何度も聞かされた話


仕事でその山間ちかくにいく時は、いつもその民宿を利用した。
Fさんという話しずきの爺さんがいて、
子供のころの事とか、おなじ話を何度もきかされた。

Fさんは、母親の実家でばあさんに育てられたらしい。
その実家には兄叔父と弟叔父がいて、
兄叔父は知恵おくれで腕力だけ強くて、バカ叔父って呼んでた。
バカ叔父は、うらの物置のかげでよくセンズリこいてて、
Fさんは近所のガキ仲間と一緒にのぞいて笑った。
時々、ばあさんが来て、そのままバカ叔父をつれて物置にはいった。
 「中でなにしてたんだか知らんけどよー、
  バカでも男は男だし、
  ばあさんになっても、あそこは女だよなぁー」

弟叔父はまともだった。弟叔父には嫁がきた。
そこの風呂は土間の隅にあって、仕切もなくて、
風呂に入るときは、家族のまえで裸になるのがあたり前だった。
嫁叔母は、Fさんたちが寝た頃に風呂にはいってた。
夕めしの片づけとか針仕事とか、
嫁の役目でおそくなって、汚れて冷えた風呂だった。
Fさんが起きてみると、叔母も土間の風呂のまえで裸になってた。
そのうしろにバカ叔父が立って、裸の叔母の股のあいだに手をいれて、
叔母は何度もその手を払ってた。

ある時、叔母が具合が悪くてねてて、
その隣の部屋で、Yさんは幼い従弟の子守りをしてた。
叔母とバカ叔父の話し声がきこえて、叔母のすすり泣きにかわった。
ばあさんに言われて、Fさんはその部屋から離れた。
ずいぶん時間がたって、バカ叔父が素っ裸ででてきて、おもての便所にいった。
叔母は着古しの襦袢一枚でぼーっとでてきて、幼い従弟に乳をやってた。
ばあさんが怖い顔で、叔母に何かいった。
叔母は顔をふせて泣き崩れて、股の奥の黒い毛が丸みえになった。
幼い従弟は寝ついて、ばあさんが引受けた。
バカ叔父が勃起したままもどってきて、
叔母の手をひいて、また部屋にはいって長いことでてこなかった。

それ以来、バカ叔父と叔母は、何度かその部屋にこもった。
Fさんがのぞいてみたらやはり、裸で抱きあってた。
 「叔母ちゃんの裸が汗で光ってて、惚れぼれするようでなー、
  バカ叔父が股に食らい付いてんだよー」
Fさんはそう言って笑った。
そのうち叔母は、弟叔父が居るときでもかまわず、
バカ叔父とその部屋にこもった。
ばあさんも弟叔父も、黙りこんで知らん顔してた。
叔母は2人目を産んだ。

ばあさんが死んだあと、弟叔父はわずかの山林を売った金で、
バカ叔父を施設に入れて、庭のすみに風呂小屋を建てた。
Fさんは温泉旅館に住込みで働くことになり、
そこでうまれて初めて、米のめしをたらふく食べた。
それまで、大根を煮込んだ稗飯しかたべた事がなかった。

Fさんは昔のこの土地のことを言った。
 「嫁たちは、よく独り身の舅や夫の兄弟にせがまれててな。
  いやいやながら抱かれててな。
  そのうち、女の体ってなぁー味をおぼえてしまうわけよー。
  家のもんにゃ、それが当たり前になったがなぁー」
その2人目はだれの子供だったのかと聞くと、
 「それが分ってどうするんだよ。どうにもなんないよー」
Fさんは、いつもそう言って笑った。
 「まさか、Fさんの子供かい?」
冗談できいたが、そうかもしれねーと真顔で答えてた。
隠し事のできない人だった。
その辺も、いつか詳しくきかせてもらいたいと思う。

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