけると、奈津美は観念したように抵抗の力を緩めた。
「賢い奴は好きだぜ。なに、これもすぐに良くなるさ」

 晃は純金のアナルビーズにローションを垂らし、先端の一球を肛門に宛がう。
 球の後ろを押してぐうと押し込むと、蕾に飲み込まれるような形で一球が消えた。
「まずは一個だ」
 晃は言い、次の球も同じように押し付ける。二個、三個……と同じ直径の球が次々に奈津美の腹へ入っていく。
「う、くうう、うぅ……」
 奈津美は苦しそうに顔を顰めていた。
 その苦しそうな顔とは裏腹に、柔軟性のある腸内は次々に球を飲み込む。

「奈津美、今いくつ入ってるか解るか」
「ろ、6個でしょう……」
 奈津美が薄く目を開けて答えた。
「正解だ。一個入るたびに数えてたみたいだな、この変態め」
 晃が嬉しそうに笑い、アナルパールを半ば飲み込んでいる尻肉を揉み始めた。
「いやあっ!」
「どうだ?こうされると腸に入ったパールがごりごり擦れあって堪らないらしいぜ」
 晃は尻肉を前後に揺さぶって更に辱める。
 奈津美は確かに中の感触を感じているのか、脚を震えさせている。

 晃はしばらくそうしていた後、ふと身体をよけて奈津美の尻をビデオに撮らせた。
「見ろよ奈津美。すげぇ似合ってるぜ」
 晃はテレビの方へ顎をしゃくった。大画面に奈津美の尻が大きく映し出されている。
 白い尻肉の中、桃色の蕾から、金色の真珠が連なって提がっている。
「いい眺めだな、おい」
 晃は真珠を指で弾き、肛門から揺れさせた。
 奈津美は目を見開いて見入る。
 その直後、晃の指が真珠の末端にある輪にかかった。
 指が輪にかかったままアナルパールが持ち上がり、斜め上に真っ直ぐ伸びた直後、
 一気に引き抜かれる。
「きゃああぁぁっ!?」
 それは初めての、奈津美が初めて放つ、完全な少女の叫びだった。
 アナルパールが一気に引き抜かれる瞬間、彼女の肛門からは様々な液体が雫となって飛び散った。
 ローションかもしれないし、晃の唾液かもしれない。
 あるいはもっと別の、奈津美の腸内から滲み出た体液かもしれない。

「へーぇ、いい声だ」
 晃は雫の滴るアナルビーズを提げて面白そうに笑う。
「な、な……に、今の……」
 奈津美は腰をひくつかせ、茫然自失の表情をしていた。
「今のがアナル性感ってやつだ。クソを続けざまにひり出すような感じで気持ち良かったろ?」
 晃は嬉しそうに奈津美の尻を開き、再度アナルビーズを宛がう。
「やめて……」
「何がやめてだ、ケツはさっきより断然うまそうに飲み込んでくぜ。期待しやがって」
 奈津美の拒みをよそに、晃の指が次々とアナルパールを押し込んでいく。

「8個……と、おい、息を吐け。次が入らねぇぞ」
 9個目を押し込みながら晃が命じた。
「んうう……も、もうお腹が一杯なの、もう無理よ!」
「俺とさして背も違わねぇくせに、何言ってやがる。まだまだ入んぜ、お前の腹には!」
 晃はぐいぐいと球を押し込む。球の詰まった腸内に更に一個押し込み、最後に残った10個目も指の力任せにねじ込んだ。
「くううぅ、う……!!」
 奈津美が苦しそうに眉を顰める。晃はかすかに鳴る奈津美の腹を撫でた。
「……苦しいか?」
 晃が問うと、奈津美はすぐに頷いた。
「よし、なら3、2、1で抜いてやる。しっかり呼吸を合わせろよ」
 晃がそう言ってアナルパールの尾を掴む。
「3、2、」
 カウント1に合わせて奈津美が息を吸う瞬間、晃は勢いよくアナルパールを引き抜いた。
 10個の純金の球が粘液に塗れて溢れ出す。
「ふぐうううぅっ!?」
 完全に不意をつかれた奈津美は目を見開き、白く長い脚を震え上がらせて身悶えた。
 10個の球が抜けた後、それを追うように開いた肛門から粘液が垂れる。

「おーお、液まみれじゃねえか」
 晃は抜き出したアナルパールを翳して声を上げた。
 触るとほのかに暖かく、独特の内臓臭もして、紛れもなく奈津美の腸内へ入っていたと解る。
 晃は興奮が限界に近づくのが解った。逸物がはち切れそうに痛むが、解放にはもう少しだ。
「ずいぶんと盛大に感じたみたいだな、奈津美?」
 晃が奈津美の尻穴を覗き込んで言った。尻穴は球の直径と同じだけ口を開いている。
 奈津美は放心したまま涙を零していた。

「しかし、よく拡がったもんだ」
 晃は肛門へ二本指を捻じ込む。粘液に塗れた腸内は二本の指を容易に受け入れる。
「へへ、あんがとよ、こんなに腸液を滲ませてくれて。ローションより滑りがいいぜ」
 晃は言葉で辱めながら奈津美の腸内を弄繰り回した。
 中指一本の時と違って指を開けるため、尻穴責めにもバリエーションが出る。
 晃は二本指の腹を腸内の膣側に当て、左右にゆっくりとくゆらせながら、次第に激しく振動を与えはじめた。
 アナル経験のある人間の実体験で、最も気持ちよかったという嬲り方だ。
「うくううぅっ!!」
 奈津美は嫌がって腰をうねらせる。スレンダーな身体が艶かしく汗に光る。

 晃はその反応を楽しみながら、さらに指を増やして三本を突き入れた。
 晃の読みどおり、奈津美の柔らかな括約筋はその逸物より太い質量をも飲み込んでしまう。
「いやあ、こっ、壊れるわっ!!」
 奈津美は叫ぶが、そんな事は決してない。
 三本指に拡げられた腸内は洞窟のように開き、中からはローションのような乳白色の粘液と大きな泡が覗いていた。
 挿入は十分に可能だ。
 開ききった肛門を覗きながら、晃は確信する。

 指を引き抜き、恍惚の表情を浮かべて横たわる奈津美を横目に、晃は亀頭にローションを塗りたくった。
 腸液で潤滑は十分にも思えたが、何しろ本来入れる場所ではない排泄の穴だ。
 どれだけ潤滑を増してもしすぎる事はない。
 晃がローション塗れの逸物を反り立てて奈津美に跨ると、彼女は悲鳴を上げた。
「ちょ、ちょっとっ、何をするつもりよ!!」
 頭のいい奈津美のことだ、見当は付いているのだろう。
 ただ余りに自分の常識から外れているため、受け入れられないだけだ。
「大丈夫だ、もうお前のケツはこれより太いやつも飲み込んでる。暴れるな」
 晃は腰から折り返された形の奈津美にのしかかり、その肛門を亀頭で探る。
 ぬめる粘膜を擦り付けあい、弾力感のある肛門を見つけた瞬間、亀頭を強く押し込んだ。
「や、やめてええぇっ!!!」
 奈津美の心地よい叫びが耳を震わせると同時に、血の通った亀頭が肉の輪にめり込む。

 晃は慌てず、ゆっくりと怒張を沈み込ませた。
「あああぁぁぁ……入ってくるぅぅ……!!!」
 奈津美が泣くような、或いは快楽に狂うような声を上げる。
 その様子を見ながら、晃はさらに奥へと進める。
 一番太い亀頭が菊門へ吸い込まれた。
「いたい!」
 奈津美が小さく呻く。
 亀頭が腸内の襞を掻き分けるのがわかる。
「む、無理よ……。もう、入……らない……!!」
 奈津美は前傾して縮こまるように恐怖に耐えていた。
 押し出そうとする奈津美の亀裂と、捻じ込む晃の槍。
 当然槍が勝り、憤った怒張が奈津美の腸へ奥深く入り込む。

 しばし後、晃の怒張は根元まですべて奈津美の中へ収まった。
「何が無理だよ、全部飲み込んだじゃねえか」
 晃が言うと、奈津美は首を激しく振って抵抗する。
「嫌あぁっ!!いや、いやよ、何で……わ、私のお尻に、こんな深くに、ああぁ、男の……っ!」
 肛門に挿れられたショックで錯乱しているようだ。
 無理もない。
 男であれ、女であれ、肛門を男性器で貫かれるという行為は、完全に屈服させられた事に等しい。
 今日まで男に負けるものかと凛々しく居た女が、今、男によって征服されたのだ。
「おい、動くぞ」
 晃はゆっくりと抽迭を開始した。
 奈津美のアナルと繋がっている。奈津美の尻穴が今、大きく拡がり、自分の怒張を咥え込んでいる。
 それを怒張へ絡み付く粘膜にたっぷりと感じながら。

 結合はとても心地の良いものだった。
 恥毛を残らず剃り落とした秘部は肌触りが抜群だ。
 奈津美の太腿を押し倒す格好だとその膝裏が筋張っているのが見えて美しい。
 太腿を押し込むと健康的な弾力も窺える。
 抱く相手の顔は、汗と涙に塗れたとはいえ、オフィスの華というだけの美しさがあった。
 濡れたショートカットが涼しげな美貌に貼りつく様は、なんと犯し甲斐のあることか。
 そして尻穴の熱くきつい潤みは、およそこの世の快楽とは思えない。
 比喩でも何でもなく、浮遊している気分にさえなった。

「ああああ、あああああ!!」
 叫びが漏れているが、果たしてどちらの叫びなのか解らない。
 晃も叫んでいるし、奈津美も叫んでいる。
 甲高く、あるいは低く、狂気に塗れて唸る声は、もはや性別の判断さえつかない。
 晃の腰使いが次第に早まり、肉の打つ音が響きわたる。
「うう、いくぞ、いくぞ!!」
 晃は奈津美を深く突き上げた後、その腸奥へ白濁を注ぎ込んだ。
「うあ……!!」
 奈津美はそれがわかったのか小さく呻く。
 晃が逸物を抜いた後、奈津美の肛門にはぽっかりと穴が開いていた。
 だがそれもほんの数秒で閉じてしまう。

 晃は奈津美と共に大きく息を吐いた。
 しかし、晃にはこれで奈津美との性交を終わらせるつもりなどない。
 この時の為に3日間精を溜め、心待ちにし、今日もずっと射精せずに耐えていたのだ。
 一度で疼きが収まるはずがなかった。

 晃はそれから、奈津美と2人、ビデオカメラの前で繋がり続けた。

 突き上げに応じて後ろ手に縛られた奈津美の乳房が揺れる。
 それが巨大なテレビに余すところなく映し出された。
 大音量で音も聞こえる。
 ソファが軋み、粘り気たっぷりで結合する音。
「聞こえるか?あの音。映像も見えるよな。今セックスしてるんだぜ、今。尻の穴でよ」
 晃は奈津美の耳元で何度も囁き続けた。

 由希と同じく、奈津美も正常位、側位、後背位と様々に抱いた。
 何度も何度も奈津美の尻穴で抜き差しを続け、射精した。しかしまたすぐに勃起する。
 晃自身これには驚いていた。
 20代でも、クスリを使ったときでさえ、自慰でそれほどの射精と勃起を経験したことなどない。
 だがこうして奈津美のショートヘアに顔を埋め、歯を食いしばった悔しそうな奈津美の顔を眺め、
 長い脚を掴んで抜き挿ししていると、脳内から自然に性欲が溢れるのだ。

 無論明日になれば逸物は腫れ、腕や腰は筋肉痛になるだろう。
 だが今は、痛覚が麻痺したかのように延々と奈津美を犯すことができた。

 ぬちゃっぬちゃっぬちゃっぬちゃっ……

 粘膜の捏ね合う音がし、汗まみれの暖かい柔肉が腰の上で跳ねる。
 晃はその繰り返しの中でふと腰を止めた。
 そして奈津美の身体を持ち上げ、白濁塗れの亀頭でひくつく肛門を撫で回す。

「重てぇ女だぜ、何キロあるんだ?」
 そう奈津美をなじる。
 いくらスレンダーといえど、170cmの奈津美は50kgを下らないはずだ。
 晃はその奈津美の尻穴を亀頭で焦らし、肛門が物欲しげに吸い付くと再び逸物を沈めた。
「うん……っ!!」
 奈津美が艶かしい声を上げる。
 晃はそれにそそられ、奥まで貫いたまま奈津美の秘部を弄った。
 そこはとろとろに蕩けている。
「へっ、あんだけクールだった女が、尻を嬲られただけでここまでにしやがって」
 晃がそう言いながら、指を割れ目の奥へ潜り込ませた。
 その時だ。

「いたいっ!!」
 奈津美が急に叫んだ。晃は虚を突かれる。
 あれほどに潤んで、指もすんなりと入ったのに。
 だが今の叫びの鋭さは、ただの演技ではありえなかった。
「……もしかして、お前……処女、なのか?」
 晃はまさかと疑りながら問いかける。すると、奈津美はかすかに頷いた。
「へ、へへっ……」
 晃は笑いが堪え切れない。
 あの高嶺の花が、本当に一人の男も知らない初物だった。
 そして晃はその処女に、清らかなままアナル性感を教え込んだのだ。

「そうかい。処女のままアナルで濡れちまって、お前もこれで変態の仲間入りって訳だ!」
 晃は俯く奈津美を抱きかかえながら、さらに腰を使い続ける。
「ああ、ああ、あああっ、ああ……」
 息も絶え絶えな声が交じり合って響く。
 互いに疲れ切っても結合は続けたままだ。
 晃は奈津美を後ろから抱きかかえ、腸奥で逸物を脈打たせたままとろとろと眠りに落ちる。

       ※

「う、ん……」
 朝陽に顔を照らされて目覚めると、奈津美は晃を揺すって起こした。
 晃が奈津美を抱え上げて逸物を抜く。
 奈津美の肛門内はローションや精液、腸液で溢れかえっており、ソファと床へ盛大に垂れ落ちた。
「こんなに床を汚しやがって」
 晃はそうなじりながら奈津美の手の拘束を解く。
 ようやく手が自由になった奈津美はゆっくりと肩を鳴らした。手首には深く縄の後が残っている。
「シャワー……使わせて貰ってもいいかしら。これから、出勤だから」
 奈津美は少し困ったような顔で晃に申し出た。
「好きにしろ」
 晃は横柄に頷き、バスタオルを投げ渡す。
 風呂ぐらい使わせても困ったことにはならない。むしろ奈津美が間近でシャワーを浴びるのは嬉しくさえある。
 奈津美のシャワーはかなり長いこと続いていた。その音が晃を興奮させた。

 ようやく風呂場から上がった奈津美が、バスタオルで身体を拭う。
 晃はその格好に見惚れた。
 何度見ても見事なボディラインだ。
 晃はゆっくりと裸の奈津美に近づいた。奈津美が身体を震わせる。
 奈津美からは石鹸のいい香りがした。汗臭さもいいが、やはりこういう香りは美人によく合う。

 乳房に顔を埋めると、奈津美が抵抗を示した。
「やめなさい、せっかく洗ったんだから……」
 口調は以前の居丈高なものに戻っているが、どこか歯切れが悪い。
 晃が片手をそっと尻穴へ潜らせると、奈津美の身体が竦んだ。
「まだかなり拡がったままだな」
 晃は指二本が楽に入る肛門をなじった。指を抜いて匂いを嗅ぐと、ここも石鹸の香りがする。
「へぇ、ケツの中に指を突っ込みでもして洗ったのか?」
「…………」
 晃の言葉に、奈津美は顔を赤らめる。ひどく恥じ入っているようだ。

 その後奈津美は、晃の差し出した昨日のスーツを着て出社準備を整えた。
「勿論解ってるとは思うが、昨晩の事はビデオに撮ってあるからな。今後も大人しく従うなら、あのビデオは俺の秘蔵で終わる。
 もし妙な事をしたと解れば、その時点でネットに流す。いいな」
 晃は玄関口の奈津美に呼びかけた。
 奈津美はドアノブに手をかけたまま、背後の晃に吐き捨てる。
「……あなたなんか、死んでしまえばいいのに」
 そう言ってドアを閉めた。オートロックが硬い音を立てる。

「ふぅ……」
 晃はリビングで溜息をついた。
 欲望に駆られ、実に無計画で危険な橋を渡ったものだ。
 ビデオ映像という脅しはかけたが、奈津美が警察に届け出れば晃の生活は終わる。
 安全な確立は五分だろう。
 結局は奈津美がどういう性格かに尽きた。純潔とプライド、どちらを重視するタイプかだ。
 『あなたなんか、死んでしまえばいいのに』
 これはどちらの決意から発された言葉だろう。

「 …………とうに死んじまったよ、奴ぁ 」

 晃は日記を眺めて呟いた。
 康平を見た辺りから、自分が狂い続けている気がする。
 死んだ人間に成りすまして家に棲みつくなど正気の沙汰ではない。
 それでも晃は、この康平の家を離れられないでいる。
 一度富や権力を得た以上、何もない生活に戻るのは、怖かった。

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続き:  他人(ひと)の皮を被る 四話

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